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第三十九話「欠点」


「急げ」

 三つ目の砦を落とすべく、僕は数を増した『不死兵団』と夜の森を駆けていた。

(夜が明けるまであとどれくらいかな……)

 一見無敵に見えただろう『幽霊部隊』にも実は致命的な欠点がある。僕が夜を待って最初の砦を攻略しにかかったのもこの欠点があるからこそ。

(太陽、か)

 そう。本物の霊体であるからか、日の光の下では存在さえ出来ない。建物などの影にはいるか実体化を解けば消滅こそ免れるけれど。

(けっこうギリギリだからなあ、実は)

 最初の砦の兵士達を掌握した幽霊達の憑依は、取っ組み合いで相手を押さえつけているようなモノであまり長いこと相手の意識を乗っ取っておける訳でもなくて。

(戻ってきたら「憑依を解かれた兵によって砦を奪回されました」じゃ笑えないし)

 一応、対策はある。憑依した兵同士に互いを縛らせて転がしておくという最後の手段が。

(せっかく降伏させた将への説明とか後で頭の痛くなることは多いけどね)

 離れては居ても幽霊達へ意思を伝える術はあるし、それ以上押さえるのが無理そうな場合は互いに縛って拘束しておくようにとは言ってある。

(とにかく、時間との勝負だ)

 アンデッド化した兵達は普通の兵士と違って通常では動けなくなるような損傷を受けても戦える。一見不死とさえ錯覚しそうな耐久力と死者が動いているという不気味さ。これだけでもアンデッドという存在が知覚されていないこの世界の人間なら肝が据わった人間でなければパニックに陥って全力では戦えないだろう。

(実践面での負けは、ない)

 これについては自信がある。

(けど、いくら急いでいるからとは言っても徒に人命を奪うのは避けたいよなぁ)

 多分、弱点(ネック)になるのは、そんな僕の甘さだろう。戦争に身を投じておいて人はあまり殺したくないという傲慢さでもある。

(いや、こんな僕だからこその反則能力(チート)だ。第一、能力縛りをする時に決めておいたじゃないか――人命が関わる場合は能力抑制の限りじゃない、って)

 偽善でも独善でも、構わない。

(終わらせるんだ、こんな戦いは――さっさと)

 そんな意思が僕の口から「急げ」という命となって兵達へ向けられる。

「っあ?!」

 だが、この時僕は自惚れていたのかもしれない。神に力を与えられようとも神ならぬ身、ましてや与えられたモノの中に未来予知に特化したような力はない。

「夜間の行軍ご苦労さん。で、だ……ご苦労ついでに金目のものを全て頂こうか?」

 前の兵士が急に止まり、危うくぶつかりかけた僕が我に返った時、前方には顔を覆面で隠した武装集団が陣取っていた。

(っ、こんな時に盗賊の類と出くわすなんて――)

 僕達が強行軍をしていた周辺は二つの勢力がぶつかり合う前線だ、ともなれば治安は低下し、ハイエナよろしく戦いのおこぼれを頂戴しようとする輩が現れるのは何も不思議ではない。

(蹂躙するのは簡単、時間をとられるのが嫌なら……)

 闇の神に授けられた力を行使すれば一蹴することは容易い、幻惑の力を使えばやり過ごすことも出来るだろう、と。

「抵抗しても無駄だぜ? 俺は『英雄の遺品(アーティファクト)』なんでな」

「っ?!」

 簡単に考えていた僕の予想を裏切ったのは、盗賊の一人が口にした言葉。

(事実なら厄介だけど、何でそんな実力者がこんなところで盗賊を)

「『何でそんな実力者がこんなところで盗賊をしてるのか』とでも思ったか? それとも俺の言葉を疑ってるのか? まあいい。説明してやろう。その方が素直に金目のものを差し出せるだろうからな」

 まるで僕の思惑を読み取ったかのように、盗賊は語り始める。が、個人的には手短にして欲しかった。

(ただでさえ時間が惜しいのにっ)

 いっそのこと幻影の力を行使して放置、一人で自分語りして貰おうかとも思ったものの、本物の『英雄の遺品(アーティファクト)』だった場合、まやかしに気づかれる可能性もある。

「俺は、小さな旅芸人の一座に――」

(どこから話し始めてるんだ)

 そうこう考えている内に、話は盗賊の生い立ちから始まった。この話は、多分長くなる――僕の直感は、たぶん外れないと思う。

「ある時、おふくろが――」

 幻影に引きつった笑みを押し隠す僕の前で、盗賊は尚も語り続けていた。



想定外の強敵が出現か?

しかも、話が長そうだ。

時間との戦いの最中だというのに、盗賊の話はいつまで続くのか?

そして、『冥王』はどう出る?


盗賊の話とは別枠で、続きます。


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