転(砂臥担当)
「くっ……またここに来ちまったか……」
気が付くと俺はまたあの会議室にいた。
「おかえりー」と爽やかな声で言われるも、全く爽やかな気分ではない。
なんせ、これから死ぬのだ。
「だが後悔はしていない! 殺るならやれぇぇぇぇい!!」
俺は『コ』の字におかれた長机の中央で五体投地した。
そう、後悔はしていない。
なんだかんだでラッキースケベや、自主的なスケベ等の機会はたんまりあった為、美女の生乳を拝んだり、軽くタッチしたりくらいはできたのだ!
ウフンアハンな百合展開は(元がDTなので)ハードルが高すぎたが、充分オイシイ思いはした。
我が人生に、一片の悔いなし!
「うーん、本当に君は残念……というか薄いよねぇ。 折角世界の理を弄くってまで美女ハーレムになるような人員を集めたっていうのにぃ」
「いや、要らん気遣いです」
世界の理を弄くんな。
道理でなんかおかしいと思ったぜ。
「ちょっと人数多すぎたかな? 結局『博愛』に流れちゃったか……」
「いや、『博愛』じゃなくて『ムッツリ』ゲージが半端なく上がってるよ」
「あー……とにかく多数は良くなかった。一人でよかったよね。失敗失敗」
めいめいが好きなこと言ってやがる。
「でも君なんか面白いから、もっかいチャンスをあげようかな。 今度は3択ね。 馬車に轢かれた世界で違う条件で復活するのと、トラックに引かれた世界で同じ条件で復活するのと、全く違う世界で魔王と闘うの、どれがいい? ただ君のチート能力ってほぼ生活対応だから魔王と闘うにはそれなりに大変だけどね」
唐突に魔王とか出してきやがった。
意味がわからなさ過ぎんだろ。
「あんたたちの目的はなんなんだ?!」
「ん~暇潰し?」
あっさり碌でもない答えが返ってきた。
いっそ清々しくもある。
(魔王か~)
そういうのに憧れがないとは言わない。
しかも美女に囲まれてわかったことだが、俺は欲望の赴くままに生きれるタイプでもないようだ。
そういう人間ならばもっとアハンウフンな展開を迎えていたし、生乳&軽いタッチ位では、むしろ人生に悔いが残りまくりに違いない。
「……ちなみに馬車に轢かれた世界の場合、新たな条件ってなに?」
「クソ性格の悪い妹へのざまぁ、とか?」
「あ~流行ってるもんね、ざまぁ」
(ざまぁ、ねぇ……)
流行ってるからって理由がまずどうなんだよ。
性格的にあんまり気が乗らない。
他人の不幸は別に自分の幸せとは関係ないのだ。
大体にして、俺はチートだったのでそんなに困ってもいない。
「うわコイツ性格悪ッ!」と思ったくらいで。
(トラックに跳ねられた世界だと、また『真実の愛』を探すのかぁ……)
あの世界の俺はチートだがモブ。
地味なフツメン。
女の子とは縁が無さすぎて緊張するし。それなのに美女にまみれてしまったことで、理想のハードルも自分では認識しないままに上がってしまったかもしれない。
そして新たな世界で魔王討伐。
俺のチート能力は生活対応。
……どうやって魔王倒すのコレ。
だがなんとなくわかった気がする。
俺は誰かしらと深い関係を築かなければならなければいけないのではないか?
きっとそれは『愛』でなくても構わないのだろう。
「はい、正解~」
あ、そういや心が駄々漏れなんだっけ。
「まぁ暇潰しでもあるけどね、神に愛されてる人間ってレアだし」
もうコイツらの言うことは、とりまどうでもいいや。
大事なのは俺がこれからどうしたいか……
「う~ん……」
「決めかねている様だねぇ」
神っぽい奴等は俺の選択に興味津々なようだ。
なんかムカついた。
「この際もうアミダでいっす」
「「「「アミダ」」」」
奴等は流石に目を丸くしていた。
してやったりだ。
そんなわけで、次の人生はアミダで決めることにした。
割としょうもない決断のしかただが、どれを選んでも面倒な気がするし……おっぷぁいも見れたか(以下略)
神っぽい人達に横線を好きなように引いてもらい、アミダの縦線を指定する。
「……ここだ!」
「じゃ~いくよ~。皆様ご唱和下さい。♪ あみだくじ~「「「♪あみだくじ~」」」」
別にご唱和は要らんだろ。
いい大人が会議室っぽいところで、声を揃えてアミダをやる様はちょっと異様な光景だ。
そして選ばれた選択、それは──
字下げ処理してなかったんで直しました~