2章『聖なる船と理想郷』pert2
2章『聖なる船と理想郷』pert2
青い流れを抜けたが一時期は気づかなかった。だが船が降下して気づいた。右舷側に地面が丸い大陸が見える。真ん中に氷山が村側に漂う湖とその中心に塔のような建物が在った。手前は森が広がっており、左側には山が三つほど連なっていた。奥には小さな中世ヨーロッパ風の村があった。船は村側の岸の近くに停泊した。近くの岩になぜか、たこが張り付いていた。
宝「さぁ、着きましたよ。我らがお世話になっている地・・・創世の理想郷へようこそ。」
チュナ「この事は預言者に聞くといいよ~ねぇねぇ、村で買い物してから行うよ~」
宝「だめです、よっぽどのことが無い限り報告が先です。」
チュナ「はぁ、報告報告って、そんなに報告が大事かねぇ。」
湖のほとりを右に曲がる。左手にはいかにも深く、湿った森が在るだけだ。先に湖を左右で分けているような一本道が在る。そこから預言者の住む館に続いてるのだろうか?近づくと分かったのだが深い堀があった。すると明寅さんが立て札のような物のボタンを押した。ビーと呼び鈴が鳴り、応答があった。
「どちら様で?」
と男性の声が。
宝「日葉さん、宝探しから帰ってきました。」
日葉「橋を渡します。主人がお待ちしています。」
三堀の上に石垣、門と館、城、館、城、三角と瓦屋根の順番の建物に入れた。三階の館の、左端の部屋に招かれた。その中にテーブルが在り、その奥に人が座っていた。しかし服装が変わった人で、上は水色の着物、下は赤いのスカートを着て居た。
「あら、お帰りなさい。宝は見つかったの?」
声は女性のだった。
宝「ええ、預言通り、空から降ってきました。」
「フフハハ、神の言葉は間違い無いようだね。と言うと、その子が宝だね。」
宝「はい、後の潮上 造になる、得穂 作でございます。」
「宝氏、良くやりました。これからも精進してください。ここからの案内は私が務めます。あなた方は私が呼ぶまで自由に待機していてくださいね。」
宝「承知しました。」
チュナ「明寅様、村に行きましょうよ~」
宝「はい、お茶にしましょう。」
「さて作、私に質問はありますか?まあ、聞かなくても分かるのだよ。」
「まず、この大陸のことですが、貴方達の世界には存在しないのだよ。」
「元の世界を原世、われわれの世界を創世と呼んでいるのだよ。そう、原世では私たちは今まで違う形、性格をしていたのだよ。だが何かの力によってこのようになってしまったのだよ。まず、私だが・・・名は一応、グラン・メオリナ。実は兄妹、兄と妹の二重人格なのだよ。」
だから服や帽子が上下で違うのか。
「さらに、近くの村は小さな日本風の村だったのだよ。そして貴方を連れてきた船は原の世界では存在しなかった。驚きでしょう?私達も最初は驚いたのだよ。此処で私の預言の出番なのだが、これは兄妹そろっての力なのだ。兄が物事を結びつける力、妹が未来を見る力で可能にしたのだ。だから、私の力が未来に物事を結びつける力になっているはずなのだよ。しかしなぜかね、私達には記憶が無いのだ。でも、貴方のおかげで私は未来で原世と創世のことを知ることが出来た。」
作「原世のことが分かったのなら行動すればいいじゃないですか。」
「すでに行動はしている。だが、まだ戻れないらしい。だから宝たちを宝探しに行かせたのだよ。さぁ、私達も村に行きましょう。」
と言って館の門まで開けてくれた。
「この想城館も原世では二階建てで、館だけだったのだよ。」
村は湖の近くに広がっていた。石造りの塔が村の端っこや中心部にいくつか立ち。木造と白石レンガのわらと瓦屋根の民家や木造の市場が荷車通りに立ち並んでいた。その市場には、串焼き魚の燻製や塩パン、日用雑貨や洋服を売っていた。しかし、私は財布を持っていなかった。そもそもこの世界の通貨が分からなかった。
「此処の村人は、私の記憶では造が着てから五年間で地上からやってきた者達らしいと造が言っていた・・・ここの売り物は自由に選んで持って言っていいのだ。ここは村だから生活が保障されて居るのだよ。しかし条件がある。生きたあかつきには何かを成し遂げること。店を経営してもいいし、発明してもいい、生きるだけでは罪だとさ。最後は原創者と言う、見たこと無い原世を作った人が言っていた言葉なのだよ。」
作「なら良かった。じゃあ、塩パンと食べたことが無いから魚の燻製をもらおう。」
テーブルの前に座って食事は出来ないものかと思っていると、
「店の中には店内で食べられる店もあるのだよ。この辺だと・・・あのパスタかな。」と言われて店に入った。長テーブルと長椅子が五列ほど続いている大型食堂だ。なぜか客が少なかったが注文することにした。
作「私はたらこスパで。」
「う~ん、早いのね。野菜が食べたいから、チーズカルボナーラ野菜定食で。」
「ほい。ねぇさん?」
「なんだい。」
厨房の窓から顔を出して注文を聞く。
「チーズカルボナーラ野菜定食ひとつ、たらこスパひとつお願い。」
「あいあい。」
「では、2番でお待ちください。席の指定はありません。ごゆっくり。」
席について、早速塩パンをいただいた。その後に
「貴方は神をどう見てる?」
と聞かれた。
作「神は私達の心の中に居ると思います。」
「ふは、神は活命の長なのだよ。生み育てる者だよ。」
作「そう言えば私を創造神とか呼んでいましたね。だが、その域に達するのは程遠いでしょう・・」
「しかし私は見ました。そう、この世の未来を貴方が導く姿を。貴方はその時が来たら神になる、潮上 造となる。」
きっぱりと言われて、たらこスパが来た。燻製とそれを食べて外に出る。村の通りを歩きながら話が続いた。
「貴方には神になる、いずれ家が与えられるのです。見たいですか?」
作「自分の未来が見えるんだ、見たくないはずが無いでしょう。」
「貴方の家は山の上にあります。その前に果物はいかが?」
道中に四つ角に鉄柱が立つ畑、大きめの農家の家が在った。村に一番近い山で・・・緑木材屋根、奥には鐘付き塔の白き教会。
「造は今、地上で神をやっているので貴方を此処に連れてくることができた。・・・そして、この教会が貴方の住処となるところ。気に入ったかしら?まぁ何にしても此処はいずれ貴方の住処、さぁ、中も見ましょう。」
作「礼拝席は一列だけですか。」
「そりゃあ、小さい教会だから仕方ないですよ。さらに神もいないわけでしょう。神が居れば気持ち次第でどうにでもなるのにね。変えれるけど変えないそれだけよ。ほら、祭壇を見てください。あそこには神具が飾っているんだけど、居ないからあのざまよ。手前のは黒電話の受話器よ。直で造に繋がるけど今はだめね。」
作「その神具って何ですか?」
「神具・・・それは神だけが造り出せると言う道具。だからそれは貴方が決めること。機能や見た目を意のままにね。」
作「それは楽しみですね。」
「他にはあの山を越えた山に自然の神、手前の谷に時の神が居るぞ。ほら、連楽船の機関長、時関 変事だったか。あの人の神具はあの船の時関エンジンらしいぞ。そういえば今後のことを話してなかったな。」
作「私は帰りたいです。」
「おぉ、じゃあ帰るか。貴、様の時代に。」ピッ
「ねぇ宝、作が帰りたいんだって。」
「わかりましたすぐに手配を。」
「ありがとう。」
湖の桟橋で・・・
「作、ハハッ後の造。貴方によって記憶を取り戻す。そうなることで私達は、原世に近づくことが出来るのだよ。だから想造神になってね。じゃ、後ほど。」
すばらしい社会だ。造って見せるよ。理想郷・・・
続く・・・