2章『聖なる船と理想郷』
二章 聖なる船と理想郷
私は、あるマシンの試運転を北朝鮮の近海で行う。金 幸運、代理書記の許可をもらって。ゆっくりとダイアルを回し、空高く浮上させた。ある程度の高さまで来たと思い、身を乗り出して下を見た。するとそこには真っ白な雲海だけが広がっていた。
「すばらしい!雲の上まで浮くことができた。もっと改良すれば宇宙まで行くことが出来るぞ。さあ、帰って皆に報告だ!」
と言って私はダイアルのある場所に戻ろうとした。だが、そのとき握っていた手すりが急に外れてしまい戻れなかった。付添い人も気づかれるのが遅れた。
私の体はマシンから下向きに遠ざかっていたが、準備していて正解だった。背中に担いでいるのはリュックサックではない、パラシュートである。そのなびく紐をぎゅっと握って引っ張った。しかしそれが私の最後の行動だった。
私「あの時はそう思ったねぇ。でも、違ったんだ。」
紐を引いてもパラシュートが開かなかった。「今思えば展開スイッチを強く締めすぎていたのが失敗だったんだ。」
だから私は目をつぶって叫ぶしか出来無かった。数秒して薄目を開くと白い景色が見えた。ああ、此処が天国なのかねぇ?それにしてはさらさらでまるで何かに支えられているみたいだった。その後に上から声が・・・
「お~い何かそこのマストに落ちたみたいだ。誰か見てきてくれ。」
「はいはい、私が近いから行きま~す。よいしょっと、ん?何だあの緑の物体は~。ひ、人じゃない?皆~空から人が落ちてきたから網を持って来てくれ~。」
そう言う声の後、左側に網目状のものが体に架かり、私は仰向けに持ち上げられた。
網に座っているとそこにはたくさんの人が私の乗る網を引いていた。目の前には一人の周りとかけ離れた見た目の者が立っていた。
「あなたは人間だよね?おどろいたな~まさか人が空から降ってくるなんて~私は航法士兼ネズミ捕り隊の隊長、チュナ。きみはだれかな~」
その人は女性で背は小さかった。周りと違う理由だが、まず特徴的な耳のようなものが頭の上にある。そしてみの傘のようなものを服の上からはおっている。
「ああ、私は得穂 作と言うはかない発明家だが?」
チュナ「へぇ~得穂ねぇ~昔に聞いたことのある名前だねぇ~まぁ、いいや。なぁ、上がってきてよ~そんなとこ居ずさ!」
作「ああ、そうだな。それでここは、いやこの船は何と言うんだい?」
私達が立っている船らしき物は、まず私が落ちた2番マストを挟み左右でたぶん6本。目の前は2階と3階建ての、左手には屋根だけの屋敷風の建造物が在った。その奥には塀が在って何があるのかわからなかった。右手には4階建ての四角い建物の上にドーム型の屋根が乗っかっており前後左右4つ窓が付いている。その奥に怪しげな黒いタンクが見えていた。
チュナ「ん~この船はね~連楽船って言うんだ~我々は宝を求めてここまでやって来たんだよ~でもそこに君が落っこちてきたんだ~もしかしてきみがうわさの宝かな~」
作「さあ、どうだろうな。とりあえず船長に会いに行かないと。」
チュナ「さすが、そうだね~こっちだよ~」
タンクの一つ前のドームの内部にて・・・
チュナ「船長、この方がさっきの衝撃の正体です。」
「あら、人だったの?魂活は?」
チュナ「あぁ、魂活はとは船長が気にいってらっしゃる情報サイトで知った挨拶でして、意味は魂は活きていますか~?と言うことですな~」
船長「チュナ、説明ありがとう。良かったですね貴方。もし私達がここにいなかったら、海に叩きつけられていたことでしょう。確認ですがこの時代は、西暦2031年、平成43年で間違いないですね?」
作「はい、間違いありませんがなぜ?」
船長「それはですね、宝探しには年代が必要なのです。それにしても113年も平成が続くとは。」
作「へ!?113年?天皇は退位さらたんじゃ?」
船長「退位されてもどこかの大臣が、まだ平和になっていないのに平成と言う年号を壊してしまうとはいかがなものかと、反論したので113年も年号が変わらなかったのです。・・・そういえば名乗って無かったですね。宝 明寅と申します、以後お見知りおきを先生。うふふ。」
作「先生?何を言っているんですか?貴方と私には・・・約70年の差があるじゃないですか。」
宝「いずれ分かりますよ。さあ、チュナ、先生の案内係に臨時で任命します。」
チュナ「了解しました~ささっ、こちらだよ~」
船長は、黄色から紫の頭に、天狗のような角ばった白い帽子を被って。手にうちわ、と、なぜかランタンを持って微笑んでいた。エレベータで下に降り、チュナから
「君はあのタンクが気になるんだよね~あれはこの船の一部の動力、蒸気機関だよ~下から入るんだよ。」
と言われた。エレベータはU1と示し1つ下に向かった。その部屋は廊下のようだった。だがマストの稼動装置があった。どうやら、マストは回転式で、布を張るのは縄を手動で引っ張るようだ。
チュナ「もう分かっているんだよね~見ての通り此処は帆の操作室、機関室はこっちだ~よ~」
後ろに行くと階段があった。それを登りあれを見た。でかい歯車だ!
チュナ「おやおや~びっくりしたようだね~。この歯車は軸で外輪羽にくっついているよ。この歯車の動力は蒸気なんで、蒸気機関車と同じだと思ってくれていいかな~」
「チュナさん!この近辺にねずみが出てきてしまいました。確保をお願いできないでしょうか?」
チュナ「ああ、変事君じゃないか、いいよ~作、君も手伝って!」
と言うとチュナは、頭の耳のような物の根元を前にスライドさせ眼鏡のようにした。レンズのようなものが今まで灰色だったのに緑色に変わっていた。
チュナ「これを持って君はこの階を探して、もしねずみをみつけたらその銃で確保してね~私はその下の階を探すから~」
と言う訳でねずみ探しをするはめになった。マスト操作室までは問題は無かった。その先には天井に外輪羽の歯より小さいが、大き目の歯車があった。その横には小さな歯車も、後でチュナに教えてもらおう。その手前に梯子が上にも下にも続いていた。そして下から声も聞こえた。
「ゴーグルによるとこの辺なんだけどな~お、ここにいるな~よしよ~し、怖くないから出ておいで~・・・あ、作~そっちに行ったよ~」
数秒後に梯子の端から栗色のねずみが飛び出してきた。私は渡された銃を発砲した。すると、人差し指の第二関節ぐらいの大きさの弾丸が、500MLペットボトル3本分の広さに網目状に開いて、ねずみを中に閉じ込めた。
チュナ「おお~作、やるね~やっぱり君は宝だね~さあ、次はどこに行くんだっけ?」
作「この下は何があるの?」
チュナ「ああ、この下ね、倉庫だよ。たくさんの用途のものが入っている場所さ。行きたいんだろ?きっと面白いものが見つかるかもね~」
私達は最下層に行った。まず、近くには丸く細長い物体が12本ほどあった。
作「これはなんだい?」
チュナ「あとで分かると思うから今はこの話はしないよ~」
作「ふ~ん。」
奥に進んでみると木箱が在った。
チュナ「その中には飲料水と食料が入っているよ~食料は乾燥してあるよ、腐ったら困るからね。」
作「いや、飲料は大丈夫なのか?」
チュナ「ふふ、そのことも解決済みなんだよな~その飲料の容器は真空で、菌なども寄せ付けない.。ま、ふたを開けない限りね~奥には道具があるよ。」
ハンマーに紐、溶接機やランタンなどがあった。
チュナ「はい、下の層はここまで~次は上に行こうね~」
ねずみを捕まえたはしごを上まで昇ると、そこはトイレだった。そして二階は浴場だった。左の三階建ての建物には厨房、その上に座敷が二階分在った。右に行くと塀があったが、チュナに通してもらった。
チュナ「作は気になっていたよね~此処が答えさ。」
とチュナが言って後ろの床にハンドルが付いた、1階建て屋敷の鉄のドアを開けた。床にはさっき在った筒状の物体があり、船首方向に窓があった。中心にあの歯車の軸だろうか?木造の柱が立ってあった。船首側の滑車付が2本、その後ろに1本吊るされていた。柱を挟んで、2本ロープが吊るしてあった。
チュナ「これはわれらの船を守るための砲台だよ~」
作「じゃあ、このロープは?」
チュナ「その前の二本は装填用、一番後ろは発射用意用だよ。上に大砲があり、後ろから二番目のロープは斜角調整用、真ん中は発射用だよ。・・・此処は説明しない方が良かったかな~どうせこんなの使わんし・・・」
「魂知は、チュナ。案内が終わりましたか?」
チュナ「い、いえ。後、一区画です。その挨拶はどうしたのですか?」
「それは後で良いでしょう。」
ぷつっ
チュナ「ああ、さあ作~さっき言ってましたが後1つとなりました~最後は此処の牢屋番を紹介しま~す。」
案内されたところは、甲板で1番低い屋敷と言うか、屋根だった。なのにその扉は不釣合いな鉄扉だった。チュナはためらいも無く扉に手をやると、軽かったのだろうか?奥に扉が開いた。
「やっと此処まで来たね、宝人と言う者よ。」
そこには灰色の下人のような着物を着た、私が居た。
作「な、私か?」
チュナ「はは、違うよ~彼女はシーナ・マギラ、さっき言った牢屋番。」
シーナ「以後よろしゅう。」
チュナ「彼女は凄いんだ~体の形を自由に変えられるんだよ。だから囚人に化けてもらっているんだ~」
シーナ「しかし今頃は、仕事が無くて退屈ですな~」
チュナ「宝はきっと見つかりましたから、またいつもの送迎業に戻ることができますよ~もう司令室に戻っていいかな?」
シーナ「牢屋番の私が言えたことでもありませんが、戻るのが最適だと思います。」
チュナ「明寅様、今戻りました。」
宝「おかえりなさい、チュナ。」
チュナ「で、さっきの挨拶はなんですか?」
宝「またHKT発明所からの更新で、挨拶は魂知はにするって書いてあったんですよ。」
チュナ「こんちはって、明寅様~その挨拶はこんにちはの略称なだけで、変わっていないのではないですか~」
宝「何言ってるのです。略称じゃないですよ。魂の知っていることは何?知っていることがあるのなら貴方は活きています。という意味ですよ。理解していただけました?」
チュナ「へぇ~そうだったんですか~わかりませんでした~」
宝「貴方、理解する気ないでしょう。」
チュナ「いえいえ、めっそうもない。理解しようとすればできますから後でゆっくりとお願いします。」
宝「ふ~ん、まあ良いでしょう。作先生、あなたに見せたいものがあり、それを試してほしいのです。付いて来てくれますか?」
作「はい、何の事かは分からないですが、危なくなければ付いていきます。しかし私は貴方より年寄りではないはずですが。」
宝「そういう意味ではないので付いてきてください。」
エレベータはO1を示した。そこには真ん中にコンピュータ、両端に直立カプセルが在り、周りには本棚や引き出しが存在していた。
宝「ここが、想造室。または神の間です。」
作「神の間ですか?」
宝「はい、数名いる神の中に想造神が居ます。その者の名は造、難しい方のね。そして名前を・・・潮上と言います。」
作「し、潮上だって!」
宝「彼は今の貴方に似ていた、というより貴方その物の格好でしたわ。」
作「は、と言うことは何ですか?私が造だと言いたいのですか?」
宝「ええ、そうですが。理由はこの装置にあります。左のカプセルに入ってください。この装置で貴方の体をコピーします。しかし、記憶までもコピーすることはできませんので、体から魂が抜けるまでこの体に貴方が入ることは出来ません。何もしなくても貴方はコピーされます。ではチュナ、原子入れましたか?」
チュナ「はい、時間稼ぎありがとうございます。」そしてチュナは装置のスイッチを入れ、右側のカプセルから私と瓜二つの人間が現れた。私のカプセルの扉が開けられ
宝「もし体が機能停止したら、この船を思い出してください。」
作「はぁ、まぁ、その時が着たらですね。」
宝「さて、神製造も一段落したし、報告に行きますか。貴方の使命はこれからなのであしからず。さぁ預言者の元へ戻りましょう。」
チュナ「レーダー機影なし。変事さん、ボイラー出力220パーセントOK?」
変事「OK」
宝「マスト立て向き、スラスターようそろ。時関エンジン作動、時の渡航開始。」
チュナ「時の航行、30秒経過。」
宝「時関停止。」
続く・・・