第4話 反論
「そうか。では、隣室で待機している令嬢がいる。その顔を確かめてきてくれ」
かしこまりましたと、店主が急ぎ隣室へと向かう。
程なくして「確かに隣室の方が、店に現れた令嬢だ」と、店主の声が届けられた。
「レオンよ、何か申し開きはあるか?」
黙って、拳を握り締めていたレオン。
「……私は、ヴィルジニーを愛してはおりません。ポーレットを愛しております」
公費の私的流用。
証拠を突きつけられれば、もはや反論はできない。
だが、せめて、ヴィルジニーを傷つけてやろう。そう思い、お前など愛していないと告げた。
レオンの精いっぱいの反論に対し、王は呆れ、ヴィルジニーは笑った。
「わたくしを愛していないから、わたくしに公費を使わない……のであれば、よろしいでしょう。ですが、愛していないという理由で、公金を別の者に流用するのは横領と言いませんか? それとも着服なのかしら?」
ヴィルジニーは首を横に傾けた。
「法律の区分はわたくしには難しゅうございますわね」
不勉強でもうしわけございません……と、ヴィルジニーは頭を下げた。
だが、問われるべきはそこではない。
「どちらにせよ、レオンは公金を私的流用した。その罪は贖って貰わねばならない」
国王の断言に、レオンは大声を出した。
「ヴィルジニーとの婚約を破棄し、ポーレットを私の婚約者とすれば問題はないではないですか!」
余りの厚顔な発言に、王も、王妃も顔を顰める。王太子は額に手を当てた。
「そもそもヴィルジニーが私の婚約者であることがおかしいのです! 私の妻には愛らしくも癒されるポーレットが望ましい!」
レオンの勝手な言い分に、『賛同』の声を上げる者がいた。
ヴィルジニーの父、マドゥアス侯爵だ。
「そうですな! ぜひとも我が娘と第二王子殿下の婚約を白紙に戻していただきたい! 我が娘ヴィルジニーは元々隣国の侯爵令息と婚約を結ぶ予定でいた。その婚約申請を不許可とし、レオン第二王子殿下と婚約を結べと命じられたのは陛下でした」
ヴィルジニーも父に続き発言をした。
「我が国と隣国との関係を強化するため、和平関係を継続するため。わたくしは隣国の侯爵令息であるルシフェル様と誼を結んでまいりました。そのまま婚約が出来れば……と思っていたのですが。何故か、レオン殿下の婚約者になれとの陛下からのご命令が下り、ルシフェル様との婚約はなくなりました」
非常に残念でしたわ……。と、ヴィルジニーは溜息をこぼす。
「けれど、王命は王命。わたくしはレオン殿下の婚約者として精一杯励んだつもりでした。マナー、歴史、語学。淑女としての教育には家庭教師の皆様から及第点以上をいただいておりました。が、レオン殿下はわたくしの努力よりも、友人たちとの遊戯、かわいらしいご令嬢の癒される笑顔。そちらに重きを置いたようですね」
「う、うるさい! 賢しらな女より、癒しとなる娘に心惹かれるのは当然だ!」
「つまり、わたくしでは不足だと」
「当たり前だろう!」
ヴィルジニーはくすりと笑った。
「王家の一員となるための教養を身に付けるより、癒しの笑顔が重要ですのね」
「そうだ! 文句はあるか!」
「いいえ? わたくしには文句はございません。ですが……」
王や宰相たちに、ヴィルジニーは視線を流した。




