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賢 1歳

私の誕生日から3週間後、今度は賢の満1歳の誕生日がやってくる。この時もみんなでお祝いをすることになって、集まったのであるが、やはり1歳になっても歩き出すのが遅かったり、なかなか意味のある言葉を発したりしないなどの発達面でも遅れが少しずつ顕在化してきた。そこで私の両親はもっと話しかけてやれとか、こういったことをした方がいいとか孫の可愛さもあって、いろいろとアドバイスをしていて、この時も私の母が

「賢ちゃん、言葉がだいしょう出るようになったかね?」

 と聞いたのであるが、さと子は

「よけいなお世話でしょ?みんなはこんな発達の遅れた賢よりも、言葉がきちんと話せる和君の方がかわいいんでしょ?ほっといてください」

「あ、そう、そんなこと言うんだったらなんで今日来たのよ。そんなに私らのことが気に食わないんじゃったら、こんかったらええでしょうが」

 そう言って、せっかくの賢の誕生日会は険悪な中で行われることになり、私もいづらくなってしまって、ケーキを食べたらそそくさと家を後にしてアパートへ帰った。私もせっかくの賢の1歳の誕生日というめでたい日を台無しにされた思いで、腹立たしい感情を抱いていたので、さと子とは一切口も効かずに、賢をふろに入れてねかしつけて、私も布団に入って寝た。

 翌日私が仕事から帰ってくると、さと子がまた長電話をしていた。私が仕事から帰ってきても、食事の用意をするわけでもなく、賢が泣いていても、おむつが汚れていてもほったらかし。前にも同じことがあったので、私は電話線を引き抜き、通話ができないようにして

「おまえさ、何やっちょん?いまさぁ,賢が泣いてるのわからんか?一体俺がおらん間、本当に何やってんの?」

「何?また私をそうやって疑うわけ?」

「だってさぁ、前にも長電話して子供のことほったらかしにして、思いっきりどやされたことがあったじゃろうが、まだわかってねぇのかよ?」

「たまには私だって友達と話したいことだってあるわよ。それもいけんていうの?」

「はぁ?たまには?何とぼけてんの?俺が全く何も知らないって思ってんのか?この前からずっと長電話してんじゃねぇかよ。そんな暇があるんじゃったら、賢にもっと話しかけてやれや」

「賢に話しかけたって、何も返ってこんじゃん。それに私ばかりが何で責められんといけんのんよ。ほかにも同じことやっている人っておるじゃん」

「あのなぁ、ほかのところは、みんなやらんといけんことをみんな先に済ませてからやってんだよ。お前はやらんといけんことを済ませんと、下らんことばっかり先にやっているから怒鳴られんじゃろうが。いわれたくなかったら、何を先にやらんといけんのか、よう考えてからやれや。話しかけてやらんかったら、余計に言葉の発達が遅れるじゃろうが」

 そうさと子に言いながら、私は賢をふろに入れる用意をすませて、食事の前に、一日働いて汗まみれになったシャツを脱いで二人でふろに入った。


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