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偶然の再開と無骨な鍛冶師

ジョージは受付をあとにし、再び街の通路へと歩み出た。

時刻はまだ午前十時前──試験までは十分に時間がある。

(装備はあるが、今の盾は初期装備の簡易品……試験用及びそれ以上を見据えて新調したほうがいい)

あの不可思議な神から与えられたスキルとインベントリ、そして自分の格闘技スキル。

そのいずれもが、この世界では大きなアドバンテージとなる。

──だがそれだけでこの世界の脅威に通用するだろうか。

準備の質にもこだわって万全な状態を維持する必要がある。

(この世界で俺が活かせる手段は、まだいくつもある。

その中でも、この時代で誰も扱おうとしないあの金属──ブラックメタルは、俺の戦術に深みを与え、切り札になるかもしれん)

家族を見つけ、守るためにも──今のうちに優位性を活かせる装備を用意しておく必要がある

街の中心区へと歩き出したジョージは、

アライアンス本部を出たところで、ふと見覚えのある男とすれ違った。

「あれ?お前、ジョージじゃないか?こんなところで何してるんだ?」

声をかけてきたのは、先日取り調べを担当した警官だった。

短髪で精悍な顔つき。

「あの時の.....ちょうど今、入隊の手続きが終わったところだ」

警官は目を見開き、続いて嬉しそうに笑った。

「そうか!それならもうすぐ同僚だな。俺の名前はマーティン・クルーズ。これからよろしく頼む。

何か困ったことがあれば、遠慮なく相談しろよ。こっちは期待の新入りが来たって感じだ」

「頼りにさせてもらうよ。……実は今、ブラックメタルを素材に盾を作ろうとしてる」

「おいおい……まさか、お前……あのとき取り調べで見せてきた、例のあれか?」

「そうだ。あの素材を実際に使って、盾を鍛えてもらおうと思ってる」

マーティンは目を丸くし、数歩下がるようにして驚いた。

「お前……それ、冗談じゃないよな?

あの金属を“使う”なんて発想、今の世の中じゃ誰も考えもしないぞ。ましてや盾だと。

というか……そもそもブラックメタルを“携帯してる”時点で規格外だ」

「収納機能ってやつさ。ルミエル人が使う魔法と同じようなもんだと理解してくれ」

マーティンは数秒間沈黙した後、やがて低く笑いながら肩をすくめた。

「……やっぱり、ただ者じゃなかったか。

取り調べの時点で“何かある”とは思ってたが、まさかこれほどとはな。すげぇ新人が来たもんだ」

「で、鍛冶屋なんだが、あてはあるか?」

「今のご時世、盾なんて実用性のないものを作る場所なんてほとんどないが一人だけ知ってる。街の片隅にいる、変わり者の職人だ。古代武器専門でな、“鑑賞用なら作らん”って客を追い返す変な頑固爺さんだが──実用品にこだわるあんたなら、相性いいかもしれないな」

そのまま案内されたのは、街の片隅にある古びた建物だった。

外装はすでに退色し、看板に”T-Forge”と書かれていた。

だが、ドアを開けた瞬間に、熱気と金属の匂いが鼻を突いた。

マーティンに用事があると伝えられて別れてから店の中に入る。

中に入ると、巨大な作業台と数多の金属片、そして背中を向けた小柄な白髪の老人がいた。

ボルツ人のようだ。

太い腕と、黙々と槌を振るう姿は、まさに“鍛冶師”そのものだった。

「……なんの用だ」

振り返ったその眼光は鋭く、ジョージを一瞬で見抜くような視線だった。

「盾を作ってもらいたい。戦闘用に、実用品としてだ」

「ほう、盾とは珍しいな。今どきそんな注文をする奴は少ない。……仕上がりはどうする?」

「見た目はどうでもいい。重要なのは耐久性だ。ブラックメタルを使ってほしい」

老人の目がすっと細くなる。

「ブラックメタル?なんでまたそんなクソ重くて扱いにくい代物を……やはり観賞用か?」

「違う。俺はアライアンスの入隊志願者だ。仲間を守るため、家族を守るために、盾が必要なんだ」

「……言葉じゃ信じられんな。そんなに守りたいなら、今盾を使ってるのか?」

「持っている」

ジョージはプリセットスキルで盾を召喚した。

その動作と装備の出現に、老人の眼が鋭く光る。

「……なんだその……まるで空間から装備を……?おい、それ……どういう仕組みだ?」

「ルミエル人の魔法と似たようなもんさ。俺自身も詳しくは分からんが、補助的に使ってる」

「……ふざけるな……」

老人は一歩、近づいてきた。

「そんな次元跳躍のような転送を現実で可能にする技術が存在するはずがない。

俺はかつて、連邦軍にいた。補給、展開、運搬──そのどれにも常に限界があった。

だが……それを一瞬で覆すなど……」

ジョージは静かに、ストレージからブラックメタルの塊を取り出した。

漆黒に青い雷紋が走る、異様な質感と重量感。

置かれた作業台が、わずかに軋んだ。

老人の目が見開かれる。

「本物……それも、この密度……」

しばらくその場で黙り、老人は深く息を吐いた。

「名を名乗れ」

「瀬戸ジョージ」

「……テディ―・スミスだ。元は連邦軍の装備開発に関わってた。今はただの鍛冶屋よ」

「頼む。その盾、明日の試験で使いたい。間に合うか?」

「いつまでなら受け取り可能なんだ?」

「夜ならなんとかなる」

テディ―はふっと鼻を鳴らすと、作業台の上にあったスレッジハンマーを置いた。

「ちょうど今、急ぎの依頼は入ってない。

……今晩閉店前にでも取りに来い。お前の望む盾、仕上げておいてやる」

ジョージはほっと安堵の息をついた。

「ありがとう、助かる。それと──」

「まだ何かあるのか?」

「もし可能なら、俺の戦闘スタイルに合ったガントレットも見繕ってくれないか?

格闘技術を使う関係で、素手の打撃力を少しでも底上げしたい。

ただ、盾を握るのに支障がない設計で頼む」

テディ―はジョージをじっと見つめ、やがて口元に小さな笑みを浮かべた。

「おもしれぇ。あんた、本気で戦いに来てるんだな。

いいだろう。ガントレットも一緒に仕上げておいてやる」

二人は、無骨だが強い意志を込めて、固く手を握り合った

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