3章『緑の練成術師、神になる』pert9
3章『緑の練成術師、神になる』pert9
傾斜が緩い山の中腹で・・・
草があまり生えていない土の道を登る。森を抜けると木柵付きの花畑に出た。右は水色の花、左はひまわりが咲いている。奥にも花畑が見えるのだがその前に十字路がある。その中央の木の看板を見よ。
『風香の畑』
と書かれている。左に手をかけると、かなり軽い。押してみると、時計回りに看板が回転する。これで向こうと行き来が出来る。看板には裏が見える。
『勝手に花に触れるな。』
書かれているからといって関係ない。だって必要ないからだ。防犯の理想だな。奥の花畑に来たが特にない、少し情報を加えるなら色ぐらい、左ピンク右白、とかね。さらに登っていく。南の山奥に一つ、民家がある。垣根も塀も存在しない。あの神社の離れみたいな。形や大きさは異なるが・・・表札には八九猫と表記されている。やっぱり戸は開いていない。
造「よし、じゃあ下ろう。」
八九猫家から分かれ道になるまで歩き、始めに出会う分かれ道で右に曲がる。端まで曲がることない一本道が続いている。数本はすでに秋色に染まり始めている。道の右、楓と楓の間に白いしっくい?の建築物が在る。その右には木のやぐらが存在している。ドアの右端の上に黒字の白で聞化社。裏に文花長社と、吊るし看板が下がっている。記憶が正しければ此処は天狗の新聞社である。先に三路交差点がある。この土地が私が思い描いた夢幻郷ならば、右に滝があるはずだ。案の定、高く細い岩山から清度の高い水が川になってふもとに向かって流れている。交差点までの道中でさっきの川の別れ川を渡る。ふもとに向かっているが、川内に木製の水車が回っている。川岸に大きめの石が置いてある。その後ろ両端に二枚、木札が刺してある。河デ溺死シ童達ココニ眠・・・その下は、バツがされてて読めない。左隣の小さな木札には、ラズと書いてある。続けると、河デ溺死シ童達ココニ眠ラズとなる。その石の周りは川より高い深さまでへこんでいて、小石道が出来ている。水車の車軸は西の森へ続いている。近い川下の方に木の板が架かっている。それを渡り盟友と呼ばれたいものだ・・・軸のつなぎ目が見えた。左に回り込み、木材の鉄ノブドアを右手で左に回す。そして願望はひとまず幕を閉じる。板を渡りなおし、川を下っていると左手が拓けた所に出る。陽だまりの中心に岩である。上から見ると丸く。北方に、だ円岩と円柱岩が生えている。懐中時計の大きい文字盤のようだ。白い石のようだが中央に左右に延びるくぼみがある。そこだけなぜか薄青くなっている。中心に棒が立っており、北に影が伸びている。周りには何か文字が・・・これはローマ数字だ。左から時計回りに、6,12,6,12と読める。此処は昼の12時頃らしい。まぁ、今となっては意味が無いことだが・・・
来た道を戻ると左に続く道を進む。左に山肌、右に果樹を眺めながら、西に進む。
チュナ「ねぇ~今度はどこに行くの~もう疲れたよ~」
造「は~仕方ない。お!丁度ベンチがあるじゃないか。」
一つだけだがある程度長く、皆座ることが出来るぐらいだ。座ると左に地蔵を設けたほこらがある。なぜかおにぎりが三つ供えられていたのでこう思う。見えない神って居るのかな?まず此処に来て人を見ていないのもおかしい。もしかして人はもう・・・あの保存食と緑茶を飲み、先に行くとしよう。此処で視界不良を起こすことになる。回復すると色薄の木の壁が目の前に見える。もしや、小屋!?ではない、門だ。上や横に紅レンガの壁が見える。門の内側に我々は列になって今まで立っていた。
「うわぁ!?」
肩になにかが乗っかったのを感じ、振り返ると。
「う!急に振り返らないでよ~」
造「なんだ、チュナか。」
変事「この感覚は理想郷と同じだね。」
変事さんも居る。
数一「どうしたんですか急に停まって?」
理想郷生まれの数一君は状況が飲み込まれていないらしい。だから私はこう言う。
「そうか、君は例外か。私達には記憶はあるけど感覚がない・・・ではなく、ない状態だった。まぁ、体は動いているけど、意識が無い状態で、脳だけが記憶していたんだよ。此処では記憶が頼りだ。記憶が正しければこんなことが起こったんだろう。
我々は、霧がときたま立ち込める池の中央の未舗装の道を通って、紅の館を目指していた。門前にも誰も居らず、アーチの門を奥に開け、潜った。噴水が白い道の真ん中に立っていた。左右には茂みのような庭があったが、館はまたしても紅レンガ造りで、左右に屋根が三角錐の四角い塔が館の母屋に隣接していた。二階中央にバルコニー、屋上には中央に屋根つきの四角い紅レンガの正方形に中心を軸に掘ったような大きなくぼみが在った。よく見ると、その軸に短い鉄棒がはえていた。
造「さて、館内に入ってみよう。」
扉を開けると寒くなった。日当たりが悪いからか。暗闇の中で赤いライトが一直線に四つ、こちらを照らしている。一歩踏み出すとライトがうごめいた。だんだん近づいてきて私は思わずしゃがみ、耳を塞いだ。振り返ると、黒いものが二つ舞っていた。それらは空中で羽ばたきを止め、外が薄ピンクと内が水色の、外が赤と内が黄色の水のような流動球体が羽ばたいていた場所に現われた。その二つの球体は横に並んで館の上を通った。どこに行ったかは知らないが館内を見ると、中央階段にレッドカーペット。二階中央には壁に大きなステンドガラス、踊り場、左右には各階ひとつの通路があり、茶色い扉も見えた。グラン・メオリナに会ったのは三階だったが二階の左の奥左に行ってみよう。
この土地に着てから人っ子一人見ていないが、グラン・メオリナが使っていた同じ形の机に本が開かれてある。
『疑問集』
真時は無限か?無限は幻想か?時は空間と共に空間が壊れない限り活き流るる現象?今だ正しく表記できるものなし。無限ではなくてもいいのだろうか?
国王は太陽を時を知らせる嘘をつかない友だと信じ、疑いませんでした。
社会を作ったのは人だ。だから人が変えていく。マネもそれに習う。
ページが飛んで、
『親氏のジレンマ』
高校生のころ、ある小論問題に出会った。それは、今まで通り夫の氏を名乗るか、それともどちらか選べる権利を与えるかのどちらかに賛成し、根拠を述べよ。その後、反対意見を退かす根拠を述べろとのことだった。どちらにもデメリットがある。私は答えに迷っていた。ひとつ案があった。YESかNOで答えなくて良い。どちらも良くすれば良い。つまり、夫にすると妻から批判が、選ぶと子供の名がね。だから夫と妻を合体させるんだ。DNAのように。しかし問題がいくつもある。三文字や一文字をどうするか。名前の上と下で対立しないかや、「すべての漢字が大事だ」と言ったときなどだ。最後のは、遺伝子は二つに分かれるので、割り切ってもらおうかな。さてどうしたことか・・・
『イデンの神使』
昔、地球生命体が進化した人の血液に、外の者が血液を分けた。今で言う神に近づくために。その力を使えるのは一握りの人だったと伝えられている。此処まではお話通り。この者達を神使と呼ぼう。神使はその血液を後世に残そうと、子を産みます。が、生物で習ったのなら魂知しているかもしれない。人の染色体は46本、結ばれるときにすでにあらかじめ二つに分かれていると。あの血液も・・・だから神はこの社会から消えていってしまった?
と、直筆で書いてあった。ドアを開け、館外に行こうとしたが、向かいにもドアがあった。もしかすると、部屋を間違えたかもしれない。
チュナ「造、どこにいくの?」
造「このドアの向こうも気になるんだ。入っていいかい?」
チュナ「まぁ、もしかするとでしょ。」
造「うん、じゃあ開けるよ。」
ドアを開けた。中は向かいの内装と同じ。ただ、左右反対である。他には机の上の本ぐらいだろう。表紙の色が青と黄色で違う。どちらも薄い色だが、こちらは黄色だった。題名は1だと?内容を見よう。・・・鉄200キロ?銅50キロ、亜鉛500キロ・・・右の文字は地上にあった会社の名だろう。取引でもしてたのかな?とにかく此処を後にしよう。まぁ、止められたけどね・・・
チュナ「ちょっと造。まだ全部見て無いじゃん。全部見ないと探し者は見つからないかもよ~」
その甘い声色に誘われて出来る限り、くまなく探すことにした。まず、二階からだ。館の奥までノックしてドアを開けたが誰も居ない。各一人で塔の中も下ったが誰も居ない。手分けして一階のドアも開けたが、小さな食堂や物置、調理場ぐらいだった。広間に皆戻ってくると、広間を調べることにした。
「皆さん階段があります。」
見つけたのは数一君だった。門から見て右側の階段沿いの壁に人三人ぐらいの四角い穴が開いていた。階段は角らせん状になっており。当然地下に続いていた。下ると初めに見えたのは、両開きの茶色いドアだった。中に入ると明るく。広い大図書館に出た。左右に長い本棚が、中央に太陽系の模型が回っていた。真ん中は太陽のはずだが紫色で時に黄や赤、青の小さな光が見えた。他はほこりっぽく汚れたようなボールだったのに。空が漆黒に染まる?頃だったろう。我々はこの図書館で各々(おのおの)好きな本を取り、出来る限り読んでいたが、やがて時が来て、本をしまい屋外用テントで各々寝た。
窓が無いので今が平均太陽時でもいつか分からなかった。しかし私は皆に問う。
「魂知は?皆、心はしっかり持ってる?」
チュナは答えた。
「はは、またまた冗談を。」
変事さんもね。
「魂知は。造君。これでいいかな?」
造「ええ、いいでしょう。」
数一君は・・・
「皆さん揃って何なんですか?今日はでしょう?」
造「いや君もこりないね。私達はこれが普通さ。」
数一「そんな事よりこの館、まだ地下がありますよね。そちらに行ってみましょうよ。」
図書館を扉から出て階段の隣。鉄の古びた扉があったが。錆びているらしくびくともしない。
造「此処は私のカナズチで。」
カーン、カーン。
造「んにゃー!」
ガリーン!
扉の内返しである止め板の錆びもろとも打ち砕いた。しかし中には拷問部屋のようだが、骨ひとつ落ちていない。
造「仕方ない。園に出るか。」
数一「待ってください!まだ屋上もあります。」
造「ああ、それも外だな。で、さっき言った園も外だな。」
数一「へ?園?」
まず庭からだった。といってもほとんどがハーブ系の畑だった。後は奥の離れ白ドームテラスぐらいだった。
造「さて、念願の屋上だ。」
数一「もう、茶化してるんですか?」
造「そう見えるかい?」
屋上は広間の左奥の梯子を上り、部屋を門方向に抜けたところだった。ドアを開け、左右を見ても、白タイル、紅レンガぐらいだった。空は少し曇っている。左に上へ続く梯子が在った。ついにこの円の正体が分かるのか?これまた左にあったドアを開けた。門前から言うと鉄の通路が前に伸び、壁に沿って右へ曲がっていた。右奥に制御盤があった。ON,OFF用の上下レバーだけの物。それに軸が繋がり右手前の小さな歯車と言うか、棒にドライバーのようなくぼみに噛み合っていた。その軸の左手前から上にベルトが伸び、動力が新軸に伝達されていた。冷室だが蛍光灯がちょうど良かった。だからベルトが緩まずここにあるのだろう。新軸の途中に二つ歯車があった。それを含めて動力を三方向に伝えているのだろう。下から、大中小の歯車に・・・しかし大事なのは人探しだ。今度こそは仕方が無い。あと知っているのは人里ぐらいだが、情報目当てと近所であることから人里を目指す。一番近い未舗装道を右折するんだ。
続く・・・