罠〜朱希side〜
うわーん!!!
見ちゃった見ちゃった見ちゃったよー!!!!!!!!!
佳那汰と女の子がキスしてるとこ見ちゃうなんてー!
あれ?
ちょっと待てよ?
私は走っている足を止めた
別に佳那汰が誰とキスしようなんて私に関係なくない?
なのになんでこんなにも胸が苦しいんだろう…?
2人がキスしているところを見て…私…
「七宮さん?」
ビクッ!!
「あっ…」
さっき佳那汰と一緒にきききき…キスしてた人…
「杉本さん…」
「やだなー、梨恵でいいよー」
「あ…、あの、なに…か?」
「さっき、私と佳那汰くんとキスしてるとこ見たよね?」
「はい…」
何が言いたいんだろう…
「なんで邪魔すんのよ!?」
梨恵ちゃんはいきなり怖い顔になって私に掴みかかってきた
「キャッ!!」
「もう少しで佳那汰を落とせそうだったのに!!あんたのせいで!!あんたのせいでーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「や…めて……!!」
「私がこれまでどれだけ努力してきたと思ってるわけ!?佳那汰に好かれようと毎日毎日毎日毎日毎日!!それを呆気なく壊されて…、ちくしょー!!ちくしょー!!!!!!!!!!!」
「うっ……、苦しっ!」
これは誰?
梨恵ちゃんはクラスのリーダー的存在で人気者で男女問わずみんなから好かれている。
弱味なんてなくて…
ちがう
弱味なんてみんなある!!
今の梨恵ちゃんみたいな
梨恵ちゃんは今の今までずっと佳那汰に好かれようと努力して
今日やっと告白というものをして…
なのに…
私がそれを壊したんだ
「私が…」
「あんたなんか…!!!あんたなんか…!!!消え…」
「……っ」
「……なーんてね」
「…へっ?」
そう言って私の首を締めていた手は解放された
「私…、ホントに佳那汰が大好きなの…。こんなに人を好きになれたの初めてよ…。」
「……さっき、キスしてたじゃない。付き合ってるんでしょ?」
「ううん…。さっきのは無理にしただけ…、あはは、最低だよね?」
「……っ!!」
私はかける言葉がなかった
とても、梨恵ちゃんは悲しい笑顔で笑っていた
無理に笑っているようには見えない
けど、心は泣いている
そう思った
「……、中学でね?私と佳那汰は同じ中学だったの……。」
───────……
「ねぇ、あんた二年四組の杉本梨恵?」
「はい…。そうですけど」
「へー?噂通り可愛いね♪俺等と遊ばない♪」
「えっ…!ちょっ…!!!」
ヤバい…!!!
手首を捕まれて動けない…!!
「へー?そんな声も出すんだ♪ますます襲いたくなってきた…」
「い、いやぁ!!!!!!!」
ガンッ!!
その時、何かを蹴り飛ばしたような音がした
「ねぇ?やめたら?その子嫌がってんだろ」
「はぁ?誰だてめぇ!?」
「俺?俺は三上佳那汰だけど?」
「えっ…!?三上って…あの!?し、失礼しました!!」
そう言ってそいつらはどこかへ逃げてしまった
「大丈夫か?」
そう言って彼は私の乱れた制服を直してくれた
「よしっ、じゃあ、気を付けろよ!あんた顔可愛いから、狙われやすいよ?」
そう言って彼は優しく微笑んだ
「あ、あの!!わたし!杉本梨恵って言います!!よかったら今度お礼させてください!!」
「お礼か…、じゃあ今週の日曜日、駅前に来て」
「へっ?」
「デートしてよ。」
「えっ!?いいんですか!?」
「あぁ、またな。梨恵」
それから私達は仲がよくなった
次第にだんだん惹かれていって…
でも三年でクラスが離れてから突然全く会わなくなった
しゃべりもしない
目も合わせない
私だけ…
私だけ…
佳那汰は私で遊んでいたんだ
──────………
「私にとってすごく夢のようだった…。一目惚れだった。とても幸せだったんだ…」
「……」
「やーめた!!もう佳那汰なんか知るかー!!他にいい男見つけるもんね♪」
「……っ」
なんか私…
今ホッとしてしまった
佳那汰を諦めるって聞いて…
「あなたもさ、自分の気持ちに気づいたら?」
「え?」
「ふふっ♪じゃあね、あなたは佳那汰が好きなのよ?こんな短期間の間に…ね」
「うっ…、やっぱり」
薄々気づいていた
けどやっぱりこんな短期間で…
「一目惚れは悪いことなんかじゃないよ」
「……」
「一目惚れってさ、彼の顔しか見てない、って思われがちなんだよねー。けどさ、また彼の顔が見たい。って思って、近づいて、しゃべって、仲良くなって?そうやってどんどん彼を知ってけるから!それならちゃんと性格も好きになってるから」
「私、佳那汰が好きです」
「うん、頑張って!!」
「ありがとう!じゃあまた明日!!」
私はそのまま家に走って帰った
「クスッ…、いいざま。まんまとはまってくれちゃって。本当、馬鹿で助かるわ…。あはは…、あーははははは!!あーはっはっはっはっ!!」
それが彼女の罠だと知らず