01.プロローグ
※この作品は作者が趣味で書いているものです。更新頻度は遅く不定期、文も拙いものです。ご了承下さい※
突然ではあるが、昔話をしようか。
その昔、その世界は「魔王」と呼ばれる存在に脅かされ、苦しんでいた。
そんな魔王を倒すべく、立ち上がったのは、「勇者」として選ばれた人間だった。
だが、その勇者はあっけなく死んでしまった。しかも、魔王のいる「魔界」にたどり着く前に。
人々は嘆き、また恐れと共に生活することを強いられてしまったのだ。
――その10年後だった。
強大な力を持つ人間が現れた。
誰も出来るはずがないと言われた、剣と魔法両方を使いこなす人間だ。
そして、世界はそんな彼を「第二の勇者」と呼んだ。
今度こそ、魔王は撃ち滅ぼされ、世界に安寧が訪れるだろうと、誰しもが信じたのだ。
結果として、魔王は倒され、魔界の扉は消滅した。
だが、その代償に、第二の勇者は姿を消した。
世界には、無事安寧が訪れた。人々は、喜びの祭りを三日間に渡り行った。
めでたしめでたし ってね。
まあこの話って、ここで終わりじゃないんだけど。
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なにもない。普通の日々。これと言った特徴もない、普通の人生のうちの1日だ。
強いて言うなら、今日は台風の影響で雨が強い。
台風は空気を読まず、明日の土曜日にここを通過する。
変わったことといえば、本当にそれくらい。
学校の登校中。最寄り駅行きの電車を待つ俺は、イヤホンで好きでも嫌いでもないアーティストの曲を再生しながら何も考えずに立っていた。
黄色い線の内側で、向かい側のホームを見て「あの人の読んでる漫画知ってるな」とか、そんなしょうもないことを考えてる。
曲のサビが終わり、少し静かになったあたりで、駅のアナウンスが聞こえる。
「まもなく、二番線を電車が通過します。危ないですから、黄色い線の内側まで下がってお待ちください」
聞きなれた音だ。
なんとなく、電車が来る方向を眺めていた。
曲がもう一度、サビに入ろうとする時だった。
ドン と、誰かに押される。
不意に押され、バランスを崩した俺は、そのまま足を踏み外した。
──おいおい、マジかよ
後ろを振り向けば、スマホを片手に歩くサラリーマンがいた。
少し遅れてこちらを見て、驚いた表情を浮かべる。
イヤホンから聞こえてくるサビよりも遥かに大きい電車の音と、俺を見て目を見開く人達の姿。
文字通り、それが人生で1番最後に見た光景だった。
こうして、俺──琴宮 楓奏は、17年で人生の幕を下ろした。