WcDonald
それからぼくたちは、ワクドナルドにきた。
女の子がぼくにハンバーガーをおごると言って聞かなかったのだ。
オレンジジュースを飲んで、
「惜しい」
と女の子が言った。聞くと、女の子はぼくと同じ学年だが、隣の町の中学校だった。それを惜しいと言う。
それからまたオレンジジュースを飲んだ。と思いきや、ストローを口につけて息を吐いて、ぶくぶくぶくぶく……とやった。
「行儀が悪いよ」
とぼくは言ったが女の子は無視をした。
「ねえ、高校は決めた?」
◯◯高校、とぼくは言った。
「ビンゴ!」
と女の子が言った。
「わたしもそこにしようと思っている。あなたもそこそこばかなのね!」
女の子のドヤ顔。
ばかだと言われた。
ぼくはちょっと頑張って◯◯高校にしようと思っていただけに、ちょっと落ち込んでしまいそうになる。
ぼくはこいつと同じ、あるいはそれ以下の学力なのか。
いや、心配することはないぞ。
騙されやすい、という彼女の性質が、彼女をお勉強ロボットに仕立て上げているだけなのではないか、とぼくは推察する。
それに対して、ぼくの場合だと、大人たちの矛盾した嘘が見えている、と自分では思っている。その上で、それに「付き合ってあげて」、彼女と同じ◯◯高校に行こうとしているのだ。
そういう意味では、ぼくの方が上だ、ということも言えるんじゃないだろうか……。
女の子はまたオレンジジュースを飲んだ。と思いきや、もうオレンジジュースはない。
ズズズズズズという音がワクドナルドに響きわたるだけだった。
「行儀が悪いよ」
これで二度目だ。
「ふひひ」
と女の子がいたずらっぽく笑った。
ぼくはその笑顔を見て、自分が彼女より上か、下かなんて、さっき思っていたことがばかばかしくなる。
ぼくは座っていた椅子に、急にリラックスして座りなおして、
「あーあ」
と言った。
「何? その『あーあ』は」
「わからないよ」