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第5話「再会と崩壊のエチュード」1

毎週水曜日更新

モーニングスターの閉め切りが終わったので、5話が終わったら、不定期にしようと考えてます。


 ここで改めて、自己紹介をしておこうか。断っておくが俺は自分の身の上話をするのが好きではない。気の利いた武勇伝の1つもあれば箔が付くのだが、生憎、青春時代に自転車で旅行を実践して、初日でお金落として挫折したトホホな残念無双ぐらいだ。

 それでも円滑に話が運こびやすくするのに、この恥さらしも役に立つのならやぶさかではない。


 俺の名前はナガテ。聖・エルレディア王国、ラクセイク伯を有するライトルガード家の御令嬢アルシャンデリアに仕える使用人だ。戦士としての元服はしたが、向こうの世界の基準だと、成人にはまだ程遠いヤングマンだ。

 冒険者の職業はシーフ。通常パーティーではフィールド及びダンジョンの情報収集、罠外し、錠前外し、財宝捜索諸々が担当なのだが、このパーティーについては、常日頃から奴隷とか召使いと勘違いされるだけの汚れ仕事全般を担当している。


 この某国のコメディー映画みたいな環境に転生する前は、ごく普通のサラリーマンを謳歌していた。バスと電車は寿司詰め状態の為、痴漢に間違われない様に精神を削る日々。毎月を毒の沼地を進むが如く過小評価による給料の減額から始まり、上司の理不尽な失敗の擦り付けや、やる気と能力の無い同僚の嫌がらせ、一発芸を鼻に掛けて言うことを聞かない後輩など、挙げ句の果て会社役員から飛び込みの膨大な資料制作の依頼、栄養剤片手に始発が出る時間まで続くサービス残業に日々耐えていた。そんな所は辞めれば良い話なのだが、生活保護を受けてる病気がちな両親を支える為には、闇雲に転職は良い選択じゃない。中々同じ仕事内容なんてないからだ。せっかくのこれまでの蓄積が無駄になってしまう。

 こんにちの精神力の源は、前世にて日々の葛藤から培われたものだと自負している。

 だが、知っての通り、お嬢の他人使い……、特に俺の扱いはブラック企業が裸足で逃げ出すかもしれないぐらい荒く劣悪だ。何事も出来て当たり前、出来なかったら死んでしまえ。

 お嬢と幼馴染みだというシガラミが無ければ、とうの昔に放浪の旅に出ているであろう。


 覚えもない前世の記憶で暫し苦悩した日々もあったが、俺が妄想家ではなく本物の転生者だと認識した後は、数多ある異世界物語の主人公の路線に逆らわず、嬉々としてセオリー通り貪欲に戦闘技術と知識を吸収していった。

 そのスキルの片鱗は、冒険の日々で人知れず消化している。

 そのお陰で神童なんて呼ばれてもてはやされた時期もあった。勿論異性からモテモテだぞ。だが、俺が能力持ちだと発覚すると環境は一変、元から持つ未知の知識も相まって、悪鬼羅刹、悪魔などと蔑まれ存在悪と化す。

 手を差し伸べてくれた伯爵と奥様のお陰で、死刑と追放は免れたが土地の者の視線はとても冷たい。

 それでも伯爵のある研究を従事しながら、ノアの基本設計思想を担当。アニメから取り入れた奇想天外な装備は他の設計者から驚嘆させた。


 そんな時、長い修道院のカリキュラムを修了して帰還したお嬢の元服の儀として、新たに軍人または冒険者として天下に名を馳せるという儀式が始まる。武門の家系のサガという奴だ。

 この為に開発したノアと俺達が色々サポートしているお陰で、一年ちょっとで、このキルブルゼーク地方では、モンスタースレイヤーの異名を持つまでになる。

 今ではこの土地ではそれなりに認められているので、高難易度ランクBの依頼も舞い込む事がある。因みにこの前のオークの巣駆除はランクGだ。(お嬢達には言えないが、亜種を入れたらB級は行くと思う)


 そんな有能なパーティーメンバーであるナガテ君であるが、その前に世界名作小説に登場しそうな下僕でもあるので、常にお嬢のワガママ振り回されて、わらべでも出来そうな普段の雑用もこなさなければならなかった。気の休まる暇などないのである。


◆◇◆◇


 あれから数日後のモンシロ舞う穏やかな昼下がり。地面は程よく天然床暖房、花壇で就寝していた早起きなカエルが、土の布団を押し上げ顔を出す。秋にセットしたであろう体内時計の目覚ましは早めに鳴るようだ。時間通りに起きたい俺的には迷惑でしかない。

 陽気で新芽も一斉に直立姿勢になっている。気が早いものは花も咲いていち早くアピール合戦だ。これが男だったらボディービルダーみたいにポージングしているのだろうか? ついつい、お局様OL達に強制連行されたマッチョバーのトラウマをリフレインしてしまう。ビルドショーのあの笑顔だけは嫌だ。


 今日はクエストではなく、他の街に仕事の所用で遠出中。息の詰まる箱庭から離れ、解放感を感じる澄んだ空気と 好奇心と行動力をいざなう果てまで抜ける大空に、鳥籠から放たれたインコになった気分だ。

 

 山を伐り拓いて築いた山岳要塞の中にあるので、人生の如く平坦な道がない。されど街は発展していて、市場も整備、表通りなら活気もあり、いたるところに物が溢れていた。

 それもその筈、ここは伯爵領の入り口であり、日本でいうところの峠の入り口であり、関所の機能もあり、陸の貿易の拠点でもあった。


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