6話 ある少女の話
「アイオニオスさん?って女?男?」
久しぶりに会うその男はやっぱり変わっていないな。毎回会うたびに一言一句同じことを言うとは変わらなさ過ぎて面白い。
「どっちだと思う?当てられたらご褒美をあげよう」
「じゃあ男で」
「女だよ」
「くそっ2択で間違えるとは」
毎回同じ質問をされて質問をし返し、2択で間違えて悔しがっている姿を見ながらニヤニヤするのはルーティン化している。
ああ、懐かしいな。
「立ち話も何だし中でお茶をしながら話そうか」
「いや俺現在迷子中なんで。知らない人にはついていかないでと言われてるんで」
「君が探してる人なんだけどね。というか一人じゃないんだ珍しいね」
「珍しいとは」
てっきり一人で来ていると思っていたけどまさか誰かと来てるのか。サウラスも成長をしているということかな。感動だよ、涙出てきた。
「えっ泣いてる、急に何?」
「息子の成長に感動するお母さんだよ。サウラスが友達を連れて来るだなんて、お母さん嬉しいな」
「あなたの息子になった覚えはないんですけども」
呆れた顔をしているサウラスを横目にその同行者を探すために魔法を発動する。
【範囲1km】くらいかな
うーんあの女の人かなそれともあそこで焦っている男の人かな?あ、こっちに気づいた。
「ねえサウラス、同行者ってどんな人かな」
「えーと、黒髪で優しそうな顔しててほんとは腹黒いお兄さん」
「あんな感じの?」
「そうそうまさにそんな感じの」
「腹黒そうで悪かったね」
「うわっ、ナツキさん?!」
「いきなり居なくなるからびっくりしたよ。これからはリードでもつけとけば良いかな?なんせ僕は腹黒いからね」
「腹黒いってそんなんじゃないんじゃ」
「で?ごめんなさいは?」
「う、ごめんなさい」
「うん、許さない」
「ひどっ!」
こちらに来たのはサウラスの同行者だろう。同行者と言うよりは保護者に近いと感じる。
ナツキという者はサウラスを私から遠ざけるようにしてコソコソと話しはじめた。
「それで?サウラスの探してる人はこの子?」
「いや、こんな子供じゃないと思うんですけど。それにアイオニオスさんって聖霊なんじゃ…」
「聖霊っていうのが勘違いだったんじゃないの」
「そうですか?」
「それか単純にこの子じゃないアイオニオスさんとか」
「そっちの方が可能性ありそうなんで、じゃあそっちで」
私のことを放って二人で話し始めてから大体3分か。暇だな………ん?何か関係ない話をしていないか?
おすすめのパン屋さんがあるから帰りによろう?
その後に第四都市の温泉に行こう?
帰ったらカレーライスを作ってあげる?
…もしかしてこれ私忘れられてる?
「おい、何の話をしているんだい」
「あ、これは失礼しました。それじゃあ僕たちはこれで。」
「待て待て待て」
帰ろうとする二人を引き止める。全く、急に帰ろうとするんじゃないよ。
「サウラスの探しているアイオニオスが私だって言っているだろ」
「でも証拠がないんで」
「証拠ならあるぞ?」
二人に背を向けて門へと近づき魔法を発動する。
ギギギと音を立てながら開いた門の先には一面に広がる草原とキラキラと輝く星が散りばめられている夜空、その中にポツンと建っている小さな家。
驚いている驚いている。
ぽかんとした表情を浮かべている二人の男。
今回は面白さが2倍だな。
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