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転生して人生をやり直す!

作者: 唐草

「よっしゃ!死のう!」

そう田中太郎が決心したのはとあるうららかな春の日であった。

田中は28歳高卒ニート、これといった長所もなくただ日々だらだらとネットをして過ごし、クズな主人公が異世界でハーレムを作る小説を読んでは自分もいつかそうなるのではないかと妄想していた。

時は4月8日。

家のそばにある中学校では入学式が無事終わりこれからの自らの人生をバラ色と考えているであろう生気にあふれ幸せそうな学生達が帰路についてた。

窓からその姿を眺めていた田中は猛烈な鬱状態へとなっていた。

「俺はもうだめだ……同級生はみんな働いているのに俺はなにやってるんだろ……」

何回もやり直そうという気にはなったが結局のところ何も出来ず、ただ怠惰に過ごしていた自分の人生を振り返り田中はひどい自己嫌悪へと陥っていた。

きらきらと輝いている中学生達を見て田中はもう自分は浮上出来ないのだと悟った。

この時田中は自殺を決心したのだ。

過去に自殺を決心したことは幾たびもあったがそれは生来の物臭と意志の弱さで頓挫していた。

しかし、この日の田中は違ったのだ。

「母さんはなにも言わないが実はお前に死んでほしいと思っているぞ」

4月7日、つまり前日に父親から言われた言葉である。

父からしたらこの言葉で奮起して欲しいというつもりだったのだろうが田中はそうは受け取らなかった。

生みの親に死んでほしいと言われる。

もはや自分に生きてる価値はないのだととうとう知ってしまったのだ。

そんな思いから逃げるように異世界転生小説を読み現実逃避をしていたが、中学生達の姿を見てもう死ぬしかないのだという思考の檻にとらわれた。

こうして今までに類を見ない意志の強さで彼岸に行くことを決めた。

準備は簡単である。

家の倉庫から丈夫な縄を持ってきてネットを参考にしながら両端を輪っかにし、片方を部屋の上部にある出っ張りに引っかけるだけだ。

何故首つりにしたかというと代表的なリストカットや練炭は準備が大変だったり、痛みで失敗に終わったりしそうだからである。

準備中は気分が高ぶっていた田中であったが、台に上り自らを死に導くリングを目の前にして頭から血の気が引いていった。

当然である、自分は今から死ぬのだ。

小説と現実は違う。

異世界転生なんて出来るわけがないのだ。

しかし田中は目をつむり、首に縄をかけた。

田中はこう思った。

小説の主人公達は転生できると知っていたのだろうか?

いや知らなかったはずである。

さらに死後の世界を見てきたやつなどいないのだ。

ならば自分が転生できないという確かな証拠もないのだ。

自分は物語の主人公だ。

来世では幸せになるのだ。

田中は台座を蹴った。



田中は所詮ただのクズな一般人であった。

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