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ep6 たとえ嫌いでも

どうも、マグロカレーと申す者です。


突然ですが、人はどうやって色を判別しているかご存知ですか?

簡単に言うと、光を受けた物体は特定の色だけを反射したり、吸収するからです。

例えば、リンゴは赤色の光だけを反射して、他の色の光は吸収する為、私たちにはリンゴが赤く見えます。

また、物体は全ての光を反射すると白く見え、逆に全て光を吸収すると黒く見えます。

しかし、それは見えるのではなく、見せられているのではないでしょうか。

先程、リンゴは赤色の光だけを反射すると言いましたが、それはリンゴ自身が人間へ赤く見せているだけなのかもしれません。


まあ私が言いたいのこの世の物体は全て意志を持っているのではないでしょうかという事です。


何言ってんだって思いましたか?


大丈夫です、私も分かりません。


それでは本編どうぞ!

急に怒鳴りつけた姉に僕はビックリした。

先程まで優しかった姉さんにハンとクトも肩をビクッとさせてこちらを振り返る。


「行く宛無いくせして一丁前に自分たちで何とかするって、またさっきみたいに死にかけたいの?考え無しにも程があるわ!」


姉さん怒ってるな〜。こうなったらもう止められない。ここはひとまず静観しておこう。


「うるさい!元はと言えばお前たち人間が私たちの食料となる動物を独占したせいだ!」


「そもそも私たちは人間じゃ…まあこの際もうそう言う事でいいわ。」


意外にも姉さんは冷静だった。

僕たちは天界住む者で神に近しい存在だなんて言っても信じないとは思うけどもしもバレたら面倒な事になる。だから、今僕たちは人間と言う程で話を進めないといけない。


「確かにあなたたちは人間によって住処を追われ死にかけたし、実際に死んだ仲間もいるでしょう。でもそれはあなた達にも原因があるわ。」


姉がそう言うとハンとクトは一気に不機嫌そうな表情を浮かべた。


「ふざけるな!今回の原因は全てお前たち人間が食用となる動物を狩り尽くし、あの見えない壁の中へ持っていた事が原因だ!」


姉さんに負けずとも劣らない勢いで食いつくハン。

見えない壁とは恐らく結界の事を言っているのだろう。


「そうです!助け頂いた事には感謝してますが、そもそもはあなた達が食料を独占した事により招いた事態です!」


薄々は感じていたが、恐らくこの子たちは知らない。獣人族という種族が今までどんなに人間を苦しめてきたのかを。


「なら聞くけど、そもそも何で人間はいきなりこの辺り一帯の動物を異常なスピードで狩り尽くしたと思う?」


「そんなの私たちに対する嫌がらせに決まってるわ!」


「その理屈で言うなら逆よ、あなたたち獣人族が人間に今まで嫌がらせをしてきたのよ。」


僕が思った事を姉さんが淡々と言う。するとハンとクトは更に怒りを露わにする。


「いい加減な事を言うのも大概にしろ人間!!」


「そうです!一月前まで私たちは静かに暮らし、人間とは互いに干渉してませんでした!」


僕は今のクトの発言で分かった。この子たちは狩りを、少なくとも前の住処ではした事がないみたいだ。


「人間はこの一件が起こるまでは食料難で苦しんでいたのよ。あなたたち獣人族が人間の狩りをいつも妨害していたせいでね。」


「「嘘だ(です)!」」


姉さんの言った事に二人は同時に反論した。


「嘘じゃないわ、説明しても信じてもらえないだろうし、見せてあげる。」


姉さんがそう言いと、右手をバッと上げた。すると周囲が白く光りだす。


姉さんはその土地で過去に何があったのかを見る事ができ、その光景を他者にも見せる力がある。


姉さんの力はかなり限定的で天界にいた時からあまり使う機会が無い変な力だったけど、ハンとクトに真実を教えるには最善の一手だ。


「今からあなたたち獣人族が食料難に陥る前にこの地でしていた狩りの光景を見せるわ。」


「そんな事出来るわけ…」


「いいから見ていなさい。」


言葉を最後まで聞かずに姉さんがそう言うとハンはチッと舌打ちをして不満そうにした。

クトは不安なのか周囲をキョロキョロしている。


白い光りが辺りを包み込み、この地の過去を映し出す。



…一匹の動物が来た。

四足歩行で体長は1メートルぐらい、茶色い細かな体毛が全身に生えているその動物は獣人族、人間の食料となる動物だ。


「に、肉だ!」


いきなりハンがその動物に飛びかかるもその身体はすりぬけた。

不可思議な状況にハンとクトは驚いている。


「あれは幻よ。こちらから干渉出来ないし、あの動物がこちらに気づく事もないわ。」


そう、ここは一年前の光景。僕たちは姉さんの力で見ているだけなので僕たちは干渉出来ない。


「…来たわね。」


皆で姉さんの見つめた方向を見るとそこには三人の人間がいた。弓や短刀等を装備しており、どうやら狩りに来ているようだ。


「今からこの三人の人間は狩りを始める、よく見ておきなさい。」


姉さんが言うと、人間の一人が目標の動物目掛けて弓矢を構え射た。その矢は僕たちの近くにいた動物に見事命中し、人間たちはこちらへ向かってくる。

しかし、人間たちが来る前に狩られた動物は何者かが凄まじいスピードで持ち去っていった。


それを見ていた三人の人間は怒りの表情を浮かべていた。


「今凄いスピードで動物を横取りした者、あなたたちの動体視力なら見えたわよね?」


姉さんが聞くも、返事が無い。ハンとクトは先程の光景に驚き、声も出ないようだ。


「…まああなたたちは知らなかったみたいだし驚くのも無理ないわね。獲物を横取りしたのはあなたちちと同じ獣人族よ。」


「まさか、今のは…」


「うそよ…叔父さんがこんな事……」


横取りした獣人族は偶然にもハンとクトの知り合いだったようだ。


「今の獣人族は二人の知り合いだったのね。そう、あなたたち獣人族は自分たちで狩りをする能力があるにもかかわらず、何年もこの森で人間たちの獲物を横取りし続けていたのよ。」


「そんな、だって皆んなそんな事…」


やはり獣人族はまだ子どもであるハンとクトにはこの事実を教えていなかったようだ。


「子どもには教えてなかったみたいだけど、大人の獣人族は皆やっていた事よ。こんな事を繰り返された人間たちは長い間食料難に陥る結果になったのよ。」


二人は未だ驚いている様子だ。ハンとクトはショックだっただろう。

獣人族は誇り高い種族だとハンは言っていた。

その自分が信じてきた誇り高い種族がこんな悪質な行為を長年繰り返して来たという事実をこの子たちは受け入れなければならない。


ふと、姉さんの方を見ると先程までは怒っていたが今は少し悲しげな表情を浮かべている。


「あなたたちは人間のせいで今のこんな惨状になってると言ったわよね?でも元を正せばそれは獣人族が人間にしてきた事なのよ。」


「そんな…」


二人ともすぐには立ち直れない様子だ。


「別に私はあなたたち二人を責めてる訳じゃないわ。ただ、知っておいて欲しかった。人間が全て悪い訳では無いと言う事を。」


…僕には姉さんが大分二人を責めていたように見えていたが今そんな事言ったら怒られそうなので言わないことにした。


「だとしたら、なぜ人間である二人は僕たちを助けようととするんですか?」


「あなたたちが困っていたからよ。」


クトの質問に姉さんは間髪入れずに答えた。


「…それだけですか?」


クトが聞くと、姉さんは笑顔で答える。


「私はね、困ってる人がいたらどんな人でも見過ごせないのよ!」


だから私はここまで来たのよと最後に二人には聞こえないくらい小さく呟いた。

姉さんがそういうとハンとクトは少しだけ笑顔になった。姉さんのこういう飾らない、真っ直ぐな所には僕も惹きつけられる。


「さて、だいぶ話が逸れたわね。改めて言うわ、私を信じてあなたたちを獣人族の村まで連れて行く手助けをさせて。」


ハンとクトはお互い顔を見合わせ頷き、お願いしますと言いながら頭をぺこりと下げた。


「…よ、よし!そうと決まれば行こうか!」


何か僕だけずっと蚊帳の外でちょっと気まずい感じがしたので適当に締めて行こうとする。


「うわ!あ、あんたまだいたの!?」


姉さんにそう言われ僕は落ち込み思わず隅っこで縮こまる。


「そりゃ僕は全然喋ってないけどそれはあえてそうしたって言うか、そもそも姉さんは昔から無神経なんだよ、あの時だって僕が…」


僕がぶつぶつと木に向かって話しかけていると後ろからごめんごめん!と笑いながらこちらへ向かってくる。


「ありがとね、私が喋ってる間黙って見ててくれて。」


僕の耳元で姉さんは小さく言った。

振り返ると笑顔で姉さんはほら、行くんでしょと言いながら僕に手を差し伸べる。


(そういう憎めない所がずるいよ)


僕は心の中でそう呟き、姉さんの手を取る。

獣人族の村までハンとクトを届ける為に僕たちは南に向かって歩きだした。

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