ep4 それでも姉は彼女を
どうもマグロカレーと申す者です。
皆さんは家で魚を焼く時はなんの器具で焼きますか?
私の家では焼き魚を作る時はグリルで焼くのですが、つい先日魚を焼いたとき。火事になりかけました。
なぜそんな事態になったのかと言うと、私は魚を焼く際、グリルをあまり汚したくないので毎回グリルの網の上に魚焼き用のクッキングシートを置いて、その上に魚を置いて焼きます。
先日も同じように焼いていました。私は魚を焼き始めて10分ぐらい経ち、もういいかな〜と思いグリルを開けると、シートが炎上してました。
いや〜あの時は本当焦りました。
本当に火が上がっていて魚は黒焦げ。火傷覚悟で何とかシートを出して近くのシンクに放り込み水をぶっかけて何とか鎮火しました。
まあ何が言いたいかっていうと、グリルで何かを焼く時にクッキングシートは入れるなって事です。
それでは本編どうぞ!
双子の…ep4
倒れていたのは女の子だった。頭にはふさふさの耳、下半身を見ると尻尾も生えている。
「この子、獣人族の子ね。」
「みたいだね。」
弟が彼女の方へと駆け寄り、様子を確認している。
私も弟に続いて近づく。
「どうかしら?」
「…いちよう息はあるけど、かなり衰弱してる。このままだとまずいね。」
彼女はガリガリに痩せ細り、見た目も土埃でかなり汚れている。しかも、腕や足にはどこかに強く打ちつけたようなあざもある。
見た目からして、何日も飲まず食わずで彷徨っていたように見える。
「とにかく、手遅れになる前に早く何とかしないと!」
周囲が明るくなった事ですぐ近くに上りの階段がある事に気づいた。
ここには何もない。他に出口もないし、この階段が出口に繋がっている事を信じて行くしかない。
弟も同じ考えのようで互いに小さく頷く。
「よいっしょっと。」
私は女の子を抱き抱えた。身長は私よりも少し低いぐらいなのに信じられないぐらい軽く、事は急を要する事を再認識した。
「早く行こう!」
「うん!」
弟と一緒に階段を駆け上る。少し上がると外からの光が差し込んできた。
「よかった!これならすぐに外へ出られそうね!」
全力で階段を登った。
その先には森が広がっていた。その光景を見て私はひとまず安心した。
「砂漠地帯だったらどうしようと思ってたけど、こんな森林地帯ならなら何かしら食料は見つかりそうね。」
この世界には砂漠、凍土、火山地帯何かもある。そんな場所に獣人族の子が一人でいる訳ないとは思ってたけど、私たちが転移した場所がもしもそんな所だったらすぐに食料や水を見つける事は困難だったでしょうね。
私は安心していたが弟が深刻そうな表情で口を開く。
「…いや、姉さん。もっとまずい場所だよここ。恐らく人間の暮らす所の近くだ。」
あれを見て、と弟が遠くを指差した方向を見るとそこには薄い白色の膜のような物がドーム状に大きく広がっていた。
「結界、ね」
人間が近年、この世界において大きな存在となったきっかけとも言える人間以外の他種族を一切受け付けない壁だ。
ピーシュ様は確か魔術と言っていた。
「なるほど。ならこの辺の食料や水は全部あそこにしか無いって訳ね。」
この獣人族の女の子がこんな状態なのも納得がいった。人間はどんどん自身の領域を広げてたのは天界から見てたし、獣人族が被害を被っていたのも見ていた。
人間は下界に暮らす種族の中でも恐ろしく独占欲が強い。周辺の使えそうな物や食べれそうな物は全て結界の中へ持って行き、加工したり大量に貯蔵したりしている。
「だとしても私は、この子を絶対に助けるわ。」
ピーシュ様には"下界の問題にお前たちが首を突っ込むな"と言われ、今まで助けてあげられなかった。
でもピーシュ様がいない今なら、助けられる!
「姉さん、気持ちは分かるけど……」
弟は言葉を詰まらせた。でもその先の言いたい事は分かった。
下界へ介入したらいずれピーシュ様にバレてしまう。
そう言いたいのだろう。でも…
「ちゃんと言ってなかったけど、私はこの為に下界に来たのよ。」
私は下界に暮らす皆んなが手を取り合い、仲良く暮らして欲しいと、そう思っていた。
しかし現実はこの有り様。ピーシュ様の定めた法によって民が殺しあうなんて事は無くなったけど、それによって人間に有利な世界が出来てしまい、現在のこの状況を生み出した。
他にもある種族は住処を追われたり、またある種族は水源が無くなったりしている。
このままではいずれ下界には人間しかいなくなる。
ピーシュ様はもしかしたらそれを望んでいるかもしれないけど、民が苦しみ、死にゆく様を私は見ていられない。
「私はこの子を、いや、この子だけじゃなく下界で危機に瀕している種族皆んなを助けたいの!」
「姉さん…」
弟は困惑した表情をしている。
躊躇するのは分かる。最後まで下界に行く事を渋っていた理由はピーシュ様にバレてしまう事を恐れたからだ。
それでも分かって欲しい。根本的に言えば今まで酷い事をしてきたのはピーシュ様とそれに従う私たちだ。
その罪は償わなければならない。
「お願い!この子を助ける為に協力して!ここで見捨てれば今まで天界でやってきた事の繰り返しになる。それだけは絶対に嫌なのよ!」
必死に弟に訴えかけた。この子を助ける為に、弟の協力は必要不可欠だ。
弟はかなり悩んでいる様子だ。
しかし、すぐに僅かに微笑み私の目を見ながら口を開く。
「やっぱり姉さんはそうでなくちゃね。」
「ってことは協力してくれるって事…でいいのよね?」
「下界に来る前に言ったでしょ?僕は姉さんに付いていくって。そういう姉さんの真っ直ぐな所を僕は尊敬してるからね。」
「…ありがとう。」
私たちはこれから引き返せないかも知れない道を進んでいく。
でも、私は弟がいれば私はいつだって前へ進める事が出来る。
「本当に、ありがとう。」
改めて、もう一度感謝を伝えた。
「もういいから。それより姉さんはどうするつもりなの?」
どうする、か…。
この子はいつ死んでもおかしくない状態。あまり悠長なことは出来ない。
……いちよう一つだけ、今この場で助ける方法はある。
と言うか、もうそれしか無いと私は考えていた。
「この子に、私たちの神の力を注ぎ込む。」
ピーシュ様によって作られた存在である私たちには神の力が宿っている。
神は歳も取らず死ぬ事はなくなる。
そして神の力を宿している私たちも死ぬ事がなくなる訳ではないが、それでもかなりの長い時を生きる事が出来る。
それならこの子に私たちの力を分け与えれば助かるかも知れない。
ただし下界の民に神の力を分け与えるなんて、こんな事をしたらそれこそ本当にもう引き返せない。
「うん。すぐに助けるにはそれしか無いよね」
「うん。やっぱダメよね。確かにあんたの言いたい事は分かるわ。でも今はこれしか………って、え?今何て言ったの?」
「ん?だからそれしか無いよねって…」
思わず聞き間違いかと思ってしまった。いつも慎重な弟が…
「私から言っといてなんだけど…いいの?」
勝手に下界の民に神の力を分け与えるなんて事がバレたらただじゃ済まないのは容易に想像出来た。
だから弟は絶対反対すると思ってたけど、まさか同じ事を考えてたなんて正直信じられない。
「そりゃ凄い危険な事だけど、今から人間たちの所へ食料を分けて貰いに行くには時間がかかるし、この辺の食料はこの子を見れば一つも無いって事ぐらい分かるし、この子を助けるには僕たちの力を分け与えるしかないよ。」
弟はちゃんと考えた上での考えのようだ。
お互い覚悟は決まった。
「よし!そうと決まれば早速取り掛かりましょう!」
私は女の子を寝かせて意識を集中させ、弟も私に続いて息を整える。
弟と目を合わせてタイミングを合わせるように頷き合い、女の子の左手を、弟は右手を握って力を注ぎ込む。
彼女の顔色はみるみる良くなっていく。
そして私たちの力を注ぎ込み終わると、彼女はすぐに目を覚ました。
「よかった。何とか成功したみたいだね。」
「えぇ、よかったわ。…ねぇ、あなた大丈夫?」
見たところまだちょっと痩せているが、とりあえず外傷や身体的機能は回復させた。
これでとりあえずの危機は去った。
「ここは…?」
どうやら少し混乱している様子。まあ無理もないわね。
「あなた、あの階段の先で倒れてたのよ。」
私が先程までいた場所へ指差しながらそう言うと、彼女は少しだけ考え、はっと気づいたように私を見る。
「お、お願い!私の他にもう一人、仲間がい…るの……」
私と弟を見て彼女の言葉が止まった。
「…どうしたの?」
私が聞くと彼女は素早く距離を取る。
「…お前たち、人間だな!」
彼女は急に、凄い剣幕で言った。
「姉さん、これやばいんじゃ…」
「そんな事言われなくても分かってるわ。」
考えがそこまで回らなかったわ。まさか私たちが人間と思われるなんて。
でも…そうね、確かに私たち容姿は人間だわ。
だからと言って私たちが天界にいたなんて事言えないし、言っても信じて貰えないでしょうね。
私がどうしたものかと考えていると弟が一歩前に出た。
「…君、さっき仲間がいるって言ってたよね?君はさっきまで飢え死にする一歩手前だった。なら君の仲間も危険な状態じゃないの?」
弟がそう言うと彼女は苦悶の表情を浮かべた。その様子だと、どうやら弟の言う通りみたいね。
「…あなたが人間の事を嫌ってるのは分かってるわ。それでもお願い!今だけは私たちを信じてあなたの仲間の事も助けさせてくれないかしら?」
そう言うと彼女は俯いた。
恐らく彼女自身の中で色んな考えがあり、それと葛藤している。
それから数十秒後、彼女顔を上げ、警戒を解いた。
「わかった。私の仲間を助けてくれると言うのなら、今だけはお前たちを信じる。」
ほっとした。ひとまずは信じてくれたみたいね。
「ただし、少しでも変な事をしたら私は絶対にお前たちを殺す。私たちは雲の上の奴らなんて怖くないわ。」
雲の上?翼人族の事?でもなんで今そんな事…
「分かった、それでいい。君の仲間の元へ案内して。」
私が考えていると弟が彼女に言った。
確かにそうだわ。今は彼女の仲間を助ける事だけ考えよう。
彼女は頷くと森の中へと入って行ったので私と弟も後を追い、森の中を三人で進む。
…
……
………き、気まずい!誰も何も言わないわ!
森に入ってまだ数十秒だけど、この空間耐えられないわ。
弟と話してもこの子が蚊帳の外になっちゃうし、私がこの子に話かけるしかないわ。
「…そういえば、あなたの名前を聞いてもいいかしら?」
「ハンだ。」
…思いの外簡単に教えてくれた。
「ハンね。いい名前だわ。」
「やめろ。人間にそんな事言われても嬉しくも何ともない。」
ハンはそう言うが、私は嬉しかった。こうやって誰かと話すなんて弟と以外はしたことなかったから。
(これから仲良くなれるといいな)
そんな事を考えながら私たちはハンの仲間の元へ行くべく、森の中を進んで行く。