第9話:「黒乃 冥 vs 獅堂 迅牙」
激しい雷鳴がフィールド全体を揺らしていた。
《雷鳴領域・中央制圧拠点》
そこに、2つの“異質”が並び立つ。
一方は、
雷を纏い、空気を威圧で裂く野獣――獅堂 迅牙
そしてもう一方は、
沈黙の中に刀を下げ、ただ一点だけを見つめる少年――黒乃 冥
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阿久津 雷土が血を吐きながら地に伏している。
彼を倒したのは、黒乃 冥のたった一閃。
その横に立つ迅牙は、楽しそうに笑っていた。
「なあ、冥。お前さ、もっと“上”を知りてえって思わねぇか?」
冥は、何も答えない。
「お前のその斬撃、ヤバいわ。心底シビれた。だけどな――」
ズドォォン!!
彼が足を踏み出した瞬間、空気が爆ぜた。
「俺の“雷獣流”は、敵を見たら止まんねぇんだよ!!」
光速の雷閃。
一瞬で距離を詰め、鉄剣が唸りを上げる。
だが――冥は斬る。
「見える」
刀と剣が交差する。
音が、遅れて届いた。
ギィィィンン!!!!
鋼と鋼が、異能を纏って激突する。
冥の戦いは“計算と予測”。
獅堂の戦いは“本能と圧力”。
一太刀、一振りが、都市の空気を変えていく。
冥は、迅牙の雷撃の軌道そのものを“事前に見る”能力に近い精度で読み切っていた。
しかし――
「見えてるだけじゃ避けられねえんだよ、ボウズ!!」
迅牙の鉄剣が地面をえぐり、雷の波動が放たれる。
バァァン!!
冥は吹き飛ばされ、壁に激突する。
「……っ、ハッ」
しかし、すぐに体勢を立て直し、刀を構え直す。
血が頬を伝っていたが、その眼差しは濁っていなかった。
「なあ冥。なんでそこまで、登りたいんだ?」
戦いの中、迅牙が問う。
「頂点なんてさ、退屈の塊だぞ。下が上を見て、届かねぇって思ってるほうが、よっぽど幸せだ」
冥の答えは、簡潔だった。
「だから斬るんだ。“全部”」
その言葉に、迅牙の表情が一瞬だけ変わった。
「……いいねぇ」
「……“想定内”の中に生きてんなよ」
冥がゆっくりと刀を掲げる。
「解放形態《虚刀・断空》──」
刀が、空気を切り裂く。
斬撃が、風圧ではなく空間そのものを切り開いた。
瞬間、重力のような力場が迅牙を引き込む。
「っ、この異能は……!」
「これは、“俺にしか通じない空間”だ。お前の雷速でも、ここじゃ半分以下になる」
「……ッハ! そんな限定空間、力で抜けるわ!」
迅牙が剣を振るい、空間を破壊しようとする――が、
冥の一撃が先に、肩口を斬り裂いた。
血が飛ぶ。
観客席が、静まり返る。
「な、なんという戦い……!! 黒乃 冥、あの迅牙に一太刀入れた……!!」
「これが、最下位校の生徒か!? アークライズの“ルール”が、いま揺らいでいる……!」
⸻
迅牙は、斬られた肩を見下ろし、笑った。
「最高だぜ、お前。次で“決めていい”って気分になった」
冥も、口元にかすかに笑みを浮かべる。
「こっちも、そう思ってたところだ」




