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あとの祭り  作者: yukko
章一の場合
11/122

謝罪

章一から告げられた言葉は衝撃が大きく、両親はなかなか受け入れられなかった。

受け入れられない日々だったが、加奈子への謝罪に加奈子の実家を訪れることにしたのだった。

加奈子の実家に電話を架けたのは章一の父だった。


「章一がご迷惑をお掛け致しました。

 つきましては、親として謝罪をさせて頂きたく存じます。

 謝罪に伺うことは出来ますでしょうか?」

「どうぞ謝罪と仰らずに、孫の顔を見に来てやってください。

 お待ちしています。」


加奈子の父の言葉を受け、章一の両親が謝罪の訪問をしたのは土曜日だった。

加奈子の父の機転で、唯を加奈子の祖母が連れて出て行った。

祖母が言った先は洋菓子店だった。

唯は喜んで「お買い物に行ってくる。」と出掛けて行った。

祖母は歩くのが遅い。

適任である。

洋菓子店の場所も遠くない。

それも適している。


章一の両親は両手をついて、頭を深く下げ畳につけていた。

そして言ったのだ。


「私どもの息子が大切にお育てになったお嬢さんを深く傷つける結果になったこと

 心より謝罪申し上げます。

 知っていたら……結婚などさせなかった。

 戸籍に傷もつけてしまいました。

 本当に申し訳ございません。」

「どうか、頭をお上げください。」

「いいえ、上げられません。」

「誰かの罪だとしたら……それは皆かもしれませんね。

 離婚して直ぐに章一君も来てくれました。

 『離婚届』提出後直ぐでした。

 ご両親と同じように頭を畳につけて……申し訳ございません。

 そう言ってくれました。

 彼もまた苦しんでいたと思いました。

 色々、話しましたから……。

 もし、同性での結婚が許されている社会であったなら

 章一君は付き合っていた男性と結婚したかったと……

 そう言いました。

 別れを告げた時の苦しさ、加奈子と結婚すると決めた時の苦しさ。

 結婚を維持することの苦しさ……。

 誰も気が付かないくらい章一君は隠し続けるしかなかったんですね。

 いつか破綻は来たでしょうね。

 ………見守りませんか? 親として……。

 これからも見守り続けませんか?

 私も学びました。親は見守るしか出来ないということを……。

 もし、加奈子が女性しか愛せなかったら、私たち夫婦も加奈子に…

 加奈子に望まぬ結婚を強いていたかもしれません。

 章一君の謝る姿を見て、私はそう思ったのです。

 章一君を見守ってあげてください。

 そして、時々、孫に会いに来てやってください。

 唯は喜びます。」

「………ありがとうございます。

 私どもはショックで……直ぐに謝罪にも訪れられなくて…

 加奈子さんになんとお詫びしたらいいのか……。」

「お義父さん、お義母さん、頭をあげて下さい。

 私は大丈夫ですから……。

 章一さんは唯のことを心から愛してくれています。

 唯にとって大切なパパなんです。

 だから……パパとママとしては変わらないです。」

「ありがとう。加奈子さん。」

「加奈子さん、本当にごめんなさい。ごめんなさい。」

「お義母さん……。」

「唯が帰ってくるまでに涙を拭いて下さいね。

 あの子は知らないのですから……。」

「はい。……会ってもいいのかい? 加奈子さん。」

「唯の祖父母ですから、お義父さんとお義母さんは……。」

「ありがとう。」

「ありがとう。加奈子さん。」


玄関から唯の可愛い明るい声が聞こえてくる頃には、章一の両親も、加奈子の両親も、そして加奈子も涙を拭き終わっていた。


空から雪が舞い降りて来た。

唯は雪を見て喜んでいる。

加奈子は「あの日が最後の家族として、妻として……最後のクリスマスだったわ。忘れられないクリスマス。あれから直ぐに離婚届を出して、その翌日に章ちゃんは謝罪に来てくれた。ご両親へのカミングアウトしたのね。辛かったでしょう……。頑張ったのね。章ちゃん。」と……章一に届かぬ想いを空に向けて呟いていた。

章一を愛した日々。

加奈子が……その日々を、時間を、忘れられる日は来るのだろうか。

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