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メタボリックシンドローム

作者: さしさし

 男は毎日ラーメンを食べる。凍える冬の季節も、灼熱が身を焼き汗を捻出させる夏の季節も、ただひたすらに食べる。


 濁流如く流れる汗でシャツを変え、寒波による乾きにより指の皮膚に傷が生じた時も、それでも向かう足は「豚骨野郎」の看板を目指す。


 足繁くも通う彼に転機が訪れたのは、通い始めてから、過ぎ去る季節が2巡したあたりのことだ。


「ちょっと小顔になったねっ!」


 勤務先の同僚a子に言われたことである。男の脳裏は彼女にとってのそれはあくまで社交辞令であり、世間話の一環に過ぎない。と警鐘を鳴らすが、心当たりがない訳ではない。


 そう男は毎日の通いでの運動し、常用薬のごとくラーメンを食べる。前者はエネルギーを伴うことなので、当然だが、後者はエネルギーの摂取である。しかし、このラーメン。実は野菜がこんもりと乗せられ、それによって得られる健康も付随して余りあるわけだ。


━━そうして男は向かう足をさらに繁く。



  天命が如く、その時が訪れる。

  

 その日、男はいつものようラーメンを食した。舌を撫でる油の感触に野菜がスパイスとなり、いつも食べるが飽きがない。素晴らしい配合だった。と満足していると、1人の女性が話しかける。


 周囲には多くのカメラマンを拵えてる。その様はまるでオタサーの姫のようで、男は眉を顰めた。


 しかし、女性は行儀の良い口調で話しかけた。何やらここのラーメン屋が取材され、衆目の元に出るらしいではないか。


 男はこれが足繁く通う自分にとっての使命だと考え、懸命に言葉を考え、その熱意や習慣化されてる事を伝えた。


 アナは非常に喜び、後日の放送を楽しみにしてくれとのことだった。


 男は自らの讃辞を科学者の受賞式での言葉に思え、誇らしい気持ちになった。


 そうして迎えた当日、テレビに映るは自分の顔。素晴らしい! あの女性は約束を守り、放映にこぎつけたのだ。男は感動に打ち震えるだけだ。が


 その震えはすぐに恐怖へと姿を変えていた。


 会場に湧くは己を嘲る声声。流れる声の苦しみを掻き消すように風呂場へと向かう。


 入浴をし、心を整え、嫌なことなど流してしまおう。と男は考え服を脱ぎ捨てた。


 今にも飛び込んでしまうほどの勢いだったが、ふと自分の姿が気になり鏡を見る。


 光の反射によって左右非対称に写された、それにはニクニクマシマシアブラカタメの男がいた。



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