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陰陽双記譚  作者: 奥義 扇
邂逅は夜の帳の中
1/47

邂逅は突然に 前編

 月明かりの灯る、風のない暑い夜。

 そこに突如、突風が吹き荒び、土煙が舞い上がった。

 それと共に唯一の光源である月をゆっくりと雲が覆い隠し、辺りを闇に包み込み始める。


「…ぁ……あ…」


 (みやこ)には人に棄てられた幾つものあばら家があり、幾年も雨風に曝された廃墟の壁を破壊して現われた異形のモノに、偶然通りかかった少年は腰を抜かすと、言葉にならない声を発しながら凝視した。

 恐怖で躰の末端が痺れた様な感覚に包まれ、ガタガタと震えが走る。


 ――すぐに逃げないと!


 本能が警告を鳴らすが、恐怖に(すく)んだ躰は尻餅をついたまま動こうとしない。

 ただ、見開かれた眸だけが畏怖の対象物を見つめている。


「…っ、…はっ……っ」


 心臓がドクドクと早鐘を打ち、全力疾走した訳でもないのに息苦しい。

 ギラギラとした眼光で自分を見すえ、近づいてくる大きな異形を、雲の切れ間から差し込む月光が照らし出す。

 黄金色の毛並みで包まれた肢体に、すらりと伸びた胴体、躰の半分近くまである尻尾が白銀光を浴び、キラキラと輝く。

 異形の獣であるにも関わらずのその姿はある種、神々しくもあった。


「い、いたち?」


 惚けたように呟く。

 そう、ソレは確かに(いたち)の容姿をしている。

 しかし、(いたち)は人が抱えられる大きさの動物であって、間違っても平屋の軒上と同じ大きさではないはずだ。

 少年の脅える様を見て、(いたち)がにやりと笑った。

 それと同時に、細めていた眸を見開き、一気に襲いかかった。


「ひっ……」


 近づく(いたち)の化物から少しでも離れようとばたばたと懸命に手足を動かすものの、その場からほとんど動けず、噛み殺される、そう思ったとき、どこかから真言を唱える声が響き渡ってきた。


「オンハンドマダラ アボギャジャヤニソロソロ ソワカ!」


 誰かの唱えた真言は、物の怪と少年の間に見えない障壁を作り出し、衝撃で物の怪を後方へと弾き飛ばした。

 襲ってきた物の怪がいきなり弾かれ、自分から遠ざかる姿と突然の出来事に驚きつつも、早く逃げ出さないと、と思う気持ちとは裏腹に、腰が抜けてうまく動けないでいた。

 そんな少年に怒声が飛び、背後からいきなり襟首を掴まれて、力任せに引き起こされる。


「いつまでそこに座り込んでいる。さっさとどこかに行け!」

「う、うわっ!?」


 その勢いのまま後ろに突き飛ばされ、踏鞴(たたら)を踏んで態勢を整えようとするものの、結局は地面に転がり、さっきとさほど変わらない状態になっていた。

 涙を浮かべ、自分を突き飛ばした人物の顔を見上げると、そこには黒い狩衣(かりぎぬ)をまとった、自分とさほど年齢も変わらないであろう、整った顔立ちの少年が立っていた。

 彼は鋭い目つきで、尻餅をついている少年を一瞥すると、そのままの眸を(いたち)に向ける。


『ぐうぅ……、き、貴様のような童に狩られるなどあるはずがない。刻んで、我の力の糧にしてくれる!』


 両前足を鎌に変え、己の頭上にかざして叫ぶ。


「獣風情が人語を解すな、むかつくんだよ」

『小癪な! 死にさらせ!!』

「お前がな」


 振り上げていた鎌を振り下ろし、そこから発生したかまいたちが地面を切り裂きながら少年に迫る。

 かまいたちが迫っているものの、少年は冷静で、懐に手を忍ばすと白い短冊を取り出して前に出す。


凶悪(きょうあく)凶事(きょうじ) 凶事(きょうじ)災難(さいなん) 急々如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)


 手にした呪符を迫るかまいたちに向って投げつけると、符は風の刃と化し、二者の風刃(ふうじん)は甲高い音を響かせて砕け散り、消滅していく。


『ぐっ!? き、貴様のような童の陰陽師に、なぜこれほどの力がある!』

「小僧だろうが老体だろうが、力がある奴はあるんだよ。俺に出会った不運を怨め」

『こ、こんなところで滅せられる訳には……!』


 屈辱と焦りにまみれた(いたち)の眼光が、ぎらりと光る。

 陰陽師の後ろにいる、腰の抜けた少年の姿を視認したからだ。

安倍晴明とか陰陽師とか出てるけど、作者が妄想で勝手に書いている作品なので、時代背景にあっていないところもあるかもしれませんが大目に見て下さい。

あと精神的に打たれ弱いもんで、厳しいコメは大ダメージを受けてしまうかも……。

稚拙・乱文があるかもしれませんがご容赦ください。

誤字脱字があればご指摘していただけたらと思います。

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