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真実

 ここのところずっと真知とヤッていた俺は、久しぶりにひとりの時間を過ごしたくなった。

 たまには昼間から風呂にでも入ろうか。俺は真知にはなにも言わずに銭湯に向かう。下手にあいつに行先を教えると、ついてきてしまうからだ。

 この銭湯は寂れているわけではないのだが、昼間から人に溢れているような場所ではない。今日も先客はひとりだけのようだ。

 先に体を洗って湯船に向かうと、見覚えのある男が居た。

 三島だ。

 哀れな男。最愛の彼女を奪われたあいつは今なにを考えているのだろうか。気になった俺があいつの隣に向かうと、あいつは俺を見つけて嬉しそうな顔をした。

 なぜだ?

 俺が固まっていると、三島は満面の笑みでこう言った。

「定島さん! あなた実はいい人だったんですね!?」

「……どういう意味だ?」

「どういうって、俺から五百里を引き離してくれたじゃないですか」

「どういうことだ。あいつはお前の彼女じゃないのか」

「とんでもない。ただのストーカーですよ」

 満面の笑みを崩さぬまま、三島は続ける。

「それもとびきりたちの悪い、妖怪の……ね」



「困ってたんですよ。毎日どこからか現れて、ずっと校門で俺のこと待ってて」

「待ち合わせてたんじゃないのか?」

「とんでもない。俺はつきまとわれてただけですよ。断ると包丁持って暴れるし……」

「手だって繋いでたじゃねえか」

「怖かったですよ。握りつぶされるんじゃないかと思いました」

「キスだって」

「ああ、見られてたんですか……」

 三島はそう言うと、不意に影を落とした。

「本当は、彼女としたかったんですよ。ファーストキス。でもあいつ、俺が彼女と会うと暴れるから、危なくて近づけられなかったんです」

「なんだ、それは」

「初エッチも桜華としたかったんだけどな……」

 うつむいた三島は、しかしすぐに笑顔に戻って俺に振り向いた。

「でも、助かりました」

 心底嬉しそうだった。

「定島さんがあいつをハメてくれたから、俺は解放されました。調べてたんですよ、あいつ妖怪かなんかじゃないかって。そしたらわかったんですよ。維織町の地縛霊だって」

「地縛霊だと?」

「そうなんです。惚れた男につきまとって最後には殺してしまう。解放されるには、他の男に惚れさせるしかない」

「真知が俺に惚れたから、お前が解放されたと?」

「そんな感じです。あと、ビデオレターも助かりました」

 三島はわずかに頬を染め、視線をそらす。

「あいつ、見てくれだけは良いから……正直、興奮しましたよ。俺に関係ないところで乱れてると気楽に見てられます。面と向かってエッチしてるとぶっちゃけ緊張して全然勃たないんですよ」

 俺はなにも言えなかった。

「じゃ、そろそろ出ます。あ、そうだ。気をつけてくださいね。あいつが妊娠するともう逃げられないらしいですよ」

 そう言い残して、三島は去っていった。チラリと見えた彼のシンボルは、俺のものより大きかった。

 残された俺は、呆然としたまま風呂を上がる。いつも飲んでいるフルーツ牛乳も喉を通らず、トイレに捨てて銭湯を出た。

「……待ってたよ、貞治」

 そこに居たのは――

「見て、これ……デキちゃった♡」

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