黒い紋章
秘密基地に帰りついた二人は帰り道で出会って黒い腕の男と、その男が言っていた黒い角の男についてグレに聞いてみることにした。
「おかえり、二人とも。無事でよかったよ。こんな危険な役割を二人だけに任せてごめんよ。」
グレは申しわけなさそうに謝ってきた。
「別にいいよ、それよりさ、さっき変な奴に出会ったんだ。」
「変な奴?人間だったのかい?ならココに来てもらった方がいいんじゃないかな。」
「いや…。それがいろいろあってソイツ…死んじゃったんだよ…。」
「そうなのか…。その話、詳しく聞かせてもらえるかな?」
クロはグレに黒い腕の男のこと、イトの赤い目のこと、自分の腕にも何かあるらしいこと、そして黒い角の男のことをグレに知っている限り話した。
「ふむ…。じゃあイトの赤い目が男を倒したわけだね。申しわけないけど、僕には黒い角の男のことは分からないな。それより、今はイトの目とクロの腕について考えたほうがいいかもしれない。イトに悪意を持っている人間やレスモがイトの赤い目に睨まれると死んでしまう。これは間違いないね?」
「うん、たぶん…。」
イトは俯きながら自信なさげに肯定した。
「じゃあ、イトは赤い目で敵を睨んでるときどういう感じだった?」
「えっと、なんか足とか腕とかの映像が頭の中に浮かんでソレが少しずつ壊れていく様子が見えた…。それ以外には特に…。」
「そっか、ありがとう。じゃあクロの腕についてだけど・・・
」
「あ、ああ…。」
グレがクロの腕の話に触れようとするのをクロは嫌がっているようだった。
しかし、この疑問をいつまでも放置しているわけにはいかない。今、全ての疑問は解けないとしてもできる限り知っておいた方がいい。そう思いグレは質問を続けた。
「クロ、少し腕を見せてもらってもいいかな。」
「分かったよ…。」
クロは服の袖をめくり右腕をグレの目の前に差し出した。
「これは…。なんだ?」
クロの右腕には黒い紋章のようなマークが描かれていた。
「さあな、俺にも分かんねーよ。でもコイツが俺の腕に現れてからなんだ。俺が強くなれたのは。」
「クロの身体能力が高いのはこの模様のおかげなのかい?」
「だから、分かんないんだって、まあ、コイツが現れてから強くなれたわけだし、たぶんそうだと思うぜ。」
「ふむ、わかった。ごめんね二人とも。疲れてるだろうに休む間もなくこんな質問して。」
「ううん、大丈夫。そんなことより、はい、コレ。」
イトは秘密基地での生活に必要な物が入った袋をグレに差し出した。
「おお、ありがとう。これでしばらくは大丈夫だね。とりあえず、二人とも今日は休んでおくれ。生活必需品も補給できたことだし明日はこれからどうするか皆で話しあおう。」
二人はグレの言葉に従い、今日はゆっくりと休むことにした。明日の話し合いに備えて…