3章『緑の練成術師、神になる』pert7
3章『緑の練成術師、神になる』pert7
一時間ほど南に歩いた。壁を繋いだ門の上にZOOと描かれた看板がある。押し寄せてきたのは動物園から脱走した動物のことだったのだろうか?とりあえず中に入ろう。がたいの良い人と小柄な人が門番をしている前に出る。小柄な人が低い声で
「停まれ!証明書を見せろ。」
と言う。
造「全員発明をする旅の者です。あなた方の都市が困っていると聞きつけて調査に来たのです。」
「そうかい。まあ、気をつけるんだな。中には狂った獣が多い、おとなしい動物が脱走するくらいだからな。」
造「はい、ご苦労様です。」
造「なあに。そちらこそ。」
外と違って中は明るかった。しかし一分も休憩をしていないうちに。
「ああ!私のバッグが!~」
後ろを向こうとすると一人の男が橙色のバッグを抱えて走っている。後ろを向くとチュナが口を開けたまま、あの男を見つめている。相手はそう若くない。私は前傾姿勢で走る。今までの癖だろう。角を曲がり、小路に入る。ある程度距離を詰めたがこちらも限界が近づいている。よし、新装備を試してみるか。右手を前に、左手を腰辺りに、ダイアルを反時計回りに廻す。風はだんだん強くなり、やがて五メートル手前から人を浮かせるぐらいの力になった。するとどうだろう。あの男が道の真ん中で倒れているではないか。
造「貴方の行いをこの丸い社会が認めても、広い社会は認めないだろう。」
横から網が飛んでくるのが眼に入る。
チュナ「さ~て~警察に行きましょうね~お馬鹿さん!」
ガツッ・・・男はチュナに引っ張られながら、大通りに向かっている。看板に書かれた地図をまじまじと見つめている。
チュナ「お~あったあった。こっちか。」
指を差した先に、こっちに歩いてくる柄の悪いそうな紫のTシャツを着た髪の側面を刈上げたおじさんがこっちに向かってきている。気づけば右にも後ろにも、同じシャツを着た奴らがいた。
「おい!お前、何をしている?」
チュナ「何って、善行だけど~」
「善行?~ハッ!その人は俺達の部下だ。そいつをサツに突き出されるとこちらもいろいろ困るんだ。おとなしくそいつを返してもらおうか。」
チュナ「君ら、ここらでうわさのギャング集団かい?それなら協力できないな~」
「そうか。残念だ。取り押さえるぞ!」
彼らは放射線状の広がりを縮めるように襲撃してくる。我々は武器らしいものを手に取る。私は右袖風発銃、チュナはネット銃、変事さんは八角柱の物体を、数一君はペンの改造型を装備する。
始めに体が震えていた数一君が動いた。
「うお!~来るな!~」
相手の顔に墨がかかっていく。
こちらはもう少しで最高風速だ。
「うお!なんだ!前に進めな・・・ぐふっ!」
チュナのネットがヒットした。変事さんにも危険が迫っている。相手はナイフか何かを持っているのだろうか?いや、そんな心配は必要ないだろう。だって向こう全員、目くらましを食らっているのだから。ここで変事さんが動く、八個のうち二個のスイッチを押し、機械の八角中心が回転を始めた。やがて色鮮やかな光を放ち、相手三人が姿をくらます。
チュナ「まっまさか!消し殺したの?~」
変事「いや、ちょっと三十分後の未来に飛ばしただけさ。」
チュナ「そんな力、初めて見た~」
捕獲された相手に、容赦なく電撃を撃ち込みながら、チュナは陽気に会話に混ざってきた。まったく、
造「うらやましいな~」
つい小声だが出てきたようだ。
チュナ「なんか言ったかい?造?」
造「いっいや・・・まぁ、君はどうしてこんな状況なのに平気なのかな~って。」
チュナ「う~ん、知らないよ、そんなこと。私のことより大事なこと、先に片付けてしまおう!」
そう言って南下した。メインの三方交差点の集点から西に、交番らしき建造物が在る。
チュナ「さて、連れ込むよ~」
少々開いた引き戸に彼女が手をかけると、中から中年婦人のような声が聞こえる。
「こんな大金、こんな社会で作っていけるわけありません。私達はこの辺で治安が良く、物価が安い所に移ります。もうあなた方のような世間知らずの子など見たくもありません。さよなら。お元気で・・・」
婦人はこちらにあまり気づいていないように門の方へ去ってしまう。
チュナ「あの~すみませ~ん。ギャングをこらしめました~処理をお願いしま~す。」
わざとだろうか?しかし何もなかったように警官は振舞う。
「どうも、見ない顔ですね。侵入者ですか?」
造「いいえ、我々は旅の者でして、このようにちゃんと証明書も持っています。」
我々は証明書を見せる。
警官「ほ~今時こんなものが。意味を成すなんてね。少し前までは金こそが証明だったのに。やはり、外の社会は進んでいるのですね。はぁ~」
造「ため息ですか。何かあったんですか?」
警官「君達に話してどうにかなることじゃないと思うけど、まぁ・・・試してみるか。まず始めに昨日のニュース・・・見ましたか?」
造「すみません、歩くのがほとんどだったものでニュース系統は見てないんです。」
警官「そうですか。あなた方も通ってきましたよね、あの門を。」
造「門ってZOOと描いた物ですか?」
警官「はい、あれっていつ頃出来たと思います?」
造「さ~1年前とかですか?」
警官「ハハッ昨日からですよ~」
造「は?いや、そうなんですよね。それが問題なのですか?」
警官「それには門が出来た理由にあります。なぜ我らの都市に囲いが出来たのか。」
造「もしかしてギャングですか?」
警官「う~ん、実はもうひとつ要因があります。それは・・・フゥ~貧困だよ。そのせいで治安も悪い。我々警察は盗っ人の相手で手一杯。だからギャングの根を絶やすことも出来ないし~!移民の手続きも回らないんだよ~!あ~少しカッカしてしまって申し訳ない。え~と・・・」
造「囲いの話。」
警官「あ、ああ、そうだった、そうだった。あの囲いはギャングを外に出さないため、住民が無断で移民しないために造られた。」
造「なぜZOOなのですか?」
警官「さ~?そういうのは作者かその関係者に聞くべきでしょう。」
造「う~ん、そうなんですか。ところで、貧困の解決方法などはありますか?」
警官「あったらとっくに始めてますよ。」
造「では提案です。貧困の原因は収入にあると思いませんか?収入にばらつきがあるから貧富の差が生まれるんです。」
警官「だからとしてどうするんですか?収入を無くせとでも言うんですか!?」
造「えっと・・・違います。あの~逆、収入を最大にするんです。」
警官「そんな金!あるわけないでしょう!」
造「私・・・収入が金だと言いましたっけ?」
警官「は?何を?」
造「権利ですよ。仕事に対しての代価、それが収入であり、元は権利なのです。つまり、物事を授かる権利の値が最大にするので・・・す?ち、ちょっと、紙に整理してくれました?」
数一「は、はい。造さんこれで。」
造「え~と、つまり・・・」
しまった。よく分からない。私は鉛筆で付け足す。財やサービスは金ではなく、仕事をしていることで権利が最大。その権利が持続中で、需要と供給が合えば交渉は成立したものとする。時は物質を制する。以上と・・・
造「簡単にまとめるとこんな感じです。参考にしてください。」
警官「あ、ありがとう。ごめん、情報をもらえるのに何もあげられない。」
造「何言ってるんです?ちゃんと前払いでもらいましたよ。では、また後で会いたいときは8231に電話してください。」
セントさんの事務所の中で・・・
セント「そうでしたか。あちらの意見も聞かないで勝手に追い出そうとしてすみません。」
造「その謝罪は彼らにするべきでは?」
セント「そうですね。」
造「お願いなのですが、出来ればあの人達に物資の供給を加勢してくれませんか?」
セント「ええ、出来ることから始めます。」
造「ありがとうございます。貴方はあの都市にも、私達にも希望ですよ。何か問題などあれば8231まで。貴方はこの社会で活きれるでしょう。」
続く・・・