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陰陽双記譚  作者: 奥義 扇
邂逅は夜の帳の中
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蒼然たる帳に声を聴く

 それまで聞こえていなかった鈴虫の鳴き声が響く。

 声を聞いていると邪まなものが洗い流されるようで、自然と声の方に近づいていく。

 闇夜に眸が慣れ、脇道に茂った雑草に鈴虫の姿が見て取れるが、あまりにも近づきすぎたために鳴き声がやみ、どこかへ消えていく。

 代わりに、老人のしゃがれたような不気味声が聞え、瞬間的に躰が強張る。

 辺りを気にしながら、聞き間違いだと否定するように顔を数回振るが、壊れた傀儡のようにぎこちなく動く。

 それでも、両耳は鋭敏に研ぎ澄まされている。

 完全に黙り込み、さっきの声はやはり違いだと思った矢先、二度目の声が聞えてきた。

 かたかたと震えながら、声のしたほうに顔を向ける。

 今いる場所はちょうど猪熊(いのくま)小路(こうじ)四条坊門(しじょうぼうもん)小路(こうじ)が交わる十字路で、東側、つまり四条坊門(しじょうぼうもん)小路(こうじ)方面から流れてきたようだ。

 陽も落ちて暗くなっているから不気味に聞こえるが、もしかして怪我か病気で苦しんでいる老人がいるかもしれないと思い始め、晴明(せいめい)は忍び足で小路(こうじ)を進みはじめた。

 もし、本当に苦しんでいる人がいるなら、助けないといけない。

 医者を呼びに行かないといけないし、もし動けるようならそこまで連れて行くのもひとつの手段だ。

 いろいろと考えていると、なぜか一軒の邸の前で足が止まった。

 明かりの消えた邸の前に立ち、無意識に唾を飲む。


 ――なぜ、ここで止まったんだろう?


 首を傾げて疑問を感じていると、三度目の声が聞えて来る。

 明らかに目の前の邸から聞えた声は、さっきよりも格段に不気味で、晴明(せいめい)は腰砕けになり、へなへなと地面にへたり込んだ。

 これは、怪我や病気で苦しんでいる声には聞えない。

 声が屋外まで漏れているのに、他の人達が姿を現さないのは、関わりを持ちたくないと決め込んで引きこもっている可能性もある。

 きっと、それが正しい判断で、近づいた自分が単に馬鹿(ばか)なだけかもしれない。

 左右を見渡し、正面に眸を向けると、中からかすかに声が聞えて来る。

 何を言っているのか聞き取れないが、これが(あやかし)なのか、と疑問符が浮かんだ。

 もしそうならば、陰陽生(おんみょうのしょう)として放ってはいけないことだ。

 ただし、新米の陰陽生(おんみょうのしょう)にできることなんて、ないに等しい。

 陰陽寮に戻り、保憲(やすのり)や他の人に報告することも考えたが、その間にもしものことがあればと思うと、踵を返している場合でないのも確かだ。

 自分の躰を手で支えながら立ち上がるものの、中腰でお尻を後ろに突き出したへっぴり腰の状態で、物音を発しないように門を潜り抜ける。

 そのままこそこそと裏庭に回る姿は、誰かが見れば盗人と勘違いしてもしかたがないだろう。

 したがって、検非違使(けびいし)に見つかれば無事ではすまないはず。

 それでも引き返さない自分に、晴明(せいめい)自身が一番驚いていた。

 これだけの度胸があれば、崇慧(たかとし)に一言以上言えるのではないかと自信も湧いてくる。

 人目に触れないように庭まで移動すると、植えられた木々に身を隠し、部屋の中を覗き見る。

 邸内は仄暗く、だが、門の前よりもしっかりと声が聞えて来た。


「これは……真言!? どうして邸の中から?」


 淀みのない流麗な言葉紡ぎと凛とした声色に、晴明(せいめい)は惹き込まれていく。

 陰陽師か修験者が物の怪退治をしていて、しゃがれた声はその対象だと想像すると、実際の現場に出くわしたのだと興奮してきた。


「こんなに綺麗につつがなく唱えられるなんて、きっとすごく優秀な人なんだろうな」


 誰が祓っているのか気になる晴明(せいめい)は、だめだとわかっているものの近づいてみることにした。

ここまで一気にアップしたけど、誤字などが不安……。


しかも、このアップスピードがいつまでも続くとは思えないけど、なるべく毎日は上げていきたいものです。


書き始めたばかりですが、気に入ってもらえるように頑張って行きたいと思います。

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