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月下に示すは汝の意志なり  作者: セントホワイト
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第9話

第9話


「訊いてもいいか?」


森の中を盗賊団の一人、雑用係として使われていた気弱そうな男を選び先頭を歩かせ、その後ろをラグナとフェリーナ、その後ろを俺やサラが歩く。

村から出てからしばらく歩いていると、唐突にラグナが話しかけてきた。


「答えられるものならな」

「じゃあ訊きたい。あの村で言ってたことを教えてくれないか?」

「どれの話だ? 魔法か? 災害か? それともあの村のことか? 言っちゃあ何だが聞いたところでお前の頭で理解できるのか?」

「で、出来るけ、どわっ!?」


身体ごと振り返った拍子に、地面に這っていた木の根に足を取られて体制を崩したラグナを咄嗟にサラが支える。

そんな集中力の無さで聞いたところで頭に入るのか。


「……私からもお願いしたい。我々はこういった事情に疎いようだ」

「疎いねぇ? まあこれから旅をする仲だ。変な隠し事はしなくてもいいか。面倒だし」


これは一般教養程度でしかない話のため隠すことでも誤魔化すことでもなかった。

歩き続けるなかで暇つぶしの雑談程度の内容を話していく。

魔法とは、魔術師や魔導士が使うものとは比較にならない力だ。

それは自然現象でいうところの天変地異というほどで、魔法の種類によっては一時で村や街、国すら亡ぼすほどだ。

魔物と呼ばれる生物は魔力を使い、この恐るべき力を使用する。

そのため世間のほとんどの者が魔法を扱うモノを【災害】と揶揄し遠ざけている。

その災害と呼ばれる者たちの特徴は黒毛を持つことで知られ、例えば少し前に出会った餓狼種も一部ではあったが黒い毛並みをしていた。

だが知性のない獣なら討伐すること。撃退することは戦力さえ整えば難しくはないだろう。

しかし、知性のある災害は恐ろしい脅威となる。


「弱い災害なら魔術師が数人、もしくは魔導士が一人でもいれば、それこそ卓越した剣技をもつ騎士や剣士なら倒せない相手じゃない」

「確かに、我々でも対処はできるかもしれない」

「説得力がないけどな。でもま、お前たちの実力がもう少しあれば餓狼種なんてすぐに倒せる」

「そうですね。では次の訓練の時間です」


案内をしている男が徐々にその姿を消していく。

闇に溶け込むように消えるさまに驚き、二人はなすすべもなく取り逃がしてしまった。


「こ、これは」

「何が起きて……っ、罠かっ!?」


フェリーナが罠だと気づいて、こちらに振り向きざまに通り過ぎる黒い物体が彼女の頬を浅く切る。

闇夜に紛れて飛来してきた黒い物体は近くにあった木にぶつかり、その正体を(あらわ)にする。


「これって、短刀?」


ラグナが確認した直後に、周囲の草むらから一斉に音がした。

雑草を踏み荒らし、少しだが響く鞘から剣を引き抜く音もする。


「囲まれてるな。これは」

「そのようですね。といっても先程より少し多いくらいでしょうか?」

「さっきより十人増えたのを少しっていうならな。ラグナとフェリーナ、そしてサラが前衛。後衛は俺がやる」


三人が俺を守るように囲んで武器を構える。


「規模がさっきよりも多いが、問題ないか?」

「そっちこそ大丈夫か? さっきより奴らの練度が違うだろうよ。連中も懐がスカスカなのは財布事情だけだ」

「それはこちらも同じです」

「……マジか。どうやって稼げばいいんだ……?」

「無駄話はあとにしろっ。来るぞ!」


フェリーナの声に触発されたのか、一斉に姿を現した盗賊たちが襲いかかってくる。

連携の取れた動き。

やはりというべきか。盗賊たちの動きはさっきの連中と比べると幾分も実力があるのだろう。

所詮は盗賊だろうと高を括っている連中なら恐らくやられている。

惜しいのは、後衛が弓使い程度しかいないことか。


「≪光を≫」


杖の先端から溢れるように周囲を一瞬にして照らす白い輝きが盗賊たちの視界を奪う。

こちらを見ていた盗賊たちはたまったものじゃないだろう。


「はははっ! 先制は常に俺に決まってんだろう?」

「それが、後衛のやることかっ!」


ラグナとフェリーナは好機とみて飛び出し、盗賊たちを斬り倒していく。

足を止めてしまった盗賊たちは満足に武器を構えることもできずに倒され、サラは弓使いたちを音もたてずに倒していく。

戦局は魔導士の最初の一手で簡単にひっくり返ってしまう。

だからこそ魔術師崩れの盗賊は多いと聞くが、この場には居ないらしい。


「二陣、三陣があっても不思議じゃねぇってことか。この規模の盗賊団……当たりか?」

「どういうこと?」

「あの村が嘘を吐いている可能性があったっていうことだよ」

「以前にあったのです。他の場所の話になりますが、こちらから情報提供をして貰った際に厄介事だけを故意に押し付ける者たちが」

「そんなことが……」

「そういうこともあるって話だ。弱みを見せればそこにつけ入る連中なんて幾らでもいるってことさ。そういう意味ならお前らは運が良かったな?」


あの時のラグナたちがもしそういう村などに行った場合、行きつく先は事実上の奴隷になるだろう。

村の守護者だのと持て囃されるだけのガーゴイルと同レベルの存在。

それを良しと本人がするならばまだ救いはあるのだろうが。


「……それより、案内人が逃げたわけだが」

「人が消えたからと言って案内がなくなったわけじゃない。むしろ増えたんじゃないか?」

「それってどういう……」


ラグナの疑問の声に、少しばかりぬかるんでいる地面を指す。

地面にあるのは雑草や木の根だけではなく、さっきまでの戦闘の激しさを物語る足跡。


「ウサギにしろシカにしろ狩りの基本だ。まあ、今回は人狩り(マンハント)だがな。腹が減っても喰うなよ?」

「……当たり前だろう……」


冗談を言ったはずなのにひと笑いも起こらず、ただ呆れられた声だけが届いた。




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