幸福
地縛霊から解放された俺は、彼女である大月 桜華と久しぶりにデートしていた。
「あーよかった。もう会えないんじゃないかと思った」
黒のショートボブがよく似合う彼女は、隣町の大学に通う美人だ。あの地縛霊は顔だけは可愛かったが、俺はこういう美人のほうがタイプだったりする。
「俺もなんとかならないか調べたんだけどさあ、結局自分だけじゃどうにもならなくて。定島さんに助けてもらえなかったら大変だったよ」
「定島? ヤンキーだっけ?」
「そうそう。このあたりじゃそこそこ有名なんだけどね」
「なんか聞いたことあるような……ないような……」
「でもなんか最近行方不明らしいんだよね。良い人だったんだけど」
「まあヤンキーなんてそんなもんでしょ」
「かもね」
アイスクリームを舐めながら、桜華は話題を変える。
「そういえば風邪は治った?」
「うん、バッチリ」
「良かったー。学校休むぐらいって聞いて心配してたんだよ」
「ごめんごめん。それがなければすぐ会いに行けたんだけど」
「もー、そんな無理しなくていいから」
俺は今、幸せだ。
あの恐ろしいストーカーから俺を救ってくれた定島さんには頭が上がらない。
あの人はどうしようもない不良だと思っていたが、ちゃんと更生して幸せになってもらいたい。今は心からそう思えた。
だから新聞のおくやみ欄でその名を見つけた時は、本当にショックだった。三日ぐらい引きずった。
まあ、落ち込んだ俺を見かねて桜華が慰めックスをしてくれたので結果オーライだろう。
俺は今、幸せだ。