最終話 エピローグ
「ぐふふふふ……。ベルタちゃんとシャルル君はかわいいねえ……。自分の娘と息子も愛おしいが、姪っ子と甥っ子も格別だ……」
「ガードナーお兄様……。その品のない笑い方はいい加減に改善なさいませんか……?」
右手にベルタ、左手にシャルルを抱えて、ガードナーは微笑む。
遠目から見ていれば、微笑ましくも麗しい様子なのだが。
ガードナーの品のない笑い声を聞いてしまえば。
変質者が幼児を抱えているようにしか思えない。
ヴィルジニーはベルタとシャルルをガードナーの腕から、取り返した。
苦労して産んだ子に、悪影響が出ては困るのだ。
「ベルタ、シャルル。ルシフェル様と一緒に甘いものでも食べていらっしゃい」
「あい! お母様!」
ベルタが右手をしゅたっ! と挙げて、答えた。
「行こう、ベルタ。お父様のところまでかけっこ競争だよ」
少し離れたガゼボで、座っているルシフェルを、シャルルは指さした。
「あい! シャルルおにーたま!」
駆けだしたベルタとシャルルを微笑ましく見て。
それからヴィルジニーはガードナーに真顔を向けた。
「それで? ガードナーお兄様? わたくしにご用事とは?」
「あ、うん。レオンとポーレットの末路なんだけど。この間王太子殿下……じゃないや、即位したから新王から手紙が来たよ。読む?」
ガードナーはひらひらと手紙を振った。
ヴィルジニーは迷わず答えた。
「いいえ。興味はございません。わたくし、愛する夫と二人のかわいい子どもに囲まれて、毎日しあわせですから」
「あはは。イマサラ汚物の末路なんて、聞くだけ耳汚しだもんねー」
ヴィルジニーは、そうやって普通に笑って下さいませ……と言おうとして、やめた。
「今のしあわせは……お兄様のおかげですわね」
下手をしたら、平民上がりの娘と真実の愛だのなんだの言い出した第二王子に、虐げられる人生もあったのかもしれないのだ。
それを思えば、今のしあわせが尊いものであると心底思う。
好きな相手と婚姻をし、愛しい子を産んで、そして、今、家族で笑いあっている。
「ヴィルジニーがしあわせなら。兄もしあわせなんだよ。私の頭脳は家族のしあわせのためだけに、今後も使うからね!」
「そう願いたいですわ……」
ルシフェルとベルタとシャルルが、ガゼボから手を振ってきた。
「おかーたまー、おじたまー! 一緒にお茶をのみましょー」
「よし来たベルたん! おじ様が今行くよー」
全力で駆けだしたガードナー。
その後を、微笑みながら、ゆっくりとヴィルジニーも歩いて行った。
終わり