第4話「騒がしいアフタヌーンとステータスバトル」4
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「なら無難に良い人」
毎度の事だがこんな茶番に付き合う気は更々ない。されど女のヒステリーは後に引くのでここは男の方が折れるのが円満の秘訣だ。
「また自虐ネタかよ」
「え? 本心だが」
何がおかしいの?
「そ、そうだね」
「ふはははっ」
何故か苦笑しているコスモ。口元が引きつっている。
その隣では余程ツボに入ったのか、腹を抱えて爆笑中のパルミラ。椅子が標準サイズなので床に足が届いていないからバタ足し放題だ。
「全く失礼な奴等だ」
こんな性格難の集まりとまともに付き合っているのだ、良い人じゃなかったらなんだと言うのだ。パーティーメンバーじゃなかったらボランティアでもごめん被りたい。
ミネヴァは全域を占領していた皿を革命を起こした様に下に追いやり、新たな政権もとい出し物の為にテーブルを空ける。
「さあ、我輩からなのだ」
パルミラはあらかじめ用意していた数枚の紙をテーブル中央に置き、その1枚を自身の手元で広げる。
時間が掛かるのであらかじめ呪文展開して待機していたステータス開示魔法を発動、携帯用ソーイングセットから針を取り出し親指に軽く差す。痛かったのか涙めになりながら、滲み出てきた朱色の液体で血判を押し白紙に呪文を送り込みプリントアウトする。
パルミラ・ガーフィールド
エルフ
Lv.32 魔法使い
HP 225/225
MP 328/328
STR 79 VIT 85
DEX 123 AGI 201
INT 251 MND 212
LUK 156
称号
《炎を制す者》《メイドマスター》
《年齢詐称》
固有スキル称号
《楽天家》何も考えていないだけ。
《天災》災いを呼び込む。エンカウント率が高い。
《幼児体型》ロリコンの攻撃を無効にする。
《※※※》??
「あう~、おかしいのだ。何故にない?」
本気で言っているのか、現実を見ない夢見がちなエルフは、腕を組み不思議そうに頭を傾げた。
「はははっ!」
「くきき、パルミラよ、もっと自身を理解した方がいいぞ」
「ドンマイ。次があるよ」
「そうなのだ、次こそはグラマラスに」
「「ねぇよ」」
相性が悪い筈の俺とドワーフはハモった。
それよりもだ、相変わらず魔力高いな。魔法使いだから当たり前なのだが、それを差し引いても中々の魔力保有量だ。エルフなのに弓が苦手みたいだが、十分補っていた。
ステータス表記を簡潔に解説すると、名前、種族、職種、レベル、残り体力と精神力。STRは力、VITは我慢強さ、DEXは器用さ、AGIは素早さ、INTは知識、MNDは精神力、LUKは運を示している。遊び要素が強いのが称号、最後にネーミングはセンスないが、意外と使い道がある固有スキル。
ステータスは生きとし生ける物全てが照準装備している。即ち、無いものは生物すらないと言うことだ。
「こい! ――う……」
次の二番バッターである我が隣人は、ナイフで指先の皮に切れ込みを入れ血を垂らす。不安がっていた顔も、数値が書き込まれると同時に大学試験で桜が散ったみたいに硬直。
コスモス・ゴールドガーデン
ヒューマン
Lv.17 勇者
HP 270/270
MP 86/86
STR 179VIT 185
DEX 123AGI 239
INT 151MND 112
LUK 256
称号
《頑張り屋さん》《規則正しい》
《男の娘》《良いお嫁さんになる》
固有スキル
《イノセントサキュバス》全ての種族を魅了する。
《花嫁修業》将来役に立つ。
《正義の味方》相手が悪だった場合、ステータスが上昇する。
「ははは、だぞ」
「くきき!」
「何でお前がお嫁さんなんだ!?」
「うわーん! 今度こそ僕は男の中の男と書き込まれていると思ったのに」
だから、そんな事を言っている限り、未来永劫訪れない。
納得が行かないのか、勇者殿はご機嫌ななめだ。
「ふふ、次はアタイだな。さあ、刮目するが良いさ。皆が羨む、伝説の勇者一行の子孫らしいステータスを」
なとど落胆している落伍者を他所に、速攻で失敗フラグを立てるミネヴァ。
親指の先を豪快に噛んで滴り出した血液を急いで紙へ写そうとするが、力んだせいで血判の周りが朱色で滲んだ。
ミネヴァ・ベルガモン
ドワーフ
Lv.17 戦士
HP359/359
MP70/70
STR 379VIT 285
DEX 123AGI 101
INT 51MND 212
LUK 16
称号
《特攻隊長》《アニキ》
《男より男らしい》《ギャンブラー》
固有スキル
《むっつり》隠れエロ。
《一方通行》人の話を聞く耳を持たない。チャーム無効。
《男料理》大雑把だが旨い。回復量が通常の2倍。
《チチ》男の夢。揺れる度に仲間の異性は攻撃力が上がる。
「なぜだぁ!」
まるで神に問うが如く天を仰ぐ。勢い余って、椅子の背もたれに重心が行き過ぎ傾き倒れた。
相変わらずドワーフだけあって身体能力が高い。反面、考える数値が致命的に低いのは、欲望に忠実だと言うことだ。
「「イエーイ!」」
ロリとショタがハイタッチ。
「アニキ、ステータス悪化していないか?」
「アニキこれは酷いのだぞ」
「羨ましいなアニキ」
我らがチームはからかう時は連携バッチリだ。
「乙女に向かってアニキ言うなぁ!」
暇つぶしがてらな割りに個々がヒートアップしてきた所で、
「待たせたわね、下々の皆さん」
最後のピースがはまり、ここに役者が揃う。