3章『緑の練成術師、神になる』
3章『緑の練成術師、神になる』
時は二千七十一年、夕方。私は七十歳の誕生日を迎えた。白髪が際立つ老後も、友達の金の店の下で作業をする。好きな夢幻郷の曲を聴きながら・・・休憩するため帽子を脱ぎ、潜望鏡の横の椅子に座り、潜望鏡で向こうの空を見る。その中に昔のようなかわいさは無いが、年老いたかわいさを放っている老婆が。路肩に座り、同じ東の空を見ている。上海 冷菓、大学の先輩だった。彼女は宇宙の言語をひとつにするために、発明会で人形劇を撮影投稿した。そんな思い出と景色を見て和んでいると、急に後頭部が痛くなった。意識がもうろうとするも体が動かず、外を見ている。白き塊がひとつ、空に向かって私の前から浮かび去っていく。世界、いや、私の視界が奪われている、もしかして死んだのか?まだ死ぬわけにはない、やり残したことがあるんだ。しかし、あの体には戻れないのかもしれない。そうだ、思い出したぞ!私はまだ活きれるんだ。
すると視界が戻ったようだ。どこか見覚えがある、引き出しと本が沢山ある場所。連楽船の神の間だ。目の前にガラス扉があったのでそれを開け、外に出た。あの時は左から出たのに今回は右から出た。と、言うことは私の体はコピーなのか?とりあえず人に会い、現状を知らなくては。エレベーターはO1と示していた。司令室のO5のボタンを押して上に上がる。扉が開くと懐かしい顔を見る。40年ぶりだが容姿がひとつも変わらないチュナが居た。
チュナ「魂知は?お帰り。もしかして初めまして?潮上 造。とうとうこの時が、誕生日おめでとう、神様。」
造「なるほど、私がコピーの体というのは分かったけど、今はいつかな?」
チュナ「いつって、少し前に着たんだから2071年だよ~」
造「何だ、変わってないじゃないか。」
チュナ「う~ん、時間は経っていないけどその間に起きた出来事が問題でね。君は時を旅する神具、時関エンジンが関与しないで浮島を見たことがあるかい?ないよね。しかしね、君の横に浮島が見えるんだ。それだけじゃない。君の魂が抜けたのが5時頃で今が7時頃。今は夏だけどそろそろ日が沈んでも良い頃だよね~」
外を見ると夕日に輝く大陸が目に飛び込んできてまぶしい。
チュナ「私達が来た頃にたくさんの生人が宙を舞っているのを目撃したんだけど、あれが関係するなら・・・星の停止かもしれない。」
造「・・・ああ、地球の自公転が止まったと言うあれか。」
チュナ「知っているなら話が早い。」
造「太陽の見かけの動きが停まり、今の時間表記が使えなくなるんでしょう。」
チュナ「それだけならどんだけ良かったか。良いかい、君は慣性の法則って知ってるよね?」
造「動いているものは動き続けようと、停まっているものは停まり続けようとする現象。」
チュナ「そう、地球も同じく動いていて停まったら、それに乗っていた君たちはどうなった?」
造「私については分からないが、私の友が飛んでいってしまったよ。じゃあ君達だって。」
チュナ「私達やあの浮島は貴方と同じように此処に存在している。停まったときには居なくて停まった後に存在したということさ。」
造「そんな一瞬で現れるなんて。」
チュナ「そうだよね、不思議だよね。分からないけど存在するのは事実だし。とりあえず行ってみようよ。しかし、ひとつ注意することがあるよ~君はこの船でタイムトラベルしたのを覚えているよね?あのときの座標は同じなんだけどね、少し前に現れたからね、もし理想郷だとしても記憶が存在しないかもしれないよ・・・」
造「もし記憶が無くても私が造ってやるさ。」
チュナ「さすが想造神だね~宝様~準備OKです。発進してください。」
船は平行移動していて今まで通りに、村の湖岸に停泊する。村も想城館も外観は変わっていない。想城館に行ってみよう。門の前に在る看板のボタンを押す。知った声が応答する。が・・・
続く・・・