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イトの食日記  作者: ブレサリアン
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マンイート

毎日更新しますのでよろしく。

 いつからだろう、人が人を食べることをためらわなくなったのは。


 戦って、殺しあって、強いほうが生き残って、負けた者は食べられる。

 

 いつまで人はこんなことを続けるのだろう。もう、うんざりだ。


 真冬の冷えた風を細い体に受け、白いため息をつきながらイトは先ほど自分に襲いかかってきた青年だったものの頭を叩き潰した。


 頭蓋骨が砕け、血と脳は弾け飛んだ。


 誰がこんなものを食べたいと思うだろう。


 イトは三年前の夏の出来事、人が人を食べることに罪悪感を感じなくなった日のことを思い出しながら青年の死体をズタズタに引き裂いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 8月31日、この日が人が人でいられた最後の日になった。


 一瞬、空が赤く光ったその直後、人が食べられるものは人以外に残っていなかった。


 豚も牛も畑も田んぼも鶏も虫さえも地球から姿を消した。


 食料が突然すべて無くなりパニックに陥った社会は最終的に人が人を喰うために殺し合い、一滴の水のために子供や赤ん坊の命ですら奪いさる地獄と化した。


 まだ15歳だったイトがこの地獄を生き残れた理由はただひとつ。


 イトは異常に運がよかった。


 食料が地球から消え去ってから3日程たった。 


 人は共食いをはじめた。


 秩序は崩壊し、弱い者は自分より強い者にただ奪われるだけの世界。


 そんな世界で15歳の少女だったイトは生き残った。


 あるときは自分に襲いかかってきた中年の男が心臓発作をおこし急死し、イトが飢えて死にかけたときには何故か消えたはずの食料がイトの目の前に現れた。


 イトが危機に陥る度にまるで世界がイトの死を拒絶するかのような奇跡がおこりイトは生き延びてきた。


 何度も謎の奇跡により命拾いしてきたイトだったがその心中は悲しさで溢れていた。


 人が人を殺し人を食べている。


 その事実がイトの心を追いつめ、耐えられなくなったイトは自殺することにした。


 イトは自殺の方法に飛び降り自殺を選んだ。


 最後に自分が生活していた街を眺めたかったからだ。


 今は地獄と化しているが、食料が消え去る以前の街は活気に溢れていた。


 裕福な家に生まれ、親に大事にされ、活気に溢れた街で楽しい毎日を過ごしてきた。


 街を眺めているうちに様々な思い出がイトの頭をよぎる。


 思い出の中にある楽しかった毎日と地球から食料が消え去ってからの地獄のような毎日がイトの頭を交互に揺らす。 


 楽しい日々はもうここにはない。


 イトは涙を拭い、ビルの屋上から飛び降りようとした。


 イトが自らの命を投げ捨てようとしたその刹那。


 救世主は突然現れた。

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