めっちゃいい匂いする
2話です。
「待って、瑞稀くん。今話したのは全て本当の事よ。だから、病院なんて行く必要無いわ」
「いや、絶対頭おかしいですって。悪い事は言いません。病院....行きましょう?」
「本当よ信じて」
凛音先輩が詰め寄って来る。
至近距離で見つめ合う。
ちょ、待って。めっちゃいい匂いする。
「いい匂いしますね」
「あら、ありがとう。この柔軟剤、気に入ってるの」
「へぇ、そうなんですか。じゃあとりあえず、病院行きましょうか」
「待って、瑞稀くん。ちょっと待って。ホントに待って」
あの凛音先輩が、珍しく取り乱している。
あの冷静沈着クールビューティの凛音先輩が取り乱しておられる。
....マジっぽいな。ていうかなんだよ勇者って....英語に訳すとbrave....だからなんだ、関係ねーな今は。
魔王は....英語....には訳さなくていいか。
「証拠は....あるんですか?」
「勿論あるわ。証拠を見せたら信じてくれるかしら?」
まぁ、流石に証拠を見せられたら信じるしかない。無いと思うけど。
「信じますよ」
「じゃあ、早速....」
凛音先輩がおもむろに立ち上がった。
ーーーーブゥウオン
凛音先輩の足下に、魔法陣らしきものが現れた。
........魔法陣!?
「『我は絶対にして正義。力を持って悪を殲滅すべし。力を持って平和を体現すべし。解放せよ』ーー」
凛音先輩の足下の魔法陣が輝きを増す。
「ーー『我が聖鎧、そして我が聖剣』ーー」
凛音先輩が光に包まれーー
「ーー『我は勇者。平和の使徒なり』」
ーーそこにはーー
「どう?これで信じてもらえるかしら?」
ーー勇者が、居た。
ーーーーーーーーーー
状況が理解出来ない。
マジなの? トリックじゃなくて? あの魔法陣マジなの? あの鎧もコスプレじゃないの?谷間あるけど?割とスケベ鎧だけど?
「どう、かしら?」
「すごくエロいです」
鎧なんだよ。鎧なんだけど、色気がより増してるんだよ。鎧のテイストは守りながらも....エロいんだよ。
「そう、ありがとう」
「....」
「これで私の言った事、信じてくれかるしら?」
「はい....」
信じるしかねぇだろー。マジかよーうちの先輩異世界帰りかよー。
ていうかそもそも、
「何でその話を僕にしようと思ったんですか?」
「理由なんか無いわ。....でもそうね....強いて言うなら」
「強いて言うなら?」
「同じ部活の仲間だからよ」
イケメンかよ。違ぇわ、イケウーマンかよ。
「それと瑞稀くん、そこで気絶してるクソザコ魔王も似たような事が出来るわよ」
凛音先輩がいつのまにか気絶していた金髪先輩を指差した。
気絶するほど怖かったか....。「とぅいまてん」とか言ってたしな。
「マジですか....瑠天先輩は魔王ですか....」
「マジよ....ほら、起きなさい豚野郎」
金髪どっか行っちゃったよ。
「ヒャいっ、なんでしょう」
「変身しなさい」
「へ?」
「だから....変身しなさいクソザコ魔王」
「あなた、それは....しかもその姿....」
金髪先輩がいつになくシリアスだ。
いつもはただのポンコツンデレなのに。
「いいのよ、事情はさっき説明したわ。....あなたが気絶してる間に」
「ムキーッ!! 」
あ、いつも通りだ。
「ワタシ、いつも言ってるわよね!!?除け者にしないでよ!!」
金髪先輩心の叫び。
「いいから、早く変身しなさい」
「は?嫌よ。何のために変身ーー」
「瑠天先輩の変身見たいなー」
「ーーしょうがないわね。一度だけよ」
「はい、ありがとうございます」
ちょろいな。
「でも、勘違いしないで。ワタシが変身したいから変身するだけであって、アンタのために変身するわけじゃないから」
「はいはい」
変身がゲシュタルト崩壊してる。
「ホントだからね! 勘違いしないでよね!」
はい、テンプレ頂きましたー。
「いいから早くなさい豚野郎」
凛音先輩が金髪先輩を煽る。
もう完全に金髪消えたね。
「うっさいわね....瑞稀、よく見てなさい....私の....変身」
「はい」
「ノリわっるー」
ーーーーブゥウオン
金髪先輩の足下に魔法陣が現れる。
「『我は絶対にして悪。力を持って世を混沌へと導くべし。 力を持って破滅を齎すべし。 解放せよ』ーー」
金髪先輩が纏うのは、先程見た眩い光とは真逆の....昏い、昏い闇。
「ーー『我が魔装、そして我が魔剣』ーー」
金髪先輩に纏っていた昏い闇が消えていく。
そこにはーー
「ーー『我は魔王。破滅の使徒なり』」
魔王が、居た。
今週もう一回更新するかもしれません。