IF
「そうか、IFはあの少女の目に宿ったか…。くく…。それにあの少年の腕は…。」
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お使いはもうすぐ無事に終わる。秘密基地での生活に必要な物も揃った。しかし、イトにはまだ心配事があった。それは『まだこの世界に生きている人間が他にいるのか』ということだ。
いくら食料と生活必需品はあるからといって、いつまでも地下に閉じこもっていては何も始まらない。
イトはクロにそのことを話してみたがクロもそのことについては不安を持っているようで
「うーん…。他に生きている人がいるといいんだけどな…。」
という弱気な返答しか得られなかった。
「まあ、今そんなこと考えてもしょうがねーよ。それより、ほら、もうすぐで森につくぜ。とりあえずあそこまで行けば・・・」
クロはイトの不安気な表情に耐えられず話題を切り替えようとした。
そんなクロの言葉を遮るように、一人の男が二人の背後に現れた。
「待っていたぞ、さあ、その目と腕をよこしてもらおうか。」
そう言い終えるよりも早く、男は二人に攻撃を仕掛けてきた。人間の腕の形をしていたはずの男の腕は黒い煙とともに姿を変え、ゲル状のドロドロした物体が自由自在に変形しながら二人に襲いかかる。
「なんなんだよ!お前!!」
クロはイトを守るためにゲル状の物体を止めようとしたが敵うはずもなく。あっさりとゲル状の物体に押さえつけられてしまった。
「くそっ!!離せよ!!」
「くくく…。お前の腕はあとでしっかりと頂く。それよりも先に目だ。」
男は身動きがとれないクロを無視してイトの目に向かってスプーンのように変形した腕をのばした。
その瞬間、イトの目は再び赤に染まり。
男のスプーンのように変形した腕をへし折った。
「ぐ…。がああぁああ…!!!」
男は激痛に悶えながらのばした腕を元に戻した。
「くそっ!!やはり、その目は危険だ!出てこいIF!アイツの目を抉れ!!」
男がそう言うと同時に男の腕からゲル状の物体が剥がれ落ち。黒い犬が現れた。黒い犬はイトに飛びかかろうとしたが・・・
「動かないで」
イトが赤い目で睨みながらそう呟くと黒い犬は縮こまり大人しくなった。
「おい、どうした!!早く目を・・・」
「黙って」
男は苛立ちながら黒い犬を怒鳴ろうとしたがイトの赤い目に睨まれると言葉を失ってしまい何も言えなくなった。
「なんで私たちを襲うの?私たちの腕と目に何かあるの?」
「ふん…。答えられるわけが…。」
「答えて」
返答を催促しながらイトの目は男の足を破壊した。人の骨が砕ける痛々しい音のあとに男の悲痛な悲鳴が続いた。
「がああぁあああぁ…!!!」
それでも男の意志は固く。質問に答えることを拒否した。
「ここで情報を吐いて生きながらえても、どうせ帰ってから殺されるに決まってる…。私は答えんぞ。」
「そう…。それじゃ、サヨナラ。」
イトは目を見開き男の心臓をイメージした。そして、そのイメージした心臓が潰れていく様子を想像し、圧力に耐えられず血を吹き出す心臓の映像がイトの脳内で完成した。
すると、男は断末魔をあげることもできず、ただ苦しそうにその場に倒れた。
「お、おい…。殺した…のか?」
男が倒れ、拘束を解かれたクロがイトに問う。
「…。わからない…。」
しかし、イトにだって何がどうなっているのか、自分の目に何があるのか全く想像もつかなかったのでそう答えるしかなかった。
「死んでるのか…?こいつ。」
クロが男の死体(?)に近寄り確認しようとした。
「くく…。まだ死んではおらんよ。まあ、もう助からんがな…。どうせ死ぬんだ、せっかくだから教えておいてやる。いいか、黒い角が生えた男には近寄るな…。俺はアイツに……。」
男は最後の力を振り絞り二人に何かを伝えようとしたが、最後まで伝えることはなく息絶えた。
「黒い角の男…。」
「なんだったんだコイツは…。とりあえず帰ろうぜ。ここにいても仕方ないだろ。」
二人は自分の身に宿った謎の力に疑問と不安を抱きながら秘密基地に向かって歩き始めた。