リア充爆発しろ、芸術は爆発だ、故にリア充は芸術だ
海についた。
「あれ」
とぼくは言う。
「どうして海についたんだっけ」
「わたしも思い出せない」
と女の子。
「なんか適当に話してたら、そういうことになったよね」
まだ本格的に夏というほどではないが、すでに海は開かれていた。
少ないが、泳いでいる人もぽつぽつここから見える。
ぼくたちは、一応は勉強道具を持ってきていたのだけれど、こうしてあの青い輝きを目にすると、とてもそれどころではなくなった。人間はもともと海から来た。これは生き物としての本能なのだ。
だからぼくの通う中学校なんて、そういう気を起こさせないために、わざと無機質に作られているのだ。そう思った。
さっそく、
「ふー」
と女の子は浮き輪を膨らませている。
やがて
「できた」
と言ったときには、苦しそうにぜえぜえ息を吐いていた。
肺活量少なっ! と思ったが言わなかった。
その時、ある一組の大人のカップルたちがイチャイチャしているのを見て、
「このリア充め! うらめしや〜!」
と彼女がうらめしそうに叫ぶ。
そしたら、そのカップルの男の方が、
「何言ってんだ、お前たちだってリア充だろ! ウェーイ!」
と爆笑した。女の方も、
「仲間ー! ウェーイ!」
と笑う。
「ウェーイ」とは、どういう意味だろうか、とちょっと思ったが、多分意味なんてないのだろう。
女の子は言う。
「わたし、ああいう大人苦手……」
「ぼくも。ああはなりたくないね」
「だけど考えてみれば、わたしたちってリア充なのかしら。そんな実感は全然なかったよ」
「確かに。こうして二人いるんだもん。ぼくたちはリア充なんだよ。そう言えないこともない」
「そう言えないこともない。こんなものか。なってみるとあっけないものだね」
それからぼくたちは着替えて海に入った。
と言っても、あの大人のカップルたちのように、はしゃいだりはしたくはなかったのだ。
だからぼくたちは、あの大人のカップルがバシャバシャ楽しそうにやっているのを、少し離れたところに浮かんで、じーっと見つめながら、
「ああはなりたくないね」
「うん」
みたいな批評を静かにし続けるだけだった。不気味に。
ぼくたちの結論というのは、リア充という言葉がどうであれ、こうやってなんか生きているなら心底どうでもいいものだ、という、なんとも間の抜けたものだ。
海は大きい。
波がぷかぷか。