第三話「青年」
「…なんでこうなったんだよ。」
今、僕たちは牢獄の中にいる。
「…わかんない。はぁ。なんか身体検査みたいなのも受けさせられたし…。」
いぬいぬが疲れた様子で倒れ込む。
「んー、あいつら無事かな。」
こはくが小さな小窓の外をすっと見上げながら呟いた。
こうなる3時間ほど前のこと。
僕たちはみんととんを落ち着かせ、一度美愛の家へと帰った。
「とりあえず、言ってることは分かった。でも、それが聞き間違いの可能性もあるから、調査をしよう。」
いぬいぬがみんととんの頭をすっと撫で立ち上がる。
「そうだね、じゃー、はい。」
木つつきがすっとくじを差し出す。
「みんなでチーム分けしよう!」
そして街の聞き込みチーム
みんととん、木つつき、飛鳥、美愛
城周辺の聞き込みチーム
たっくん、こはく、いぬいぬ
ということになった。
「よし、じゃ、街は任せた!」
そして僕らは分かれて城周辺へと向かった。
「んー、でもここら辺あんまり人がいないね。」
こはくんが辺りを見渡す。
「確かに。ほぼ畑だもんなぁ。」
すると、ガサッと言う音が後ろでした。
「誰だ?!」
その茂みから一人の青年が出てきた。
「ん?誰だ?」
「あ、あ…ぼ、僕。あの城の、王子で、です。」
なんと、城の王子様だった。
「王子様?!?!」
三人は目を丸めて驚いた。
「…はい。ぼ、ぼく、強くないので城にはあまりいなくて、こ、この畑が好きで、よく来るんです。」
「…あのさ。」
僕らはみんととんの言ってたことについて聞いた。すると王子様は少し間を開けてから
「いや、聞き間違いだと思います。なぜなら、この街は厳重でたくさん検査を受けてから安全を手にした人のみ入れるからです。」
…嘘はついてなかった。
「そうなのか。じゃあ、やっぱ聞き間違いか。」
「ったく、あの慌てん坊め~。」
結局何も得られずに帰ろうとした。すると、ゴツい男が王子に近づいた。
「誰だ!!」
「おっと…、なんだ、貴様ら。」
「ま、待って!こ、この人はこの国の参謀さんなんだ!」
参謀。王様からの指示であれこれ軍を動かすことのできる人だ。
「…王子様、早く行きましょう。」
「あ、待って!一つ、聞きたいことがあります。」
こはくが参謀に話を切り出す。そう、みんととんの言ってたことだ。
話終えると参謀は高笑いをした。
「…ふっ、そんなこと、あるわけないでしょう。そして、こはくさんたちが知る必要はありません。」
そういってすっと立ち去ろうとした。
「…待った!!」
いぬいぬが大きな声で引き留めた。
「なぜ、こはくの名前を?」
「な、そ、そりゃ、農民の名簿くらい覚えているさ。」
「おかしいですね、僕らは今日来たんですよ?」
ぐっと追い詰めていく。
「ぐ、あ!お、王から聞いたんだ!ここに来た人をね…!」
そこで僕も前へと出る。
「おかしいですね、僕らは入り口は通ってませんよ?なのになぜ王から聞くことができたんでしょう?」
かなり追い詰めた、そろそろ白状してもらおうとしたが。逆に参謀はニヤリと笑いうつむいていた顔をあげた。
「はーっはは!!逆に貴様らは入り口を通ってない、検査を受けてない不法入国者だ!」
そう叫んで笛を鳴らす。すると多くの護衛隊が走ってきた。
「ひっとらえろ!!」
ということにより、、今に至る。
そして空の月が消えるように雲に隠れてしまった。まるで嵐の前を意味するかのように。