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スケート&スカート!  作者: 天川太郎
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 ♪


 インタビュー、表彰式、記者会見等もろもろの行事を終えて、ようやく解放されたのが22時だった。

 ホテルに帰ろうと裏口から外に出ると――そこに未央が仁王立ちしていた。

「なんだ、子供はもう寝る時間だぞ」

 俺がそういうと、彼女は露骨にムッとした表情を浮かべた。

「オリンピックにも行けないチビに子供扱いされた……」

「――今オリンピックって言葉を聞くと、正直結構へこむんだけど」

 でもまぁ、事実だから仕方がないか。恥じるような演技ではなかったと胸を張って言えるが、それでもオリンピックに行けなかったのは間違いない。

「情けない」

 と、未央はハッキリとした口調でそう言った。

 そしてその後、さらに続けた。

「情けない“コーチ”」

 その言葉に、ハッとした。

 彼女と交わした約束。

 翔馬に勝ったら、未央のコーチになるという約束。

 そう、俺は未央のコーチになるのだ。

「四年後はわたしはオリンピックの金メダルを取る」

 突然、未央はそんなことを言い始めた。そして、俺の反応なんてうかがうことなく続ける。

「その時の、男子のチャンピオンは誰なんですか」

 そんな挑戦的な問いかけをされる。

 その問いに対する答えは、今さっき決めたばかりだ。

「俺は四年後――オリンピックで一番になる」

 自然と、そう宣言していた。

 前はそんなこと絶対に言えなかった。勢いでも言えなかった。

 それが今は自然と口から出てきた。

 それを聞いた未央は、そのまっすぐな瞳で俺を見上げる。

「じゃぁ、わたし、お母さんに言いますから――わたしのコーチは、四年後のオリンピックチャンピオンだって」

 それでいいんだな。そんな問いかけを含んだ直視。俺はそれをしっかりと受け止めて、そしてうなずいたのだった。


 ♪

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