表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/25

第5話「再会と崩壊のエチュード」5

もう一作品と平行して作品作りをしたいので、また当分の間不定期にします。2作品ともスニーカーズ用に目指しているので、今年中には完成させる予定です。


 さて、どうしたものか。

 このままでは俺が首謀者だと話を捏造されて、王の耳に入ったら流石に伯爵でも庇いきれないだろう。反乱罪でもでっち上げられて異端審問の手によって、審議もろくに行われないで公開処刑だ。


 絞死刑かギロチンか、晒し首なら化粧はメタルかビジュアルロック系で頼むなど妄想を巡らせていると、宝くじみたいな努力無き奇跡なぞ信じるきはないが、「皆、鎮まれ!」フードを被った騎士達が俺と暴徒寸前な民衆の間に割って入る。どの世界でも公僕という人種は介入が大好きだなと悪態つくが、安堵している俺もいた。


「我々はエルレディア王国軍聖堂騎士団。これ以上の暴挙は教王ひいては主神プルートの背信行為と見なす!」


 白いフードを脱ぎ尊き素顔を晒すお偉い騎士様達。さぞかしオンリーワンなロボみたいに個性的で神々しいのかと思いきや、そこら辺の量産型となんら変わりはなかった。大所帯のアイドルグループや大量に産まれたハムスター並みに区別がつかない。


 エルレディア王国聖堂騎士団とは、現教王直轄近衛騎士団の正式名称だ。

 銃を実践配備されているだけあって、制服として白を主体に黒いラインが入った軽装のみ。動きやすさを第一に設定しているので鎧は装飾を施した胸当てオンリーだが、便利な防御魔法でコーティングされているので意外と事足りた。


「聖堂騎士様だ!  ありがたや」

「騎士様、この悪魔に天誅をお与えください!」

「このチート能力者が全ての首謀者です!」

「こいつが来たからモンスターが集まってきたんだ!」

「何を言って――、モガモガ!」


 この暴れ牛ならぬ暴れウサギの口を塞ぎ羽交締め。持ち上げているのでスカイウォークしているバタ足が負傷しているすねに当たって非常に痛い。

 相手が感情を爆発させている時は、幾らこちら側の言い分を並べても無意味だ。やってもいないのに謝るのは論外だが、あからさまな否定は薪をくべるが如くなので、ここは押し付けない程度に自己主張するのがセオリー。

 それにナガテ脳内最高評議会は、心覚えあるこのボイスに身を委ねても良いという結論へと、無責任な一流会社幹部の決議並みにスピード採決された。


「親愛なる愛の僕達よ、悪いけど魔物を呼び込んだのはこの少年じゃないわ。我等が追っていた厄介な魔物の残党が逃げ込んだのよ」

「……このナガテは確かになまら大たわけで、どうしようもないひねくれもの」


 多数いるモブ騎士達に混じって二人の見知った救世主達が俺を庇ってくれる。でも、前者は喋り方と外見のギャップにおぞましさを感じ、……後者の方はオチ入れようね。


「しかし、神の祝福を受けていない能力者は悪だ! 幾ら領主様の御恩情とはいえ、人間の皮を被った悪鬼羅刹を我等は容認しない」 

「こいつは俺達を破滅させる気なんだ!」

「我々は愛の神に賛同し全てを同等に愛する者。よって教えに従い業の深さも愛さなければなりません。それに何を恐れるのですか。能力者も万能ではありませんよ」


 感情をぶつける住人に対して、隊長らしき風格を持ち合わせた人物は、聖人もしくはエリートに相応しき言い返すことができないベストアンサーを淡々と提示する。


「皆さん、これ以上の問答はよしましょう。仮にも皆を救った愛すべき英雄に対して無礼でしょう。この場は私が預かります。教王と我らが愛の神プルートを汚す気ですか?」


 能力者を受け入れられない民衆はそれでも食い下がろうとするが、「私は愛する教徒達を罰したくありません」この男の本質なのだろうか、冷やかな眼差しが大火となって燃え広がる激情を一瞬で凍てつかせる。それは蜘蛛の子を散らす如く散り散りに逃げるには十分だった。


「災難だったねメシア殿」 

「騎士様、助けていただきありがとうございます」


 それは皮肉なのか本音なのか分からないが、こちらも動じず使い古された定例文で返す。無論、定食と同じセットなのでお辞儀も忘れないが、大手外食チェーン店を手本にしているので真心は籠ってないだろう。


 責任者らしき人物は、騒動で地べたに散乱している残骸と見分けがつかない俺のコートを拾い、「いいや、お礼を述べるのはこちらだ。改めてこの街を救ってくれてありがとう。教王に代わって最大の感謝を」人生初かもしれない今日二回目の握手を渡す素振りをして強引にされた。


 渋みのある外見はアゴヒゲがお似合いな年頃。BLに出てきそうな典型的ダンディなおじ様だ。ブクロの腐女子にはこれだけでご飯三杯はいけるだろう。ちなみに『ナガテとおじ様』というタイトルを瞬時に思い浮かんだ奴はもう末期だ人生諦めろ。


「私の名前はシメオン。聖堂騎士団の第三部隊長を拝命している身だ。君の行った尊い行為は神も見ているだろう」

「俺はライトルガード家の使用人ナガテ。お仕えしている領地の危機を未然に防ぐのは、無駄飯ぐらいでも至極当然の事かと存じます」


 しないとお嬢のお仕置が怖い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ