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チート拒絶世界の廃棄冒険者・無敵過ぎる機械公爵は見下す貴様らブタ共をファンタジーごとワンターンキルする  作者: 神達 万丞
第一幕 チート拒絶世界の廃棄冒険者・嫌われナガテはそれでも体にマジックで愛を刻みつける
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第3話「静寂世界とパルミラの宴」2

こんにちは。

台風が過ぎ去ってひと安心。


毎週水曜日 お昼頃更新。(たまに遅れることあり)


 再び舞台は夢を借りて洞窟へ……。

 主演としては回想するつもりはなかったのだが、不安要素というものは、焼き付いて中々脳内から剥がれないものだ。

 眠気で虚ろな思考回路のロックが外れ、記憶という名のビデオに内蔵されているテープが巻き戻される。

 こうして故意にカットしていたシーンのリプレイが始まった。


◆◇◆◇


 仲間達が大ハッスルしたお陰もあり、洞窟内は暮れの大掃除みたいな勢いで粗方片付いた。

 なので、障子破り要員である俺の出番が無くて何より。

 自己破産後に夜逃げした動物園の如く、辺りは物静かだった。岩盤から染みだした雨水が、重力に従って紐無しバンジージャンプ。その散り際の破音が周囲に響く。


 オークは全て外に出して焼却廃棄処分。放って置くと、そこからウイルスが蔓延する可能性があるからだ。これも依頼を受けた者の務め。ハンターは赤字になるモンスター退治はやらないから、領主から駆除依頼を受けた俺達冒険者が受け持っている。

 原人並の高い知能と技術力を持つが、扱いとしては猪とか鹿とかカラスの様な害獣みたいなもの。いや、巣を攻撃駆除する辺りは、スズメバチの方が妥当か。死体の部位に価値がないので売る事も出来ず、食用しては不味過ぎるので、廃棄しか道はない。


 俺は遅参した罰として、死体を取り逃していないか、独り寂しく薄暗い巣穴を移動していた。

 拾った小皿に大広間のヒカリゴケを入れた即席ランプが頼りだが、炎の様なパワーが足らず、とても先まで照らす根性がない。だが、何処にガスが充満している箇所と繋がっているか分からない以上、慎重にならざらるを得ない。


 ひとしきり歩いた所で、お嬢と再会した崩落現場まで足を伸ばしていた。

 幸い、あの物騒な槍の活躍で、石ころを綺麗に粉砕してくれ開通済み。今回は生来の怠け心より、探検好きな少年的好奇心が勝っていた俺は、更に奥へと歩みを進める。


 だが、期待に胸を膨らませていたが、数十分で行き止まりという、過度な期待のせいでありきたりな結末に落胆の色を隠せない。所詮、下等モンスターが急こしらえしたダンジョンだ。このC級アトラクションに何を期待していたのだか。


 学校の下駄箱ぐらいの広さはあろうか、風通しが悪いから足臭くなくて何よりだ。周りは見事に何もない空間が広がっていた。不自然な程に何もない。コケも鍾乳石もネズミやコウモリの動物も見当たらない。

 習性かなにかは知らないが、巣の住民達が集めたガラクタに紛れている換金アイテムを期待していたが当てが外れた。 

 神様は理不尽だ。お嬢に四六時中いびられている哀れな子羊に、ささやかなご褒美ぐらい恵んでくれてもバチは当たらないだろうに。


 当たり散らすかのように、何となくお嬢の面影がある岩を蹴った。

 すると間を置かず岩盤の一部が、臼を引くみたいな音を立てて転がる様に横移動する。一瞬、また崩落かと頭を過ったが、どうやら杞憂だった。通行止めかと思いきや、新たな道が姿を現したからだ。

 簡単に例えるなら、漫画で出てきた原始時代の大きな硬貨みたいな石が転がる、探検ものでは定番の仕掛けだな。


「隠し扉というやつか?」


 安心したのか声が漏れる。

 俺の眼前に開けた奥へ続く空洞から、夏の体育会系の部室を連想してしまう程、鼻が曲がる感じがする異様な獣臭いさと、ビッチ以外の女子は怖じ気付くかもしれない、変質者ぽい無数の息づかいが生暖かな風に乗って伝わって来た。

 これだけ大がかりな空洞を制作した割には頭数が少ないと思ったが、これで不可解な謎が解けた。


 ほぼ百パーセント最深部へと続いている通路を慎重に足を進めると、案の定、蜂の巣をつついた如く、奥からオークがわらわら沸いてくる。

 でも、ラッキーな事に道の幅が人一人通るのがやっとだった為、敵は一斉攻撃が出来ない。なのでタイマンだから、相手にするのが楽ちんだった。


 だが、そんなフィーバータイムも長くも続かず、またコスモがいた先程と同等な大広間に辿り着く。一面、盛大な蛍光色によるライトアップで視界が一気に鮮明になった。

 

 その最も最奥部に、やけに着飾った二回りサイズの大きなオークが、数多のムクロを組み合わせて作った趣味の悪い椅子にふんぞり返っていた。

 あからさまなダンジョンボスシチュエーションで、俺はげんなり肩を落とす。


「オマエ、ダレダ?」


 呻く様な聞き取りづらい低音が壁に反響して伝わってくる。


 低級モンスターの分際で人間の言葉を話すことが出来るのか。

 俺は知能の高さに素直に驚く。

 人間より高い文明を持つ高位魔族なら納得する。だが、相手はゲーム初期に必ず出てくるモブ雑魚キャラではないか。神のイタズラなのか、それとも突然変異なのか、興味が尽きない。


「てめえの敵だよ」


 交渉する気も友達になる気も毛頭ないので、ここは正直に答える。


「ここのボスか? 随分、部下達の歓迎が手荒いなぁ。普通はお茶とか出すものじゃな――」


 俺の考え抜かれたカッコいい前セリフを遮って、なんの予兆もない中、「まじか!?」いきなりバレーボールクラスの雷の玉がごっつい指先から解き放たれた。セオリー無視で。

 辛くも回転レシーブ並のアクロバティックで咄嗟に回避する。


 ここはまず、何事も会話シーンからだろと相手に言いたい。

 最高に盛り上がってから戦闘なのが基本パターンだ。ゲームだったらクソゲー決定。言うなればまだプロレスでゴングが鳴っていない状態で、マイクパフォーマンス中に大技を食らわすものだぞ。大事な進行プログラム舐めるなよ。

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