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相島邸

和都歴1124年 12月1日 午前11時


11時になると、私は星乃リゾート・ホテルで当日予約を済ませた。予約の特典が付かないなど、色々言われたが、お金に問題はない。チェックインは夜中まで大丈夫らしい。彼と初めてホテルに泊まったのも、丁度今頃、クリスマス前だ。珍しく彼が夜も一緒に過ごしたいと積極的に誘ってきたことを覚えている。女性にそこまで慣れていない彼は、私と夜を共にして、初めて一緒に居たい女性に会えたと言っていた。

彼に伝えはしなかったが、私も彼と重なることで、確かに今までにないものは感じた。性格上、私は強がってみせたからか、彼はそれからは男として、少し自信を無くしてしまったかもしれない。そんなつもりはなかったし、寧ろもっと誘ってほしかったのに。

手続きを待っていた時間に、ふと、また彼のことを考えていた。

牢屋があったこの地に、まるで鎖で繋がれているかのように、彼への想いは断ち切ることなど出来ない。


用事を済まして、車に向かう。次はもっと置田村の中心に向かってみよう。

昔の地名で言うと、本置田というのだろう。車をそちらへ走らせる。

❝まもなく、AMOR(アモール)

走り出して間もなく、複合商業施設への案内が出た。

お昼も近いし、ここで軽く済ませて午後に臨もう。

そう考えて、駐車場に車を入れる。

空いたスペースを探していると、思いもよらない場所に石碑を見つけた。

石碑は駐車場のど真ん中にあり、明らかに邪魔である。近くに車を停めて、急いで石碑に向かった。

こんなアモールの真ん中に一体何があったのか。それはすごく気になった。


石碑の隣に標識がある。

❝相島邸 跡地❞

相島?そういえば嘘か本当か、置田村の高官に、女を食い物にするのが趣味みたいなオヤジがいると文献で目にしたが、確か相島だったはず。

そんな男が高官として、やりたい放題出来たなんて、結局、どの時代に生まれたか…いや、時代が自分に合っているかで、人生はだいぶ変わるという事だろう。

この男は最期、死体からは毒が出たのだとか。その死体が本物であればだが、状況からみて服毒した説が濃厚だった。

私は石碑に近づき、この男の書置きを読んでみる。


>この屋敷で、これほどウマい酒も久々だ。後でまた拉致した少女を甚振って、更なる快楽を得よう。しかし、藤香もあれ程、強がっていたものの、やはり戦争となれば女に過ぎない。このまま押し切れば、青田組諸共、潰してやれる。そうすれば儂も八俣の副統括。下手すれば藤香の抜け番に乙名として入れるかもしれない。やはり、邪魔者は消すのが一番だ。

邪魔と言えば、樒。あの小娘、儂を誰だと思っているのか。ここの酒をいくら飲んでも、あの小娘への怒りは収まらん。いつか、必ず辱めを与えてから、たっぷりと甚振る。

そう思っていたが、よもやこんなに早く、機会が回ってくるとは。

綿貫の言う通り、❝戦時中❞だからこそ、行方不明なら誰も疑わぬ。計画を遂行するなら、今だろう。

樒、待っておれ。悲鳴をあげさせてやるわ。


やはり、この男は女を食い物にしていた男だろう。藤香と樒という2人の女性は無事だったのだろうか?

私もかつての男に脅され、無理矢理関係を迫られていた。彼にその秘密をばらされたくないのかと。どの時代にもいるのだろう。私はそんな男に付きまとわれていて、汚れたカラダと傷ついた心を、彼は気にしないで包み込んでくれた。早く忘れるべきだと。

幸せだった。

でも次に私が悩むのは、そんな彼が居ない事。どれだけ依存していたのだろう。居なくなって、初めて重みを分かった。大切な彼を、私は生涯、愛していくのだろうか。

石碑からの答えはまだあるはずだ。私は彼に、どう向き合うべきなのか。

それは他の石碑が、きっと答えてくれるだろう。

次回2025/1/1(水) 0:00~「置田邸」を配信予定です。

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