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第三十四話「誕生するもの後編」


「おはよう、パパ♪」

 何だかいきなりとんでもないことを言われた。目覚めた僕に声をかけてきた相手の顔は覚えている。女神の力を借りて蘇生させ、僕の魂のコピーを宿した少女だ。

「え、何でパパ? 君は僕のコピーの筈」

 この時僕はまだ思考力が鈍っていて、コピーの悪戯ではないかと疑うことさえ思いつかなかったのだけれど。

「ごめんね、冥王くん……実は、さっきので、私の魂、少し混じっちゃったみたい……」

 あっけにとられた僕へ凄く申し訳なさそうに闇の神から告げられたのは、想定外の事実。

「混ざって……変質しちゃった魂は、まったく別の……あ、新しい……その冥王くんと私の子供のようなものに……」

(なんですと?)

 多分、聞き返さなかったら僕は叫んでいたんじゃないだろうか。

本命(フィーナ)が居るのにも関わらず、他の女性と子供を設けてしまった(しかも相手は女神)」

 とか、想定外というレベルでは済まない。と言うか、どうしろと?

「……ごめんね、本当にごめんね」

「あ、いや、何て言うか、その……」

 ひたすら謝られて僕は自分の心が相手に筒抜けであったことに気づくが、はっきり言って遅かった。

「いえ、むしろこちらが申し訳ないです。危ないところを助けて頂いていたのに何てお礼を言ったらいいか」

「え、でも……何の断りもなしにこんなことになっちゃったんだよ? 嫌じゃ……」

「いいえ、そんなことないです、そんなことないですから――」

 謝罪合戦はその後数分続き。

「では、これで。失礼しますね」

 何とかなだめてオラクルを解除すれば、いつの間にかぼくとあのひとのこどもが僕の顔を覗き込んでいて。

「よろしくね、パパ?」

「よ、よろしく……」

 途方に暮れつつ引きつった顔をした僕の口は、気づけばかすれた声で返事をしていた。

(フィーナに何て言おう……)

 崩れ落ちるようにへたり込んで頭を抱えてみたけれど、事態が良い方向へ転がってくれるような気は欠片もしなかった。

「戦乙女様、意識が戻ったと聞い――」

 まあ、一番会い辛い相手(フィーナ)が直後に飛び込んでくることも予想していなかったのだけれど。

「「え?」」

 冷静に考えてみれば、僕にあれだけしたってくれるフィーナなのだ。僕が無茶をして倒れ、ようやく意識が戻ったとなれば突撃する勢いで部屋に入ってきてもおかしくはない。

 そして、事情を知るのはあの女神(ひと)と生まれたての娘だけ。娘はずっと一緒にいて今は僕を背中から抱きついているところなのだから、女神が気を利かせて事情説明してくれたのだと思う。

(そっか。いや、待てよ――)

 それ程長い付き合いという訳ではないが、闇の神は内気で人と話すのは苦手そうな女神(ひと)だった。僕のこととなると時々暴走するこのフィーナに何処まで事情を話したのだろう。

(まさか、この娘のことは……)

「パパぁ、その女の人誰?」

 娘の発言タイミングは、最悪だったと思う。事情の説明がハンパだったのなら。

「ぱ……ぱ?」

(うわぁ)

 一瞬で固まったフィーナの反応は僕に『説明がハンパなものであった』ことを全力で語っていた。

(拙い、拙い、拙ッ)

「そう、パパだよ。ボクはねぇ、パパの娘なの」

 ベッドの上で思わず後ずさりかけた僕の背中で娘は空気も読まず上機嫌にはしゃいでいて。

「ひっ」

「いくさおとめさま……せつめいはしてもらえますよね?」

 足を掴まれて思わず悲鳴を上げてしまった僕を見て、硬直から復活を果たしたフィーナは微笑む。

(助けて、誰か助けてぇぇぇぇ!)

 声に出してわめかなかったので、僕のはった見栄は台無しになっていないと思いたい。ともあれ、こうして僕のピンチはまだ続くのだった。フィーナに事情説明するという戦いが終わるまでは。



うっかり子持ちになってしまった主人公。

ピンチはきっとまだ終わらない?

果たして主人公はピンチを脱せるのか。

続きます。

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