二人
秘密基地には大きな部屋が2つとそれぞれの個室に使える小さな部屋が15部屋。それと風呂とトイレがあった。
なぜ、こんな森の中にこんな地下があるのか、なぜ、社会が崩壊してしまったのに風呂やトイレの水道が使えるのか。いろいろな謎はあったが、とりあえずはこの秘密基地のおかげで生活できていることと秘密基地の存在以上に圧倒的にミステリアスな雰囲気に包まれた四角い箱の存在によりそんなことは気にされなかった。
無論、本当に全く気にしていないわけではない。しかし、いくら考えたところで答えなど出ないのだから仕方がない。
イトの部屋は食堂として使われている大部屋から一番近い部屋だった。
食堂には当然、四角い箱がおかれており、食事や水分補給はこの箱から出てくる食料に頼るほかない。
しかし、イトだけはこの箱に頼る必要はなかった。
水や食べ物が欲しいと思えば何もない空間からなぜか望み通りの物が出てくるからだ。だが、この謎の現象はそれほど都合のいいものでもなく。お菓子やスイーツは現れなかった。
なので、箱から食料を取り出さずとも生きてはいけるがイトの大好物であるチョコレートは手に入らなかった。
箱からは1日50回まで食料を取り出せるのにイトが箱から食料を取り出すことを我慢する理由はない。
寝る前に箱からチョコアイスを取り出し、自室に持ち込みゆっくりと食べるのがイトの日課だった。
イトが自室でチョコアイスを堪能していると誰かがドアをノックする音が聞こえた。イトはチョコアイスを食べる手を止めてドアを開けた。
「どうしたの?」
イトが扉を開けるとそこには真剣な顔をしたクロがいた。
「少し話があるんだ。部屋に入れてもらっていいか?」
「…?どうぞ。」
話とは何だろう。そう思いながらイトはクロを部屋に入れた。
「話って?」
「俺はしばらくしたら他の生き残りを探すためにココを出ようと思うんだ。世界から食べ物が全て消えた日に空が赤く光っただろ?あのとき、見たんだ。いくつかの白い光の線が地上から空まで昇っていくのを。その線が昇っていた場所の一つがここなんだ。」
「ということは…」
「ああ、たぶん白い光が昇っていた場所にココと同じような場所があるはずだ。だから、俺は色んな場所に行って。俺の腕やお前の目の情報を探そうと思う。それと黒い角の男も気になるしな。」
「私も一緒に行く。」
「よっしゃ、なら二人で行こう。」
「でも、ココにいる人たちはどうするの?」
イトとクロには不思議な力があるからレスモに襲われても特に問題はない。しかし、普通の人間はレスモの群れに対抗できないだろう。イトは自分とクロがいなくなったあとのグレたちが心配だった。
「そうだな…。じゃあさ、俺たちでここら辺のレスモを倒しちゃおうぜ。そうすりゃいくらか安心できるだろ。ココを出るのはそれからにしよう。」
「そうね。分かった。」
「よし!そんじゃ今日はもう寝るかな。こんな時間に悪かったな。俺はもう部屋に戻るぜ。」
「うん。それじゃ、おやすみなさい。」
「おう!おやすみ!」
イトは残りのチョコアイスを食べながら自分の目のことを考えたが、やはり答えなど出ないままチョコアイスを食べ終えてしまい。お使いで疲れていたせいかそのまま眠ってしまった。