4話 腹ごしらえ
あの後僕は日本ではなく、王国『アイオニオス』に来ていると理解するのにとても時間がかかった。この生活に慣れるのにはあまり時間はかからなかったけどね。
僕が読んだことのある異世界系の小説や漫画のように文明が『地球』より発展していないというわけではなかったのには少し驚いた。いわゆるSFと異世界が融合したような感じでワクワクしたものだ。
「どうしたんですか?うわの空ですけど」
「少し昔のことを思い出してね」
サウラスを一目見たときにもしかしたら僕と同じではないかと思った。黒い髪、周りとは違う服装。前髪が長いのでちゃんと瞳は見えていないが黒っぽかった。僕のように不安な想いをしていないか心配だったのでバイトと言う名目で保護をしようと思っていたけどこの世界に驚いている様子はなく、田舎から上京してきた学生のような反応だった。
「ちなみに君の出身は?ちなみに僕は日本っていう国だよ」
日本という単語にすら反応していないのを見るに出身は違う国なのだろう。
「うーん、記憶があやふやなんですけど…確か北のほうだった気がします」
「記憶が?」
「はい、実は___」
✢✢✢✢
トカゲの尻尾に着きカウンターに座ると目の前で料理を作っている様子を見ながらどうしてこの国に来たのかを話す。
俺が覚えているのは幼い頃の思い出。15歳の誕生日を祝って貰ってからの記憶がない。
ナツキさんにはお世話になるわけだし俺の事情をきちんと話しておかないとな。
「__というわけで、この国に来たんです」
「へぇ面白いね。じゃあ早く聖霊に会いに行かなくちゃ」
「冗談だと思わないんですか?」
「うん?思わないけど?」
腹黒いなんて思って申し訳ない。誤解をされてしまうような言い方をしているだけで本当は優しい人なんだな。
「じゃあお昼食べたら行く?」
「え?いいんですか?仕事とかは」
「良いよ良いよ。ほらちゃっちゃと食べちゃって」
話しているうちに出来上がった料理を見る。とても美味しそうだ。
「これはね、親子丼っていうんだよ」
「なんですかその物騒な名前は」
「フフフッ」
やっぱりこの人腹黒いだろ
お昼を食べ終わったら早速城へ向かう。この王国の空を無数に飛んでいる〝ポース〟という乗り物は時速約200kmで走るそうだ。説明を受けてもわからないけど、とにかく早い。俺が一ヶ月かけてアイオニオスまで歩いた距離もポースに乗れば一瞬で着くだろう。
しかも見晴らしもすごく良い!最高だ!空を飛ぶのは鳥だけだと思っていたけどまさか自分も飛べるとは。
「びっくりしたでしょ、空を飛べるなんて」
「すごい!やばい!びっくり!!」
田舎者に見えようが関係ない!周りの人に見られようが関係ない!
できればポースの上に乗って風を感じながら乗りたいけどそんな事をしたら怒られそうなので我慢だなと、うんうんしていた俺をナツキさんはジトッと見ていた。
「念の為言っておくけど、ダメだよ」
「知ってます」
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