3章『緑の練成術師、神になる』pert8
3章『緑の練成術師、神になる』pert8
さらに西に私達は歩いた。始めは向かい風が激しかったが、だんだん弱くなり、湿気が高く、そして雨が降ってくる。降ったときにはすでに海岸が顔を出していた。後は日本を目指すだけだ。やっぱり船だな。帆船かスクリュー船か、どちらにしよう?
「悩むならスクリューにすれば?」
チュナがリスクの低いほうを勧めてきた。
造「やっぱりそうだよな。」
船底を超伝コイルで覆う。次層は食料庫、その上は寝室、甲板ときた。スクリューは電気エンジン、操舵室は後方に付いている。漁船を組み立てた。
造「これで良いか。」
チュナ「いや、漁船じゃん!」
造「必要な物は揃っているんだから良いでしょ。さ、席に着いた着いた。」
チュナ「な~、魚群探知機は?~」
造「必要ないから無い。」
チュナ「その代わりが地図って。」
造「地図が逆に必要なんだよ。」
変事「お~い、エンジンもONかOFF、DかPしかないじゃないか!」
造「必要ないと思ったんだよ!~とにかく出発だ!~」
不満は数日続いた。特にチュナが測量器具を取って・・・
チュナ「え~と、あ~こうじゃない。これをあ!あぁもう五分経ったちゃ。また計らないと~」
朝日が気持ち良いと感じたときから6時間分後ぐらい、南の空に、理想郷と同じような浮き島を暇になったチュナが見つけた。
造「そんなまさか。」
船底のコイルの出力を上げながら進路を南に向けた。
小話「役たたずの住人」③
(副題)最後の裁判
「これが最後の晩餐かもしれない。」
トマト、マカロニ、サニーレタス、卵のサラダと味噌汁かスープかと、ご飯かパンか、もしくはパスタかは選べる。ご飯と味噌汁、サラダを食らう。腹が少し膨れたところでお呼びが掛かったので、護人二人と少し長めで細い廊下を進んで行く。左に両開き扉があり、護人達が開けてくれる。そこは法廷らしい。弁護士も検事も居ない法廷であるが、裁判官が言う。
「罪人、理慎 数一。あなたは一年間、仕事をしていなかったということでよろしいですか?」
数一「いいえ、皆は俺が仕事をしていないと思い込んでいただけです。」
裁判官「良いでしょう、それでその仕事とは?」
数一「活きれない物を活かすには教育するだけでなく、活きれる理由がなければならないという事を考えていました。」
裁判官「今もその仕事は続いてますか?」
数一「いいえ。」
裁判官「ふむ、新しい仕事を始めたらどうです?何か職場の希望はありますか?」
数一「ありません。」
裁判官「では、発明所で働いてみたらどうでしょう。ちょうど、求人募集書が届いたんですよ。貴方のように物事を明らかにしたり、新しい物事を造ったり、思いつけばいくらでも仕事がありますよ。しかも、仕事の始め時や質も自由にすることが出来ます。詳しくは求人募集書で確認してください。」
数一「う~ん、まぁ行って見る価値はあるでしょうよ。」
裁判官「これにて閉廷。決まったら教えてくださいね。」
小話終わり・・・
巨大な土地のはるか上空に左右が同じ大きさ、高さぐらいの茶色い土地が・・・さらに上空、湖の上に石色の小さな十字の土地もある。あれが天界というものだろうか?私の記憶そのままだな。右に空中で停めた船は記憶させているので破壊し、線路に立つ。駅のホームに無かったこんな看板。『創世が原世になり、新たな創世を生んだ。』
と書かれている。グラン・メオリナも似たようなことを言っていたかな?
造「ねぇチュナ?変事さん?此処がどこか分かりますか?」
変事「いえ、記憶にありませんね。」
チュナ「右にいや、左に同じく~」
チュナ達の方を向いたまま話を進める。
造「じゃ、とりあえずこの右の山を登ろう。」
数一「いやいやいやいや~待ってくれよ~俺に聞かないで先行こうとするんか?~いや、するんですか?~」
造「な~に?数一君、君は何か知っているのかい?」
数一「いや、ただ聞かないのは失礼じゃないですか。」
造「あ~ごめんね?」
数一「まあ、分かってくれればよろしいです。」
造「良かった。」
左の山より急斜な山に登る。こぶは一つだけと言う事から、理想郷なら教会があった山の裏だ。木の幹をつかみながら何とか登る。その頂上に在る物は・・・
洋の対?のような物が在る。薄茶色の木面の柱に暗めの瓦、あまり広くない壁である。内{(うち)私}の教会と同じ面積ぐらいだろうか?建物を左に曲がり、前の所を見ると賽銭箱と黒く書いた、柱と同じ色じゃった。さらに前方の石畳の先に赤い鳥居があることから、和である神社であることが分かる。しかし人の気配はない。左の離れに居るのだろうか?本殿と同じ素材の障子が多い建物の戸に縁側を踏んで手をかける。
ガッガタッ。
造「鍵がかかっている。」
チュナ「だよね~」
数一「どうしますか?造さん?」
変事「反対にも山があったよね。そっちにも行ってみよう。」
造「はい、変事さん。それが一番だと思います。」
続く・・・