TOCKEY STORY 第2話【兄弟】
ハングワールドはたくさんの国がある。
ユーザーは好きな国に所属でき、
それも一つという制限もなく、
複数所属することができる。
TOCKEYという国では、
中学生の同い年が多く所属していた。
ハングワールドでは、絆ランクというものがあり、住人同士が絆を深めるとランクが上がっていく。
初めは、初見Cランク
初見Aランクを超えると、その国主が決めた称号が与えられる。
TOCKEYでは、TEAM MATEだ。
そしてTEAM MATEになると、個々のランクはなくなる。
その代わりに住人同士の絆が深まっていくと、
友達→親友→兄弟→家族という称号になる。
ただし。最高ランクの家族は文字通り結婚した場合やハングワールドで入籍、または家族登録でログインした場合に変化する称号なので、実質の最高ランクは兄弟となる。
今日の主役は
兄弟となった2人の少年の話だ。
2人が出会ったのは、一年前の春先のことだ。
1人目の少年、名は慧。
彼の方が先にいた住人だった。
国主「今日は慧の誕生日だよ!みんなで盛大にお祝いしよう!」
玲萌「慧!誕生日おめでとう!慧は、初めてきた私に優しく声をかけてくれた人なんだよ!慧がいてくれたから、今みんなと仲良くなれたんだと思う!」
慧「そうだっけ?ありがとう!俺も玲萌と話すの好きだよ!これからも仲良くしてね!」
七母「魔王くん!誕生日おめでとう!」
慧「七母さん!やめてよー!大魔王は昔の若気の至りで付けた名前だから、今は恥ずかしいよ!」
七母「今更慧って呼びにくいからね〜。それに、あの頃はすこしおいたが過ぎてた時もあったよね!でも、これからもおいたが過ぎたら、また吊るすわよ?覚悟してね!」
慧「わーい!」
沙丸「喜ぶな!でも慧はそーいうとこ可愛いんよな〜」
光忍具「あっ、姉さんお酒きれてるよ?何飲む?」
沙丸「おっ!気が利くなー!流石私の妹(♂)」
慧「おれも沙姉の弟だよね!」
沙丸「うちらはこの世界が認定した正式な兄弟やで!」
秋桜「あっ!そういえば近いうち、俺のリア友来ると思う!」
玲萌「そうなの?」
光忍具「ええ子なら、大歓迎やで!」
慧「そ、そだね。(新入りかぁ〜。やだなぁ〜。馴れ馴れしいやつとかだったらどうしよ。俺そういう奴嫌いなんだよなぁ)」
それから1か月が経った。
龍之介「どうも。秋桜のツレです。」
国主「龍之介くん!こんばんは!」
七母「龍ちゃんこんばんわ!女の子みたいなアバターだね!」
沙丸「うちの妹(♂)みたいな感じかな?」
龍之介「そのへんは個人情報なので。秋桜?わかってるだろうけど、余計なこと言うなよ?」
秋桜「言わないよー」
慧(なんだよ。馴れ馴れしいなぁ〜。それに、トキ兄が挨拶してるのに、無視かよ!)
国主「龍之介くんは、秋桜くんと同い年?」
神姉「龍之介さん、こんばんわ」
龍之介「神姉さん、こんばんわ」
慧(またトキ兄の事無視かよ。感じ悪いなぁ)
さらに数日後
JU「こんばんわ!初見です」
神姉「初見さん。こんばんわ」
玲萌「今、マモノの森の限定アイテムを配布してます!参加される時は、入国パスワードを入力してくださいね!」
JU「そうなんですね!僕はそのアイテム900個持ってますけどね。」
慧(変な奴きたな。)
龍之介「は?」
慧「?」
龍之介「それがなんなの?」
慧(りゅ、龍之介!?)
龍之介「自慢するだけにきたの?暇な人もいるんだね〜。いらないんなら、さっさとどっか行けよ。低脳な奴め。わざわざ来んな!」
慧(おぉ!!龍之介!!!なかなか良い奴じゃん!)
龍之介「ワイさぁ〜、初見大嫌いなんだよね〜。馴れ馴れしいやつは特にさ。てか、それよりさ!慧さんって建築センス良いよね!」
慧「えっ?そうかな?」
龍之介「ここの住人の方達のアバターホーム一人で作ったんでしょ?ワイも建築好きだから、こんど一緒に建てない?」
慧「うん!いいよ!作ろう!!」
それから二人はTOCKEY内のアバターホームを作ったり、城や魔物の討伐にも2人でこなしていった。
龍之介「兄さん!暇な時でいいからさぁ〜!寝るまで話そうよ!」
国主「昨日も話したやん!それに、今お仕事中なんやけど、、、」
龍之介「暇な時でいいって言ってるじゃん!慧と三人で話そうよ!」
国主「慧と2人で話せばええやん!こんなおじさん入れてもおもろないやろ!」
龍之介「慧とはいつも話してるよ〜!それに、おじさんだから若い子と話しておかないと、ほら!時代の波に取り残されちゃうでしょ?脳は老化阻止できると思うんだけどなぁ〜」
国主「失礼なやつめ!(・Д・)」
龍之介「いや。おじさんって言ったのそっちじゃん!」
国主「くっ、相も変わらず頭の回転早いな」
龍之介「ほんじゃ、話そ( ・∇・)」
国主「何をそんな毎日話すことがあるんよ?」
龍之介「ん〜そうだね〜。じゃ慧の事話そうかな」
国主「慧?」
龍之介「うん、慧ってさ、本当良い奴だよね」
国主「慧も同じこと事言ってたよ」
龍之介「ま?なんて??」
国主「龍之介のことが誰よりも好きだってさ。それも、恋してるレベルでね」
龍之介「はっはっはー( ・∇・)」
国主「大人になったら会って旅行するんだってさ」
龍之介「いいね〜!ワイも行きたい!あっ!もちろん兄さんもね!旅費とか食事代とか出してもらわないといけないからさ」
国主「わしゃぁ、執事か!!」
龍之介「羊?」
慧「やっほー!何話してたの?」
龍之介「慧!」
国主「龍之介が慧の事好きだって話だよ」
慧「俺も好きだよ!龍之介は俺の兄弟だからね!」
龍之介「ランクもだけど、気持ち的にもだよ!」
慧「そうだね!じゃ、俺明日テストだからもう寝るね!」
龍之介「おやすみ!」
それからしばらく経った冬の初め。
愛沙「そういえば、この前慧が彼女できたらしいね!」
龍之介「えっ、」
玲萌「みんなリア充だね〜」
愛沙「ワイのクラスでもみんな彼氏彼女作っとる!ワイは恋愛とかよーわからんけどな」
玲萌「愛沙は好きな人とかいないの?龍之介くんとか?」
愛沙「はい?絶対ないない!!」
丸尾「お?これは、龍之介と愛沙が家族ランクに??笑」
愛沙「丸尾?(^^)」
丸尾「_| ̄|○」
龍之介「そうか〜慧がね〜!幸せになったんだね。あっ!兄さん!ワイ、ここしばらく来れないかも。てか、リアルが忙しくて卒業しなきゃいけなくなるっぽい!」
委員長「龍之介さん?そんな、、」
龍之介「ってことで、みんな!元気で!!じゃ、さようなら!」
神姉「卒業ってなんなん?」
愛沙「慧に彼女ってのが、相当ショックやったんやろな」
委員長「そんな、なんか悲しいな。」
国主「委員長、大丈夫だよ!龍之介のいつものアレだから」
神姉「うん、龍之介病んだらあぁなるよね。でも明日には帰ってくると思う」
翌日
慧「やっほー!」
愛沙「慧!」
慧「そういえば、龍之介からメッセ来たんだけど、なんかあったの?」
神姉「なんてきたの?」
慧「幸せになったんだね〜とか、もうワイがいなくても大丈夫だよねみたいの」
愛沙「慧、ごめん!ワイが慧に彼女できたの言っちゃった」
慧「そうなんだ。」
神姉「相当ショックだっだみたい」
龍之介「兄さん!話そ!」
委員長「龍之介さん!」
神姉「卒業終了」
慧「よお!龍之介!」
龍之介「慧!彼女おめでとう」
慧「言えなくてごめんね!色々忙しかったからさ。」
龍之介「ええんよ。それより、幸せにね!」
慧「うん。」
龍之介「兄さん!」
国主「なんだい?」
龍之介「慧の彼女ってどんな子かな?」
国主「さぁ。でも慧が前から好きだった子みたいだよ」
龍之介「そっか。痴女とかじゃなけりゃいいんだけどね。騙されたり、慧の事傷つけるようなら許さん」
国主「龍之介、寂しいんじゃない?」
龍之介「なんだろうね。自分でもわかんないけどさ。リアルでもちょいストレスがあるからかもね。」
国主「そうかもね。」
龍之介「この世界は同性でも入籍できるのにさ、リアルだとまだこの国は同性婚を認めてないのって、本当に遅れてるよね。」
国主「そうだね。人が人を好きになる事には変わりないし、政治家のお偉いさんは、生産性がないだの言ってるようでは、この国は良くならないだろうね」
龍之介「ね。男だの女だの関係ないと思うけどなぁ」
国主「若い子たちは理解してる部分が大きいけど、年配者からすればそれは異端な事なんだろうね。元々人間は誰しも女の子から始まって、突然変異して男になるらしいから、夫婦も女性と元女性って事になるんだろうけどね。」
龍之介「そうなんだ。」
この後も、慧と龍之介の2人は変わらず好きなゲームをやったり、たわいもない会話をした。
友達に彼女ができた。
本来ならば嬉しい事だろう。
ただ、そこには少し寂しい気持ちもある。
それは、身近な友達が先を行ってしまい、自分が取り残され気持ちや、自分にとって特別な存在だった友達が、他の人を特別に思ってしまうと言う不安や劣等感が生じてしまう。そんな気持ちに蝕まれていくために起こる事なのかもしれない。
そして、年が明けたある日のこと。
慧「みんな!こんちゃ!」
愛沙「慧!こんちゃ!」
龍之介「慧!」
慧「俺さ!彼女に二股かけられてた!要は遊ばれてたみたいでさ!別れてやったぜ!」
玲萌「二股!?それは悲しいね。」
神姉「将来やばい子になりそう」
龍之介「慧!!話そ!!!相談乗るぞ!!!てか、そんな糞痴女に慧はもったいないよ!!!もっといい人が慧には現れるから、落ち込むなよ!!!」
神姉「龍之介くん、なんかテンション高いね」
丸尾「通話でも龍之介が今凄い騒がしいねんけど」
愛沙「龍之介喜んでない?」
慧「龍之介ありがとう!俺には龍之介がいるから大丈夫だよ!!」
龍之介「いや、慧はワイにとって特別な存在だからさ。リア友の秋桜と同じかそれ以上に大切なだけよ。」
慧「俺も龍之介は特別だよ!」
丸尾「おい〜!惚気るな」
藍流「俺は丸ちゃんと特別だ!」
丸尾「だな!毎日通話してるし」
神姉「恋人やん」
愛沙「ワイには玲萌がいる!」
玲萌「私も愛沙が大好き!」
愛沙「玲萌の声が可愛いすぎて緊張してまうから、2人きりでの会話は恥ずかしいけど、いつか二人で話そな!」
玲萌「愛沙の声もかわいいよ!」
仰衣「神ちゃん!私達も同い年だね(╹◡╹)」
神姉「ハングワールドでは声も変えられて、アバターでなら話せるのに、肉声で通話ってなると緊張するよね」
愛沙「神姉とももっと話したいなぁ」
仰衣「神ちゃん!私達も仲良くなろうね(≧∇≦)」
神姉「愛沙となら話してもいいかな」
愛沙「やったー!!!」
玲萌「いいなぁー!神姉!私も話したい!」
神姉「愛沙と玲萌なら大歓迎だよ!」
仰衣「じゃ今度みんなで喋ろうね٩(^‿^)۶仰ちゃんも話してあげるからね!」
神姉「兄さん、今度愛沙と玲萌と三人の部屋作ってね!」
慧「神姉!その部屋、俺と龍之介と2人で作るよ!」
龍之介が慧の肩に腕を回した。
龍之介「かっこいい部屋作るから任したよ!二人でならなんだって楽しいからさ」
愛沙「龍之介!かっこいいじゃなくて可愛い部屋作れよ!ワイら女の子やし」
龍之介「えっ?女の子なんかいるの?(・Д・)」
愛沙「龍之介(^^)あとでちょっとツラ貸せや(^^)」
たくさんの兄弟称号で繋がれた子達がいる。
だけど、実はみんな一つに繋がっていて、大人組から見ればみんなが一つの兄弟に見えているんだよ。
気が付けば話している。
顔も容姿もわからない。
住んでいるところも違えば、本名もわからない。
だけど、みんなはこの世界、この国では家族であることを忘れないで。
悲しいことや、居なくなりたくなれば
ここにきみのことを必要としている兄弟達がいるってことを思い出してほしい。
君たちは決して一人ではないからね。