♥ ベンチの下に居る「 夏のホラー2020 」
何処かの駅のベンチの下には、アレが居る。
アレが何なのか、誰も正体を知らない。
アレは決まったベンチの下には居ない。
アレは神出鬼没だ。
アレを見たら「 ラッキー♪ 」だと喜ぶ人も居れば、「 アンラッキ〜〜 」だと落ち込む人も居る。
人によって何が違うのだろうか……。
誰にでも見えるわけじゃないらしい。
興味はある。
「 見てみたい 」って思う時もある。
だけど、「 見たくない 」って思う自分が居る。
生憎と僕には見えない。
だけど、僕の兄妹は見えるみたいだ。
兄妹と僕は三つ子だ。
どうして、長子の兄と長女の妹が見えて、次男の僕が見えないんだ?
今日も、兄と妹は駅のベンチにアレが居ないか探している。
見付けたからって、どうなる訳でもないのに、何で探したがるんだろう??
「 勲,二美、もういい加減しようよ…… 」
「 もう、ちょっとだけ! 」
「 動画に撮って投稿すれば、絶対にバズると思うんだ 」
「 バズるどころか炎上するんじゃないの?
インチキだとか合成だとか書き込まれてさ 」
「 …………今日は居ないね〜〜 」
「 他の駅のベンチの下に居るのかもな… 」
「 …………何で夏休みに駅巡りして見えない奴を探さないといけないんだよ… 」
「 いいだろ、別に。
暇なんだからさ! 」
「 勲、次の駅に行こ! 」
「 そうだな 」
「 ねぇ、僕だけ帰っていいかな? 」
「「 駄目!! 」」
私は二美。
三つ子の次男
ア
だから、三つ子の長男
ジンクスが本当
無駄な悪足掻きなのかも知れない。
だけど、勲
ア
何
勲
ジンクスは発見したア
だけど、どんなジンクスだって構わない。
どんなジンクスも挑んで、必ずやり遂げてみせる。
そんでもって、朋
「 ………………はぁ…。
ねぇ、何
僕にはア
僕はベンチに腰を下ろして、自動販売機で買ったアイスを頬張りながら勲
…………暑いのに頑張るなぁ。
程
倒れられても困るよ…。
そんなにア
「 はぁ…………駄目だな…。
居
「 ねぇ、この目撃情報って確かなんだよね? 」
「 あぁ、確かだよ。
朋
「 そっか、地下鉄にもベンチはあるもんね! 」
「 地下鉄って……。
まだ探す気なの?? 」
地下鉄へ続く階段を駆け下りる。
今はもう地下鉄は使われていない。
今は、磁石の反発力と引き付け力を利用したリニアモーターカーが主流になって来
今や地上では無人駅が増えつつあるし、地下鉄も徐
この地下鉄は既に使われない廃線となってから7年も経っていた。
「 …………暗いね。
小型ランプ持って来
LED
「 勲
勲
「 …………もう、諦めようよ… 」
僕の小さな呟きは暗闇に吸い込まれるかのように虚しく消え去る。
何
音のない静かな地下鉄だから、小さな物音も大きく聞こえる。
風なんて吹いてないから、何
野良鼠とか、蛇とか、昆虫とかが動いた音かも知れない。
早く地上に戻りたいんだけど、勲
ヒソヒソヒソヒソ──。
何
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソ──。
何
ヒソヒソヒソヒソ──。
勲
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ──。
……………………もしかして…僕にしか聞こえてない??
さっきから何
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソ──。
ヒソヒソヒソヒソ──。
ヒソヒソ──。
ヒソヒソヒソ──。
ヒソヒソヒソヒソヒソ──。
もしかして……僕…「 ヒソヒソ 」に囲まれてる??
これって…もしかして…拙
何
気配を感じる気がするのに、姿は見えない。
…………僕が “ 見えない ” からなのか??
だけども…確かに「 ヒソヒソ 」と聞こえるんだ。
此
早く此
どうしたら……いいんだよ?!
誰か教えてほしい!!
──あんな所にベンチ…………あった…かなぁ??
僕の頭の中では「 動かない方が良
だけど、あのベンチが妙に気になって仕方無い……。
好奇心が僕の両足をベンチのある場所へ動かす。
僕はまるで、好奇心に負けてしまった猫のような気分だ。
好奇心に殺される猫。
僕は……此
ベンチの下で何
そうであってもらいたい。
だって僕は “ 見えない人 ” なんだから──。
「 ──勲
何
「 地下鉄から出たのかも知れないな 」
「 私達に何
「 かなりう
「 怒って地上に出たのかも… 」
「 …………此
何
「 分からない…。
次の駅に向かおう。
二
「 うん、いいよ 」
私は腰に付けてるポーチバッグの中からスマホを出して、朋
何
「 ──朋
朋
「 二
彼処
勲
「 朋
何
「 ねぇ…勲
「 あぁ、持ってた筈だけど。
それがどうしたんだ? 」
「 …………見て、これ…。
壊れてるの…。
それに…もう、何
「 そう言われてみれば、そうだな… 」
「 よく見るとスマホも長い間、放置されてたみたいに汚
「 ………………。
地下鉄に下りてから未
「 そうだよね…。
変だよね…オカシイ…よね… 」
「 一旦、外に出よう。
…………もしかしたら、朋
「 そうだね… 」
勲
勲
「 ──待って!!
行かないで!!
僕を置いて行かないで!!
僕は居
ちゃんと、此
どうして僕の声が聞こえないの!?
勲
二
──僕を此
どんなに必死に声を荒げても、勲
勲
「 僕は此
助けてよ!!
──ベンチの下から僕を出してくれっ!!!! 」
もう、あの「 ヒソヒソ 」は聞こえない。
僕は静かな暗闇の中で見付けてもらえる日が来
駅にはジンクスがある。
「 ヒソヒソ 」が聞こえたら、ベンチの下から出られなくなる。
駅で「 ヒソヒソ 」が聞こえてしまった人は、どうか諦めてください。