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第四十五話「再び王都地下へ」


「悪いけど、『拡張工事して貰えるかな?』って伝えてくれる?」

「うん、いいよ」

 参謀殿に転送して貰った僕が戦乙女の姿に戻ったのには理由がある。

(そう言えば、ここの人達、戦乙女形態(もーど)でしか面識がなかったんだよなぁ)

 王都の地下に下水道を掘り進めひっそり作られた地下ダンジョン。活動拠点のつもりで作ったモノだが、味方になった元レジスタンスの身内を匿う場所として使えることに気づいたのだ。

「ここに居るのは親戚が三家族だったね?」

「あ、ああ」

 流石にレジスタンスの皆さんを全員連れて来るには手狭だった為、僕がついてきて貰ったのは王都方面に身内の居る数名と「おかしら」さんのみ。反応が微妙なのは、説明したとはいえ僕が会った時の神官姿から性別まで変わった戦乙女の姿をしているからだろう。

「物事を円滑に進める為、知り合いの姿を借りている」

 と元レジスタンスの皆さんには説明した。リアス達には冥王と戦乙女が別人というスタンスの為、この人達にも冥王と戦乙女の真実は知られる訳にはいかないのだ。

「じゃあ行こうか、『人攫い(きゅうしゅつ)』に」

「ああ」

 隠し扉になったドアを開け、少々臭う下水道を僕達は駆け抜け。

「出口ー♪」

 登り梯子の前で急制動を駆けた僕は真っ白な布を広げて自らの姿を隠す。

「うおっ?!」

「はい、変装完了」

「つーか、早すぎるだろ。いくらなんでも」

 翻った布の中から現れた神官姿に「おかしら」さんが半眼で僕を見るが、下水道の外ではもとの姿で行動するとは言ってあるのだ。

「世知辛いこの世界、神に仕えるには色々とできなくては不便なことが多いのですよ」

「そんな高速変装が必須技能なら、世の神官は九割方首だ」

 わざわざ布で隠して変装と言いくるめてみたものの、やはり無理があったのかもしれない。

(けど、時間的な余裕は無いからなぁ)

 砦攻めに協力して貰う――実際には一人で落としてしまったけど、約束は約束だ。僕には元レジスタンスの身内を保護する義務がある。

(っと、ん?)

 考え事をしつつ外に出ると、そこに立っていたのはボロボロの男。全身に返り血を浴び、手足があらぬ方にまがったままのそれが生者の筈もない。

「おい、なんだ? 急に立ち止まっ」

(拙っ、今すぐ死体のふりをして!)

 背中からの訝しむ声が終わるより早く、僕は刺客アンデッドへ指示を出した。

「っ、これは」

「ええ、どうやらもう息は無いようですね」

 地面に横たわるボロボロの死体。隠れ家(ちかダンジョン)のアンデッドとは対面させていない以上、たぶんこれで誤魔化せるだろう。

「いや、今倒れるような音がしなかったか?」

「脇にのけようとしたのか立てかけてあったのを私が触ってしまいまして。神職ですし、死者は丁重に弔う必要があるでしょう? もっとも、そんな猶予も無いことには手を触れてから気づきましたが」

 弁解しつつ、ばらけたアンデッドの手足を揃えてやる。

(どうやら雇い主は片づけられたかな)

 多分僕が下水道に居たからこそ首尾を伝える為にこのアンデッドは戻ってきたんだと思う。ならば、これでエリーが面倒を見ていた子供達も安全な筈で。

「行きましょう。申し訳ありませんが、他の方のご家族の保護もありますからね。のんびりしては居られません。少々急ぎますよ」

「急ぎますよ、ってさっきの瞬間移動を使えば――」

「あれは、所属する神殿に帰還する効果のある神聖魔法です。万能ではないのですよ」

 アンデッドを使うことを伏せた手前、参謀殿のことも話せず、僕は転移についてそう誤魔化した。何というか地下ダンジョンに小さな神殿を作っておいたのがこんなに早く役立つとは思っていなかったのだけど、そこは結果オーライだと思うことにしよう。

「親戚と言うことは家に来たこともあるのでしょう? 道案内はお願いしますよ」

 僕は元レジスタンスの人にお願いしながら夜のスラムを駆け出した。

 

数年後、そこには元気に子供が走り回る地下ダンジョンの姿が――。


相変わらず、夏は暑いですね。


久々の地下ダンジョン登場させましたが、続きます。

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