1章 始まりの唄
これら駄作は私が考えたり見たり聞いたりした事を元に描いた空想だが、それだけでは面白くないと思ったのでSF(空想科学)小説っぽく描くことにした。この小説を読んで物事を理解し社会が変わるのなら幸いだ。理解し考えることが出来れば良いのだが・・・
去年の冬、俺は専門受験にまで落ちてから、不安と怒りに悩んでいた。今は二千二十年の夏、受験に落ちたからといって勉強する気にはならない。少し散歩しながら勉強について考えることにした。英語や数学は難しいが夢を広げることは好きだ。ゲームなら夢を叶えてくれるのに。
「現在時刻九時ジャスト。」
と時計を見ながら俺は言って、暗き小路をチラ見した。いつもは何もないのに今日のところは違った。
そう、小路の端の方が妙に明るいのだ。その光は緑色の点々に分かれていった。少し経ってその光の中に人が倒れていることに俺は気づいて
「おい、大丈夫か!?」
と言いながら彼の口元に手をかざした。確かに息をしていて一安心した。彼は俺と同じぐらいの身長で銀ぶちメガネをかけている。帽子は緑色を前面に主要した作業帽で、緑色のドクターコートを着ている。そして彼は口を開いた。
「ここは・・・どこですか?・・・」
と聞かれたので俺は
「ここは日本の福岡県北浜町のとある小路です。」
と答えた。彼は
「そうですか。」
と言ってふらふら立ち上がり
「じゃあ今、地球は廻っているのですか?」
と問われて
「は!?」
と俺は変な質問に驚いてしまった。
「ハハッ、すまない。今、時間ある?話したいことがあるけど喉が渇いたのでね。お茶か何かあるかな?飲み物代ならおごるからさ。」
俺は少し考えて
「そこに喫茶店らしき店がありますよ。」
と言って、来た道を少し戻った。彼は疲れていたのか、杖でも突いているように歩いている。が、それよりも気になるのは、彼の周りで浮いている光達の方だ。だが考える暇もなく目的の場所に着いてしまった。俺も初めて入店するから内装はわからないが、ましてや看板が、奇妙さを強めている。『デイリーシャ・R・アンチ』こんな店名なのだ。
「着きましたか?」
と言われたので俺は、
「はい、ここです。」
と言って古洒落た店のドアを開けた。
するとチリーンと鈴の音が辺りに響いた。そして
「しあわせ~」
と、店員が挨拶?した。
俺らは木造のテーブルを挟んで向かい合わせに椅子に座った。店員が
「ご注文はお決まりですか?」
と聞いたので、俺たち二人は共に
「ミルクティ。」
と答えて驚いた。
「注文はミルクティ二つですね。」
と言われて俺達は黙ってうなずいた。そして1分もしない内に注文したものが運ばれて来た。それを彼は一口飲んで言った、
「まさか私と好みが一緒とはね。そういえば、名乗ってなかったね。私は、潮上 造だ。よろしく。」
「作ですか・・・ぼ・・・いや、お・・・私と同じ名前ですね。」
造「今日から私と君・・・いや作は友達だろう?」
「・・・僕の名前は得穂 作」
造「そうか、ならここだけの話・・・私は発明家でタイムトラベラーなのだ。」
僕は少し頭を整理して
作「じゃあ、さっきの緑の光は?」
造「あぁ、あれは私が未来で造った超小型ロボットさ。」
と返ってきた。僕は話を変え
作「タイムトラベルって、どうやってしたの?やっぱり時空連続帯をどうにかするのか?」
と尋ねた。造は少し不安な顔になった。そしてこう答えた。
造「いや~、マシンはあるけどきっと光速を超えたらタイムトラベル出来たと思うが。設定出来ずに感覚でここに来た。」
と、すると僕は変だと思い、言った。
作「えっ!タイムトラベルは映画のように到着時間を設定できんのですか?」
すると造は微笑んで言った。
造「つまり未来では、太陽系の惑星は自公転が止まってしまい、時間は感覚的な流れだけで、区切ることが出来なくなった。まぁここに来たのは時間の事とは関係ない。」
と追加で言われて僕は
作「じゃあ、なぜ造はこの時代に来たの?」
と尋ねると、造は悲しそうな表情になって小さくこう言った。
造「女の人を探しに来た。名前は冷菓・・・上海 冷菓だ。君は名前を聞いたことはないか?」
作「いや、聞いたことはないよ。」
造は続けて、
造「彼女・・・冷菓は大学からの友で、言語学科、宇宙化学科を勉強しているはずだが・・・あと大学の名は・・理工文化大学だったかな。」
と名を聞いて気付く僕、この名は僕が落ちた大学の名なのだ!・・・なので
作「その大学は聞いたことがあるよ。」
造「ほぅ、じゃその場所を知っているんだな。案内してくれ。」
作「う~ん、準備があるのだが大丈夫かい。」
造「良い。」
と答えた。しかし、僕は今まで大事な質問を忘れていたので、
作「本当に金があるのか?」
造「あぁ、その事なら準備が必要なんだ。怪しまれては困るからね。作は見てもいいよ。メニューで囲いを作らないといけないな。」
と答えたので僕はうなずいた。そして、二つあったメニューを立て、テーブルを床として天井に穴が開いた緑の囲いが出来た。
造「さあ、始めるぞ。」
と、造が言ったので僕は、その囲いの上からのぞいた。すると、さっきの緑の光達が囲いの中心に集まってきた。そして造は僕に聞いてきた、
造「ねぇ、この世で高い価値を持っているものは何かな?」
作「ダイアモンドぐらいじゃないかな。」
と言ったので、造はうなずいて
造「じゃあ、それにするか。」
と言った。そのまま僕は緑の光達を見ていたが、その中に何か物体が現れた。光達が分裂して、それは明らかになった。そう、大きさ2センチほどのダイアモンドだ。造が言った
造「よし、無事に想造出来たな。あ、言ってなかったが私は未来で想造神と呼ばれている。もう囲いをはずしていいよ。」
と、そうして僕らはメニューを元の場所に戻した。そして造は続いて・・・
造「じゃあ、お会計に行こうか。」
と言って席を立った。それに続いて僕も席を立ちレジへ向かう。すると、レジ係の店員が
「お会計ですか?」
と、定形文を投げかけてきた。
造「はい、これでいいかな?」
と言ってさっき作ったダイアモンドを台の上に置くと、店員は焦って
「店長に聞いてきます。」
と言って、店の奥のドアに入っていった。少しすると店員と一人の白髪男性がやって来て
店長「少しそれを見てもよろしいですか?」
と尋ねてきたので、造はあのダイヤを男性の手の中に置いた。少し男性は黙っていたが、口を開いて
店長「美しい・・・これ程の物でお会計する気ですか?もっと何か注文されて行かれたらどうですか。」
と言ったが、造は
造「いえ、結構、しかしお望みとあらば小さいほうを用意しますが?」
店長「では、そうしてください。」
造はダイヤを握り、広げると、4等分のダイヤが出てきた。それを男性に4分の1を手渡し、
造「美味しかったです。」
と言って店を出たので僕も続いた。
店の外にて・・・造は、もと来た小路の方に居た。なので、僕は造の隣に行って尋ねた。
作「造はタイムトラベラーだよね。マシンがあるのなら見せてくれるかな。」
僕はうれしそうに言った。
造「やっぱり作も興味があるか。なら、人目に付きにくい所がいいな。」
作「なら、この小路の奥がいいと思うよ。行って見ようよ。」
造「よし行ってみるよ。」
僕たちは小路の少し奥に行った。そこはT字路の中心辺りで上の方向からしか光が通っていないので、人目に付くことは無いだろう。
造「マシンは大きいから少し離れた方が良いだろう。じゃあ始めるか。」
すると、また緑色の光達が集まってきたがダイヤよりも大きく横長く集まっていた。そんな中に造は、銀色の塊を放り込んだ少し待つと、白い車が現れた。その車は、DLVのエンブレム入りボンネットごと縦長く、ほとんど白いが車体の後ろのテールランプの接続部辺りが赤く、横に厚みがほとんどない。座席は4人乗り、後ろのトランクはかなり広い。アメリカの映画に出てくる車両のようだ。車の上には風力回転羽のようなものがある。そして造は、
造「この車で送ってあげるよ。君の家はどこだい?」
作「本当にこの車がタイムマシンなのか?特殊な機械は無いのかい?」
と怪しんだ。
造「それは中を見ればわかる。ほら、レバーやダイアルが沢山あって、出力は電気で、なんと空中浮遊しながら、移動も出来る。これだけ言って嘘だと思うのかい?まぁ・・・想うことは一人一人違うからな。で?・・来たいの?来たくないの?」
と説明し、あおって来た。僕は、自分の好奇心に嘘はつけなかったので。
作「行きます。」
と答えて造が出した車に乗った。
車の中にて・・・造はハンドルの横についている、小さなハンドルを回した。回しながら造は言った。
造「これは手回し発電機だ。この車の出力が電力だから。あと、上には風力発電が出来るようにしている。準備があるんだよね?さぁ、君の家の方角を示してくれ。」
作「ここから大通りを大体、南に向かったらある。」
造「わかった。ここから南だね。」
と言って彼はスイッチをひとつ入れた。が、何の音もしなかったが車はちゃんと進んでいた。車は小路を抜けるために右折し、そして左折して僕の言った大通りに出た。そのまま直進し、さっきまで居た喫茶店をすぐに通り越したが、その数秒後に僕は口を開けた。
作「そこを左だ。」
それに息を呑んで造が反応し、車は長い車体を左に大きく曲がって僕は
作「ここで止めて。」
そして車はブレーキでこすれるタイヤの音がして止まった。
この左隣に僕の家がある。この家は、白い壁でほぼ四角の洋風コンクリート2階建て建築である。僕はここに3年住んで大学受験勉強と高校生活を共にした。しかし、落ちてしまったので、親が悲しんだがまだ望みがある。来年があると思い今やるべきことをしようとして家のドアを開けた。今は母親との二人暮らしなので母に相談しようとした。母はスマホを扱っていて尋ねてきた。
母「今日は早かったね。勉強をする気になったの?」
作「いや、今日はいつもと違うんだ。友達が出来たんだよ。大学に行きたいって言う友達が。」
と答えた。すると母が感心したらしく
母「その子は勉強は出来るの?」
作「ああ・・・連れてくるよ。」
と答え、造を連れてきた。造は
造「こんちは、奥さん。潮上 造です。」
と自己紹介して、母は
母「このお気楽息子と仲良くしてくださってありがとうございます。得穂 未来です。あなたは友達としてふさわしいのですか?」
と聞いてしまった。ので、僕は答えた。
作「造は僕の知らない知識を知ってるんだ。だから造なら教えてもらえると思うんだ。」
すると母は造に向かって
「貴方は作に勉強を教えることが出来るのですか?」
と尋ねた。造は
「ええ、私が分かる事なら教えることが出来ると思います。」
母「そう、なら少し安心ね。ところで作?貴方はどうしてこの人を連れてきたの?ただ友達ができたからではないのでしょう?」
と疑った。
作「実は・・・造は大学で、ある人を探したいんだって。その為に僕に道案内を求めたんだ。」
母「ふ~ん・・・私も行って良い?」
と聞いてきたので造が
造「良いですよ。私が造った物を1人でも多くの人に見てもらいたいのでね。」
と答えた。こうして僕らは理工文化大学へ造を案内し、僕は造の能力を借りて来年、大学に受かる希望を手に入れたのだった。
続く・・・・