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チート拒絶世界の廃棄冒険者・無敵過ぎる機械公爵は見下す貴様らブタ共をファンタジーごとワンターンキルする  作者: 神達 万丞
第一幕 チート拒絶世界の廃棄冒険者・嫌われナガテはそれでも体にマジックで愛を刻みつける
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第4話「騒がしいアフタヌーンとステータスバトル」5

 

 偏屈なマイロードは相変わらず何が面白くないのか、口を固く結び高みから俺らを見下ろす。


 一本一本に至るまで、ビードロまたは飴細工を彷彿させる程に繊細な光沢を持つ髪の毛。思わず収穫前の稲穂とか紅葉時のいちょうを連想して見惚れてしまう美しさだ。厳しくも暖かい秋風に吹かれるトウモロコシのふさが流れるみたいに、長い髪が静かにワルツを踊ってる。

 鼻梁は通っていて高め。肌は年相応で皮を剥いた新じゃがの様に瑞々しかった。ただ、笑えば良いのだが、いつも通り不機嫌そうに唇がへの字なので、彫刻のモデルも務まりそうな整った顔立ちが台無しだ。更に前線の戦士か狩人なみに眼光鋭くかなりきつい。自分の妹達や来客の貴族のお子様を何回泣かしたか分からないくらいだ。


 何時もはヘビーアーマーを装着しているから分からないが、本体は無駄な脂肪が一切無い体つきをしている。なので清楚さと気品を兼ね備えた純白のワンピースが栄えていた。腕の裾は肘が見え隠れするぐらい、スカートの丈は太もも辺りまである。先端部分と胸元は全て透けたレースになっていた。

 大人しく自分の部屋に引き篭もっていたら、深窓の令嬢に見えなくもない。

 

「貴方達にお金を分配するわよ。交渉して少し色を付けてもらったから、ありがたく涙を流しなさい」

 

 相変わらず高飛車だ。お嬢お得意の毒舌トークで当たり前の様に人を見下ろして会話をする。貴族の特権だとでも言いたげだ。ライトルガード家の帝王学に記してあるのだろうか。

 今日はオフだからメガネを着用。伊達だ。

 しかし、お嬢はたかが眼鏡に『ビーストファング』の異名を持つ母親譲りのその狂暴な目つきを中和出来ると思っているだろうか。


「ミネヴァ、姿勢がだらしないと嫁の貰い手がないわよ」

「けっ! 余計なお世話だ」


 鈍く短い重音がなる。テーブルに置いた麻袋からだ。

 何時ものように、リーダーの手から冒険者組合からの褒賞金が均等に分け与えられる。余計な一言のおまけ付きで。


「パルミラ、もう少し歳相応の格好をしなさい」

「うー! 嫌なのだぞ」


 うさ耳が横回転でピクピク動く。


「アルシャンさあ、リーダーなんだから今日ぐらい、アタイ達を労ってくれよ」

 

 流石に傷ついたのか苦言というか文句。あの理想とは遠くかけ離れたステータスを直視した後では、傷口に大量の塩を擦り込むが如くだ。


「……」


 それを受けて思案顔のお嬢。率いる者として、空気を読んだり士気を維持するのも立派な勤めだ。俺だってプロジェクトリーダーの時は、一緒に飲み食いしながら、中々曲げない部下達の言い分と妥協点を探ったものだ。


「コスモス、良いお嫁さんになるわよ」


 会心のどや顔。

 お嬢なりの気遣いだが、何処かズレている。


「うわーん! そんな褒め方されたってちっとも嬉しくないやい」


 本名で呼ばれるのが嫌いなので、少し声のトーンが高めだ。


 パーティーは不満爆発。

 お嬢もブーイングに耐えかねたのか、騒ぎが大きくなる前に、


「……分かったわ。色を付けるから許して」


 袋から銀貨3枚ずつ各人に追加。


「アルシャンデリア愛してる」

「これからも絶対の忠誠を誓うのだ」

「僕は怒ってはいないよ」


 なんて現金な奴等だ。コインを前に置かれると、満腹になった雛鳥みたく騒ぎが一瞬で止んだ。世の中は銭じゃないと言いたい。

 それはそうと、現金とマネー、今のがシャレに聞こえたのなら、前世から宴会で披露してきたオヤジギャグに磨きがかかったと言うことだろう。新人の女子社員には大絶讃だったからな。調子に乗ってたら最後は皆泣いていたが……。


「にしし、早速増やさないと、ベルガモンの名にかけて」

「これでお菓子買うのだ」

「僕も家にお金を入れる時、弟達にお菓子買って帰ろうかな」


 嬉々としているギャンブル馬鹿は放って置いて、能天気メイドと勤労少年では同じ意味合いでも天と地の差に感じる。


「万年発情期」

「普通の人間ですが」

「種馬」

「俺の遺伝子情報なんて誰も受け継ぎたくないですよ」

「不純異性交遊」

「何の事だか」

「このゴミ虫」

「お褒めに預かり恭悦ですお嬢様。クソ虫から評価上がりました」


 他者と比べ、毒舌の質と量のレベルが違う。ありがたいことに俺を特別に意識しているという事だ。使用人冥利に尽きるが、「有りがたく受け取りなさい。虫ケラ」ならばテーブルの上に直に置かれた銅貨三枚は何のイジメだろうか。正統報酬から程遠い。


「我が家の最大功労者を一晩貸してあげたのだから、当然の対価よ。色情魔」

「ありがたい説明ありがとうございます」


 別に何もしてませんけどね。

 ミネヴァ達もいるし、ここで無理して誤解を解く気力もなかった。先日の事を指しているのは分かるが、ご機嫌斜めなお嬢に、どう取り繕っても結果は同じなのだ。なので、追加分の出所の袋にナガテと書かれていたのだって、敢えて追求はしない。音声ガイド顔負けのマニュアル通りの対応で事を進めている。

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