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あとの祭り  作者: yukko
悠生の場合
22/122

夏の日の想い出

新緑が目に鮮やかな風薫る季節になった。

双子を出産した妻と入れ替わりに育児休暇を取得して双子の育児にてんやわんやの毎日を送っている。

今日も双子を連れて公園に行く。

公園に着くと二人に遊び着を着させる。

妻の母が作ってくれた遊び着。

ロンパースを見て着脱が簡単な遊び着を作ってくれた。

服の上に着させて、遊び終わったら脱がせる。

双子だからベビーカーに一人を残して、一人ずつ遊び着を着させる。

結構、双子の大変さを感じている。

⦅身が持つのかな?⦆と思う日々を悠生(はるき)は過ごしている。

砂場で大人しく二人とも遊んでいる。

穏やかな春の日差しの中、元気で遊んでいる双子を見ていると悠生は幸せを感じている。

妻の両親、特に母親の助けが無ければ双子の育児は難しい。

妻の職場復帰が可能だったのは、妻の母親のお陰である。

今のこの大変な日々の中で悠生は幸せを噛み締めている。



思い返せば……あの日から始まったのだ。

あれは………あれは、悠生がまだ小学3年生の夏休みのことだった。

その日の朝は、いつも起こしてくれていた母の声が、悠生を起こす母の声が聞こえなかった。

目が覚めて少しした時だった。

妹の声が聞こえて来た。


「ママぁ~~、ママ、どこぉ~?

 ママぁ~~っ! ママぁ~~っ!

 ママ、ママぁ~~。」


寝ぼけ眼で悠生は妹の声がする方へ行った。


「どうしたのぉ? 優菜。」

「ママが……ママが居ないの。」

「お庭は?」

「お庭……。」


母は庭にも家の中にも居なかった。

どうしたらいいのか分からなかった。


「お買い物かな?」

「お買い物ぉ? 優菜、行く。」

「優菜! 一人で言っちゃ駄目。」

「だってぇ……ママ、探すの。」

「一人でスーパーに行ったら駄目!ってママに言われてるでしょ。」

「ママ……うん。行っちゃ駄目!」

「だから、一人じゃ駄目! お兄ちゃんと行こう。」

「うん。早く行こ。」


今、思い出すと……悠生は⦅空き巣に入られなくて良かった。⦆と思う。

小学生だった悠生は、鍵を掛けずに家を出て母を探しに行ったのだ。

⦅今、思い出しただけで怖いことしたなぁ……。⦆と思い出している。



充分に公園で遊んで双子は充分に疲れたのだろう。

悠生も大変疲れて、⦅今から帰宅して双子をお昼寝させて……そして、その間に夕食の支度をしなくっちゃ……。⦆と考えながら、双子が着ている遊び着を脱がせてベビーカーに乗せた。

そして双子用のベビーカーを押して帰宅して、双子に水分を摂らせた。

それから、オムツを替えてベビーベッドに寝かせると双子はゆっくり夢の世界に入っていった。

二人とも寝たのを確認してから、悠生は夕食の支度をしながら洗濯物を取り込んだ。


夕食の支度を終えても、まだ双子は寝ている。

この間に取り込んだ洗濯物を畳んだ。

畳みながら悠生は幼い頃を思い出していた。

母が居なくなったあの日のこと、そして、それからのことを……。

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