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第三十七話「パルメイオ砦の戦い(前編)」


「こっちは晴れてるんだよなぁ」

 木々も道も何もかもをオレンジ色に染める景色の中に僕は居た。

(決行は日没後かな)

 これから砦攻め、となる訳だが僕の策はアンデッドを使うものになることが多い為、日が沈んでからの方が何かと都合が良いのだ。

(ここなら見つからないと思うけど)

 草のにおいに包まれ、潜みながら眺める砦の城壁もやっぱりオレンジ色で、空を仰げば東の空は星々に領域を譲り渡し始めている。

(思えば昔は夜が怖かったっけ)

 うっかり怪談やホラーものを見たり聞いたりしてしまった日の夜は、闇が怖くてトイレに行くのも我慢しようかと葛藤するほどだった。

(そんな僕がネクロマンサーとか、本当に嘘みたいだよなぁ)

 ぶっちゃけると、今でも怪談は怖い。幽霊には随分慣れたが、これは授かった力で対処出来るからだと思う。

「力、か」

 この反則じみた力無しで異世界に投げ出され遭遇していたなら、多分僕は一目散に逃げ出していただろう。

「そして、今回の立役者はその幽霊達なのです」

 僕がこの砦を選んだ理由の一つは、転送される前に見た地図で、この砦の部分に剣を交えたマークがあったから。

「ここ、古戦場でもあるんだよね」

 どうやら現存するこの砦を巡っての防衛戦だったようなのだが、地図に記されていただけあってあまり昔のことではなかったらしい。

「さてと、何人ぐらい協力してくれるかな?」

 必要戦力は現地調達。無茶苦茶だが、僕にはそれが出来る。

「一緒に戦乙女候補をと言うのは虫が良すぎるよなぁ」

 そもそもこの世界の騎士は、男女比で言うなら男性騎士が圧倒的に多い。女性は王族などの高貴な身分の女性の護衛や、女子しか産まれなかった騎士が家を継がせる為に娘を女騎士にすると言う場合に限られているのだとか。フィーナが騎士になれなかった理由の何割かは、多分性別が問題になったのだろう。

(僕が有力者なら騎士に任じてたと思うけどね)

 フィーナの剣の腕はかなりのモノだったのだから。彼女が命を落とした防衛戦でも何人もの敵を返り討ちにしての戦死だと聞いている。

(ま、それはそれ。今はやることやらないと)

 霊達との交渉。

「王家の為、主君の為なれば依存はあるまい?」

「むろんのこと」

 幸いにも砦周辺を彷徨う魂の半数はリアスの先祖(とは言っても一世代か二世代前)に仕えていた騎士や兵士のようで、リアスに力を貸していると説明すると快く応じてくれる者も多かった。

(何とか必要な人数は集まりそうかな)

 そして協力者になってくれた霊達には作戦を説明し、時を待つ。

(伝令を出されても、辺りが完全に暗くなってしまえば――)

 対処はおそらく可能。闇は今の僕と協力者達にとっては味方となる。協力者を道沿いに配置しておけば補足出来るだろう。

「さて、始めるとしよう」

 やがて期は満ちて、僕は幻影を纏って自身を不可視にすると砦の入り口へと歩き出す。入り口には門兵が見えたが知覚出来なければ問題ない、まして。

「う、ぐぁ?」

「おい……どうし、がっ?!」

 知覚出来たとしても僕の協力者達には刃が効かず、姿も見えない。自分を囮にして襲わせることも出来るのだ。

「掌握、できたか?」

「はっ、この者の名はロイド――金に汚く、買収されて内通したと言うことで通用するでしょう」

「同じく。この者、タージェも素行は良くない模様。これならば『冥王』殿の策通りにことは運べるだろう」

「重畳」

 僕がこの時協力者達に行わせたのは、憑依。つまり、門兵達の身体を乗っ取らせたのだ。ダメもとで記憶を探ることが出来れば策に使えるか確認したいとも言っておいたの


だが、そちらも上手くいったらしい。

「ならば、後は同じ手順で行え。やむを得ず僭王(せんおう)につかざるをえなかった者は助けよ」

 砦の兵達の忠誠がどちらの方向に向いているかも、この幽霊達に確認して貰えば事足りる。

「「応っ!」」

(表向きは、多重内通者)

 僕の号令に答えて散って行く霊達は砦内の兵達に取り付いて同時多発的に返り忠を行う。

「ど、どうしたことだ? お前達、何が……」

「ぐわっ、やめ――俺は味か」

「信じられるか、あいつも裏切ったのだぞ?!」

 砦の中を歩めば、周囲は既に大混乱に陥っていた。

「とりあえず、一カ所目」

 と言いたいところだが、まだこの砦でやることが僕には残っている。

「……様、……様っ、一大事にございます!」

(責任者はあっちかな)

 変事を告げる為叫ぶ者の声を頼りに僕は歩き始めた。


と言う訳で一砦目。

次でたぶん陥落となります。

物理攻撃の聞かない霊体が相手な時点で敵から見ると詰みですよね。


続きます。

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