第7話 久一の射法八節
監督が本当の射法八節を見せてくれた。監督はジャージ姿であの二人のようにまずは立つ。そして、射法八節を始めた。掛け声はないみたいだ。しかし、一つ一つあの二人の射法八節を超えていた。綺麗な形だ。そして、俺は見えた。弓の幻影が。監督は何も持っていないにもかかわらず、見えたのだ。弓を引いているのが。
「どうだね。」
「………。」
言葉を失った。弓を持たずして、感動させられるとは。
「試しに君もやりたまえ。体験入部なんだし。」
「あ、はい。」
俺は、未來、監督、陽一、塔矢が見つめる中初の射法八節をすることになった。
「俺みたいに幻影を見せようなどと思わず、形を意識しろ。」
「あ、はい。」
俺は始めた。まず、監督がやったように立つ。そしち、頭の中で射法八節を言いながら、やった。監督がやったあの形を思い出して…。
それを見ていた監督は言葉を失っていた。
射法八節終了。監督以外の皆から拍手を受けた。
「な、なかなかうまかったよ。」
と陽一。
「綺麗だった。」
と塔矢。
「良かったよ。」
と未来が言う。しかし、監督は何も言わなかった。
「あ、あの監督どうでした?」
俺は監督に聞く。しかし、監督の耳には届いてはいなかった。それは、そう見えたのだ。幻影が。初めてやる奴の射法八節ではなかったのだ。
「君…。」
「はい。」
「弓道部に入りなさい。きっとエースになれる。」
「ありがとうございます。しかし、お断りします。」
「なぜ?」
「俺は部活には入りません。いや、入りたくないんです。」
「だからなぜ?」
「それは……」
「それは?」
「ともかく、入りません。体験入部楽しかったです。ありがとうございました。」
俺は荷物を持ち道場から去ろうとする。すでに時間も部活活動時間終了時刻だった。
「久一くん。私は待っている。君が弓を射り、周りを魅了する日を信じ、待っているからな。」
という監督の言葉を最後に部室を出たのだった。




